巻き込んで御免なさい
無粋で無礼な客達の相手をした後。
レストランを後にしたヘルガ達は冒険者ギルド サイラス支部内へ赴いていた。
普段ならば3人は飯の前に持ち込んでいる。
だが、今日は直ぐに美味い飯を喰いたい欲求が強かったが故に順番が逆になった。
そんな支部にある買取部門へ今回の戦果……ミスリル製の剣と盾を除いた宝飾品を持ち込むと、3人は査定を依頼する。
「買取をお願い」
「承知いたしました」
その言葉と共にギルドの買取部門のスタッフはサリーとネッドが目の前に並べる様々な宝飾品を確認していく。
それから程なくしてサリーとネッドの2人が今回の戦果を出し終えれば、スタッフはその量に少しだけ辟易としながらも告げる。
「今回お持ち戴いた品は多く、時間も時間ですので査定が終えるのは明日になりますが、よろしいでしょうか?」
「それで構わないわ。2人は?」
「俺達もそれで構わないぜ」
そうして明日にまた来る事が決まれば、3人は支部を後にして宿へと歩みを進めていく。
「なぁ、風呂には入らないのか?」
ネッドが尋ねると、ヘルガは2人に向けて言う。
「私は後で良いから2人は風呂行って来たら?」
ヘルガが提案する様に言うと、サリーは何かを察しながらも敢えて触れずに提案を呑んだ。
「じゃ、宿に戻って着替え取ったらそうするわ」
「なら、2人が戻るまで私は宿で装備の手入れしてるから」
サリーが提案を呑むと、ヘルガは自分は今回使った装備の手入れ……分解清掃始めとした各種整備をする事を告げる。
すると、そんなヘルガに対してサリーは気を使う様に告げた。
「なら、俺達が戻った後に風呂行けば良い。お前さんが戻るまで、物騒なブツをしっかり見張っとくからよ……」
「ありがと。そうさせて貰うわ」
そんな遣り取りをしながら歩いていると、またもネッドが疑問を口にした。
「なぁ、さっきの2人……アイツ等、ヘルガのデタラメな武器と装備を欲しがってるんだよな?世界を相手に戦争だか何だかする為によ?」
「あのルシアンって名乗ってた小僧の言う通りなら、そうなるな……」
ネッドの疑問をサリーが言葉通りなら……と、言う前提で興味なさそうに肯定すると、ネッドは更に続けてさらなる疑問を口にする。
「ヘルガの武器と装備があるだけで世界を相手にして勝てるのか?アイツは出来るって変な確信持ってた様に感じたけどよ……」
そんなネッドの疑問を聞くと、サリーは黙したまま語らぬヘルガの方を見て尋ねる。
「其処んところ、どうなんだ?」
疑問を投げられると、ヘルガは思案しながら答えていく。
「兵隊の人数分の銃と弾。それに各種装備を揃える事が出来るなら……って、厳しい条件を満たしてる前提で考えるなら、不可能では無いわね」
「なら、それは可能なのか?」
サリーが普段のおちゃらけた態度を潜ませて真剣に問うと、ヘルガは正直に答える。
「奴等はコレを量産しようと考えてるみたいだけど、今の職人達の技術では銃1つ、弾1発作るのも出来ない」
それは否定出来ぬ事実であった。
過去にトミー……否、トマーゾ王子と、その父である国王。
その2人は国中の腕の良いドワーフを含めた職人と錬金術師を集め、ヘルガ同席の元でヘルガが用意したコルトM4A1と弾倉。それに弾を総出で分析させた。
結果とも言える専門家達の総意は一言で言うならば、1丁の銃どころか1発の弾を作る事すら不可能と言うものであった。
それは同時に他の国々でも作るのは不可能と言う結果でもあった。
それ故にヘルガはあの2人の所属する組織で量産する事は無理。不可能と断じた。
しかし、サリーは気付いているが故にそれを当然の様に口にする。
「なら、お前さんが本気で協力したらどうだ?」
「あんなクソ共に力を貸すくらいなら、私は自分の頭をブチ抜いてやるわよ」
その答えにネッドは驚き、戦慄してしまう。
だが、サリーはその答えが意味するモノを理解出来たが故に驚かなかった。
寧ろ、納得した。
「成る程な。あのルシアンって小僧と小僧が仕えてる主はそこら辺も織り込み済みでお前さん自体を欲しがった訳か……」
「どう言う事だよ?」
ネッドが首を傾げると、サリーは説明する様に語っていく。
「あのデタラメな銃って武器とデタラメな明かりとかそう言う道具と装備をコイツは必要なだけ揃えられるレアスキルを有してる」
「つまり、ヘルガに武器と装備。それに弾を量産させようって事か?」
「それもだが、一番はコイツ自体。厳密に言うなら、コイツの頭に収まってる戦術や戦略を含めた取り扱いを手に入れたいって所だろうな……」
サリーがベテランの冒険者としての経験と知識から其処まで看破すれば、ヘルガはアッサリと肯定する。
「そう言う事になるわね」
ヘルガはルシアンから聞いた時点で察していた。
だからこそ、驚かないばかりか、涼しい顔であった。
そんなヘルガは2人に向け、真剣な面持ちで警告する。
「暫くは身辺警戒した方が良いと思う。つーか、警戒して……あの手のクソは自分達の存在が露見するのを激しく嫌うから、自分達の存在を知られない為に暗殺仕掛けて来ても驚かないから」
ヘルガの警告にネッドはそんなまさか……そう言わんばかりに言葉を漏らしてしまう。
「俺たちを殺そうってのか?流石にありえねぇだろ?」
信じられないと言うネッドにヘルガは心の底から残念そうに告げる。
「残念だけど、あの手の碌でもない事を企む連中は秘密厳守を何よりも優先したがる。だから、何かしらの誰にも気取られない、死んでも誰も気にしない様な状況を創って暗殺を仕掛けて来る可能性の方が高いわ」
前世の男が持つ碌でもない知識と経験からヘルガが真剣に警告すれば、ネッドは項垂れてしまう。
そんなネッドを他所にサリーは尋ねる。
「あのルシアンって小僧と小僧が属してる組織が碌でもないとびきりのクソなのは、お前さんのお陰で理解出来た。なら、連中をどうにかする方法は無いのか?」
「これも残念だけど、今は無いのが正直な意見と状況……ホント、御免」
自分が取った選択肢がサリーとネッドを何時、暗殺されるか?解らぬと言う危険な状況に追いやってしまった事にヘルガが心の底から申し訳無さそうに謝ると、サリーは涼しい顔で返した。
「気にすんな。冒険者してたら、命狙われるなんて珍しくねぇんだからよ……」
「俺はマジで勘弁して欲しいんだけど?」
ネッドが情けない声を上げるが、サリーとヘルガがそれを責める事は無かった。
そうして話している内に宿に着けば、ヘルガ達はそれぞれの自室に戻った。
そして、2人が入浴の支度をしている間。
ヘルガはバックパックや銃と言った装備を全て床に下ろすと、整備作業を早速始めるのであった。
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