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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
ヘルガという冒険者

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39/90

見る目を養え


 大休止の後もヘルガは先頭に立ち、殺しながらハイペースで歩み続けた。

 ヘルガの用いる銃の威力とヘルガ自身の技術の高さにネッドはまたも圧倒された。

 だが、最初に圧倒された時と違い、ネッドはキチンとヘルガの動きを見て学ぶ姿勢が強かった。

 そんな弟子が少しずつながらも成長してくれてる事にサリーは師として喜ばしく感じていた。

 そうして5階層目からスタートしてからは途中で休憩を挟みながらも、今回の目的地である10階層目に無事に到達する事が出来た。

 10階層目に降り立つと、ヘルガは正面の警戒を緩める事なく見詰めながら告げる。


 「お宝確保する前に此処に居るモンスター共を始末する方が良いわね」


 「お宝よりも先に敵を倒すのか?」


 ネッドが目的のお宝よりも先に敵の掃討を優先する事に首を傾げると、サリーは呆れ混じりに言う。


 「何、当たり前の事を言ってんだお前さんは……お宝物色してる時に後ろから喰われたいか?俺は嫌だぞ」


 「そりゃそうだけど……大概はお宝を掻っ払って逃げ出すって感じだろ?だから、こう言う違う遣り方もあるんだなって思ったんだよ」


 通常ならば、倒すのが難しい強大な敵と言えるモンスターが跋扈してる中でお宝を手に入れる時は、それこそ盗人や空き巣の如くコッソリ盗み出して急いで逃げる。

 だが、ヘルガが言ったのは空き巣というかよりは、急ぎ働きの押し込み強盗と変わらない。

 だからこそ、ネッドはヘルガの遣り方もあるのだと学ぶと共に意外そうに感じてしまったのだ。

 そんなネッドの言葉からサリーはネッドの気持ちを察すると、師として言う。


 「それ言われると、お前の反応は解らんでもない。実際、この方法はコイツ(ヘルガ)みたいなデタラメな強さがあるからこそ出来る方法だしな……」


 2人の遣り取りを聞いていたヘルガは何も言わない。

 ただ、静かに敵を警戒し、歩みを進める。

 そんな寡黙なヘルガの後を追うように2人が付いて来れば、ヘルガは2人による周囲の警戒を全面的に信頼しながら掃討を始めた。

 ヘルガによる掃討は此処まで来た時と違い、火力を全面的に押し出した圧倒的な蹂躙であった。

 目に付く敵を片っ端から射殺し、時には40㎜榴弾とM67破片手榴弾で爆殺。

 更には部屋に敵が居れば、最初にM67破片手榴弾を1個。時には2個投げ込んで爆破。

 それから直ぐに突入し、モンスター達という敵の死を確実なモノにする為に銃撃して殺害。

 そんな動きを傍から見ていたネッドはヘルガの合理的かつ効率的。更には洗練された戦闘技術にまたも圧倒されてしまう。


 「見た所から学びてぇけど、ヘルガの動きが凄過ぎてどう学べば良いのか?マジで何も解んねぇ……」


 ネッドが本心から思った事を漏らすと、サリーは敢えて何も言わない。

 そうやってサリーがネッド自身に考えさせると、ヘルガは2人を気にする事無くクリアリングと掃討を続けていく。

 暫くの間。くぐもった銃声と爆発音が響き続けた。

 音がする度にモンスター達は只々死んでいく。 

 それは虐殺とも言っても良い、一方的な殺戮であった。

 そんな殺戮の音が止み、静寂が訪れる。

 その静寂はヘルガがこのフロアに居たモンスター達を一匹残らず、文字通りの皆殺しにした証であった。


 「一先ず、今居るモンスターは全部殺した。後は2人の仕事よ……」


 一仕事終えた様子でヘルガがMk18の弾倉を詰め替えながら告げると、サリーは返す。


 「解った。じゃ、俺と坊主でお宝を集めて廻るから、お前さんには警戒頼んで良いか?」


 「了解。じゃ、頼んだわよ」


 軽いノリでこの後の行動が決まると、その後の動きは速かった。

 ヘルガの援護と警戒の下。サリーとネッドは宝箱のある各部屋へとモンスター達の屍を尻目に警戒しながら進み、宝箱に歩み寄っていく。

 宝箱の前にしゃがみ、ランタンの灯りを頼りにサリーはネッドに鍵開けの実地訓練をさせた。


 「坊主。お前が鍵を開けろ」


 「解った」


 自分が直接動く事になると、ネッドは漸く自分の出番になった。

 そう思いながら鍵開けの道具を手に宝箱の解錠に勤しんでいく。

 ランタンの仄かな明かりと道具から伝わる感触を頼りにピッキングすると、軽やかな金属音がした。


 「良いぞ。坊主……お前が開けろ」


 解錠成功させたネッドをサリーは褒めると、宝箱を開けさせる。

 そうしてネッドがワクワクとした気分で開けると、中には手頃な長さの片手剣や盾等の武具が収まっていた。


 「剣と盾か……金目の物じゃなかったな」


 ネッドが少しガッカリした様子で漏らすと、サリーは「それでも空っぽとかよりマシだ」そう返し、中身をキチンと背嚢に突っ込んでから次へと進む。

 その後もサリーは宝箱の解錠をネッドに任せ、次々に宝箱の中身を回収していった。

 そうして順調に全ての宝箱から中身を集め終えると、広い部屋に移動してお宝の鑑定を含めた物色が始まる。


 「金目のもんは昔の金貨や銀貨。それにネックレスや指輪とかの宝飾品ぐらいだな……」


 ネッドが目の前に広がる集めた物を見ながら言うと、サリーはそれ以外の剣や盾等の武具を眺めながら言う。


 「そうでもねぇぞ」


 「どういうこったよ?サリー」


 ネッドが首を傾げると、サリーはベテランの冒険者として持つ自身の鑑定眼を根拠にして告げる。


 「最初に見付けた剣と盾あったろ?」


 「あぁ、あったな」


 「アレ、結構地味に出来が良いし、材質もそこら辺の武器屋で手に入るのと比べたら断然に良い物だ」


 「マジかよ」


 ネッドが驚くと、サリーは片手剣を差し出して言う。


 「それにな、持ってみろ」


 サリーから片手剣を差し出されると、ネッドは訝しみながらも手に取り、思った事をそのまま口にする。


 「軽ッ!この大きさならもっと重い筈だろ?」


 「あぁ、多分だが……ヘルガ。悪いが、適当な死体を持ってきてくんねぇか?」


 突拍子もない頼みを受けると、ヘルガは文句を言わずにその場から消えた。

 それから程なくしてモンスターの死体を引き摺って戻ってくれば、サリーはヘルガに礼を言ってからネッドに命じる。


 「その剣でヘルガが持ってきたクマみてぇな死体を斬ってみろ」


 サリーの指示に益々訝しみながらもネッドは死体の前に立つと、片手剣を両手で振り上げて構え、勢い良く振り下ろした。


 「なッ゙!?」


 ネッドは信じられなかった。

 自らが振り下ろした刃は分厚い毛皮と脂肪を斬り裂いたばかりか、分厚い肉と骨。それに臓器すらも軽々とバッサリ両断していたのだから。

 そんな片手剣の斬れ味の良さにネッドが驚いていると、サリーは「やっぱりな」そう漏らしてから告げる。


 「まさかとは思ったが、その剣……ミスリルで作られてる」


 サリーがベテラン冒険者としての鑑定眼から告げると、ネッドは強く驚いてしまう。


 「ミスリル!?マジの掘り出し物じゃねぇか!!」


 驚くネッドを気にせず、サリーは涼しい顔で尋ねる。


 「坊主、その剣に刃毀れはあるか?」


 「刃毀れ?」


 鸚鵡返しに返すと、ネッドは言われた通りに刃毀れを確認して答える。


 「マジかよ。刃毀れしてねぇ……」


 驚きと共にネッドが答えると、サリーは師として語る。


 「普通の剣じゃ、お前さん程度の技量で振り下ろしても其処まで綺麗にバッサリと斬れねぇ。だが、それなのにバッサリと斬れた上に刃毀れもしてねぇならミスリルで間違いねぇ……」


 「スゲェ掘り出し物じゃん!」


 ネッドが興奮と共に言うと、サリーは大先輩として言う。


 「お前さんへの教訓だ。そこら辺に転がってそうな剣や盾だからといって、お前さんが金目の物と言ったブツより安いとは限らねぇ……キチンと覚えとけ」


 師として、大先輩として見る目を養え。

 そう告げると、サリーは盾を手に取って見つめる。

 一頻り見詰めて鑑定すると、サリーはヘルガに尋ねた。


 「ヘルガ。お前さん、魔法使えたよな?」


 「少しだけね」


 「なら、俺がこの盾を構えるから弱めの魔法弾を撃ち込んでみてくんねぇか?」


 またも突拍子も無い。否、それどころか下手したら死ぬかもしれない要求をして来たサリーにヘルガは正気か?と、言わんばかりに顔を向けてしまう。

 だが、サリーがそんなバカな真似はしない。

 それを知るからこそ、ヘルガは盾を構えたサリーに向けて一番弱い魔法弾を放った。

 魔法弾がサリーに向けて飛んでいく。

 だが、魔法弾は盾に当たったと同時に煙を上げて霧散し、消えた。


 「マジかよ」


 ネッドが何度目かの驚きを見せる。

 だが、サリーは気にする事無く暢気に言う。


 「こりゃ、スゲェ……まさかとは思ったが、魔法を打ち消す加護が付与されてやがる。後、盾の材質も俺の目が節穴じゃねぇなら、コイツもミスリルで作られてるぞ」


 サリーの言葉にネッドは何も言えなかった。

 だが、それでも絞り出す様に漏らす。


 「俺の目って節穴だったんだな」


 「あのなぁ、お前さんが簡単に鑑定出来るんだったら専門家はどいつもこいつも廃業しちまうだろうが……」


 ネッドに呆れ混じりに言うと、サリーは更に続けて師として言う。


 「お前さんが冒険者として独り立ちしてぇなら、こう言う鑑定とか含めて見る目を養え……そうすりゃ良い具合に金を稼げる様になるし、鑑定で小遣い稼ぎも出来る様になっからよ」


 「なぁ、俺のやる事ってもしかして滅茶苦茶多いのか?」


 ネッドが力なく問えば、サリーは何を今更な事を言ってんだ?と、強く呆れてしまう。


 「冒険者ってな斬ったはっただけが仕事じゃねぇんだ。こう言う事も覚えて上手く金を稼げる様にもならんと、おまんま食ってけねぇぞ」


 「だよなぁ……どっから学べば良いんだよ?」


 嘆くようにネッドが漏らすと、サリーは敢えて厳しく言った。


 「それはお前さん自身で選んで学ぶしかねぇ……だが、学んで来た事は無駄にならねぇ。だから、学びたい事はドンドン好きなだけ学べ。貪欲に貪る様にな」


 厳しくも優しく教えれば、ネッドは何処から学ぶべきか?頭を悩ませながらも考え始める。

 だが、そんな遣り取りをブチ壊すかの様に幾つもの足音が近付いて来た。

 ヘルガは足音のする方へ銃口を向けるようにしてMk18を腰溜めに構えると、2人に告げるのであった。


 「証人よろしく」



ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


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