無粋な客
9階層目で一夜明かした後。
私達はその場で朝食を済ませ、通って来た道を戻る様にして帰り道を進んだ。
途中で冒険者の死体が幾つかあった。
そんな死体の首元に冒険者証があった。
私は冒険者証を回収し、キチンと盗賊の冒険者証とは別に分けて保管した。
そして、その後も歩み続けた。
その後は休憩を挟みながら5階層目まで戻れば、早めの昼食を取った。
メニューはビスケットと干し肉にチーズ。それに干し葡萄と昨日からずっと同じ。
だからこそ、私達の中で帰ったら美味い飯を喰おうと言う話が出るのも当然だった。
そうして夕方にシレーラスを出た私達は詰所で退場手続きを取った後、盗賊に堕した連中の報告と真っ当な未帰還者の報告を済ませた。
そして、今はサイラスの一番良いレストランの個室席で成功祝いと真っ当な未帰還者の為に一献傾けている。
「私達の成功と帰らぬ者達に」
私が乾杯の音頭と共に酒杯を掲げると、2人も同じ言葉と共に酒杯を掲げた。
それから直ぐに一息で酒杯に注がれたお高い上物のワインを飲み干せば、目の前に並ぶ料理に飛び付く様にして細やかな宴が始まる。
サリーとネッドが勢い良くガツガツ食べてるのとは対照的にヘルガは優雅に食べる。
それでも食べる量は2人に勝るとも劣らない。
そんなヘルガの健啖ぶりを目の当たりにすると、ネッドはボヤいてしまう。
「なぁ、俺達より静かに食ってるのに食った量が俺よりあるのは何でだよ?」
「気にしたら負けだ。坊主」
食べる手を止めたサリーが面倒臭そうにボヤく様にして返せば、ネッドも気にするのを辞めた。
そうしてテーブルに並んだ皿が全て空になると、タイミングを計った様にレストランのスタッフ達がやって来て全ての大小異なる皿を片付けていく。
少しして皿が片付けば、3人の前に新しいグラスが置かれ、そのグラスに食後酒としてブランデーが注がれた。
そして、会話を肴に食後の一杯が始まる。
会話は主にアルコールで顔を赤く染めたサリーがネッドに説教とまではいかぬが、問題点や改善点をネチネチと挙げている。
それにネッドがキレそうになりながらも、自分の失敗や改善すべき点が幾つもある事を自覚しているが故に「うるせぇ酔っ払い」程度で済んでいた。
そんな2人を微笑ましく眺めながら、ヘルガはグラスを揺らしてブランデーの芳醇な薫りを楽しんでいく。
すると、個室の扉が礼儀正しくノックされた。
サリーとネッドが言葉を止めて扉を見ると、2人より先に見詰めていたヘルガはグラスを置いて尋ねる。
「どなたかしら?」
その問いに扉の向こうに立つノックした者……このレストランのスタッフである男は用件をハッキリ告げた。
「失礼します。お客様とお話をしたいと言う方がいらしております」
スタッフが礼儀正しく来客がある事を告げると、ヘルガは何となく嫌な予感を覚えながら更に尋ねる。
「どう言う御方?」
「御名前は名乗られておりません。ですが、シレーラスの件でヘルガ様に謝罪したいと仰られております。因みに人数は2人の男女で御座います」
それを聞いた瞬間。
ヘルガは。否、ネッドに酔ってウザ絡みしていたサリーすらも酔いが覚めると共に警戒レベルを最大まで跳ね上げ、尋ねる。
「どうするつもりだ?」
問われると、ヘルガはどんなクソバカが自分に嘗めた真似をして来たのか?
それを知る為に敢えて許した。
「その客を中に入れて。後、その2人に飲み物を尋ねて用意しといて……代金は私が払う」
その答えにスタッフは「承知しました」そう返すと、2人の来客を通した。
そうして魔道士の様な出で立ちをした理性的な青年と、アマゾネスとも言えるビキニアーマー姿の若い筋肉質な女が入って来れば、ヘルガはグラスをテーブルで揺らしながら告げる。
「さて、先ずは其処に座りなさいな」
ヘルガが視線と共に示した下座にある空いた席を指せば、青年は恐る恐ると言った様子で「失礼します」の言葉と共に座った。
そんな青年の後ろにビキニアーマーの女が控えれば、ヘルガは2人を注意深く見詰めながら問うのであった。
「シレーラスの件で謝罪したい。そう言う話だけど、具体的には何を謝罪したいのか?其処の説明からお願い出来ないかしら?」
ブクマと星評価。
感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます
なので下さい。マジで下さい




