↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
ヘルガという冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/89

それでも学べ


 あの後も歩みを止める事無く進み続けた。

 モンスターは視認。即、射殺。

 時には40㎜榴弾を撃ち込む。または、ピンを抜いたM67破片手榴弾を投げ、纏めて爆発処理(爆殺)。

 その後に生き残った残敵が居れば、直ぐにMk18で射殺。

 そんなヘルガの戦いぶりは、ネッドの目には戦いと言うより、淡々とした作業にしか映らなかった。


 「コレって本当に戦いなのか?」


 ヘルガの圧倒的な実力に気圧されたネッドが力なく言葉を漏らすと、サリーは気持ちを理解した上で言う。


 「アレが白金等級って言うバケモノの一例であり、俺が今まで見てきた中で最高の腕を持った冒険者だ」


 ネッドの歳よりも長く冒険者をしてるベテランとして告げれば、サリーは後方を確認してから更に続ける。


 「アイツはお前に今日教えてた技術を俺より早く、確実にこなしている。だが、それは一朝一夕で付くモノじゃない」


 「そりゃ俺でも解るけどよ……どんだけ積み重ねれば、ヘルガみたいになれるんだ?」


 サリーの言葉にネッドが問い返すと、サリーは呆れ混じりに言う。


 「ヘルガと同じレベルはハッキリ言って無理だ。俺でも無理だ」


 「何でだよ?」


 「アイツはエルフ。俺達は人間だからだ」


 ネッドの疑問をサリーは種族差という覆せない現実で答えた。

 その答えにネッドが心底残念そうにすると、サリーは師として言う。


 「だが、お前は幸運だぞ」


 「何でだよ?」


 「最高レベルの技術をこうして目の当たりにして学べるからに決まってるだろうが……まぁ、凄過ぎてどうすれば良いのか?解らないのが大きな難点だがな」


 サリーが師として、ヘルガを見て学べ。

 そう告げれば、ネッドはヘルガの動きを注意深く観察し始めた。

 そんな2人の遣り取りをモンスター達を殺しながら聞いていたヘルガは何も言わない。

 ただ、自分の役目をキチンと果たす為に自分がすべき事をしていく。

 そうして、4階層目を踏破して5階層目に降り立つ階段の前まで来ると、食事を兼ねた大休止を取る事となった。

 ヘルガは2人に先に休む様に告げると、バックパックを下ろした。

 それからクレイモア地雷のセット1基を手に通路へと戻ると、クレイモア地雷を慣れた様子で手早く配線を繋ぎ合わせてセット。

 そうしてモンスター達の奇襲に備えを用意し終えると、ヘルガはランタンの灯りの下で食事をしようとする2人の元に戻り、自分達が通って来た通路を警戒する様に見張り始める。

 そんなヘルガの行動を見ると、ネッドは尋ねた。


 「さっきの板みたいなの(クレイモア地雷)はどう言う道具なんだ?」


 問われたヘルガは暗視ゴーグル越しに見張りながらも暢気に返す。


 「大群で来た敵を簡単に皆殺しに出来るデタラメな罠」


 「罠ってそんな簡単に持ち歩けるのか?」


 ネッドが当然の疑問を口にすると、サリーは呆れ混じりに言う。


 「辞めとけ坊主。ヘルガの装備はデタラメ過ぎて参考にならんし、マトモな考えが出来なくなる」


 「それも解ってるけどよ、やっぱ気になるだろ?見た事も無いのばっかなんだから……」


 「気持ちは解る。だが、お前が学ぶべきは休憩と言う無防備な状態で気を抜くなって事と、どうすればヘルガとは違う方法で安全を確保出来るか?考える事だ」


 サリーが師として窘めると共に指摘すれば、ネッドはそれ以上の事は言わなかった。

 そんな2人がビスケットを主食に干し肉やチーズ。それに干し葡萄を食べて昼食を取ってる間、ヘルガは見張りとして暗視ゴーグル越しに注意深く見詰め、耳を澄ませて備え続ける。

 暫くすると、2人は昼食を取り終えた。

 サリーはネッドと共に立ち上がると、通路を静かに見張って警戒するヘルガに歩み寄って告げる。


 「ありがとよ。交代するぜ」


 その言葉と共に右膝を立ててしゃがんでいたヘルガが立ち上がると、2人は警戒し始める。

 すると、ネッドはしゃがんでいたヘルガの傍らに置かれていた、線が真っ暗闇の通路へと伸びるホチキスにも似た道具に手を伸ばそうとした。


 「何だコレ?」


 「触るな」


 ヘルガの声と共にネッドの手が止まる。

 そんなネッドにヘルガは言う。


 「それ、さっき仕掛けた罠を起動させる為の物よ」


 ヘルガが必要な時じゃないなら触るな。

 そう告げると、ネッドはホチキスにも似た道具……クレイモア地雷の点火器を見詰めながら尋ねる。


 「コレを使ったらどうなるんだ?」


 「そうね……数え切れない小さな鉄球が爆発と共にブチ撒けられて、効果範囲に居る奴が一瞬で無惨な挽肉になる。そう言うべきかしら?」


 返って来た答えにネッドはドン引きし、サリーはそれ見た事かと言わんばかりに呆れる。

 だが、ヘルガは気にする事無く自分のバックパックの方へと赴いて座り込むと、バックパックに収めていた食糧を取り出して昼食を取り始めた。

 ビスケットと干し肉。それにチーズをムシャムシャと食べていると、ネッドは隣にしゃがむサリーに尋ねる。


 「なぁ、ヘルガってエルフだよな?エルフって肉を食わないんじゃないのか?」


 ネッドが自分の知るエルフ像が容易く崩れ落ちているのを感じながら問うと、サリーは面倒臭そうに返した。


 「アイツのそう言うのを一々気にしてたら身が持たんから辞めとけ」


 その答えにネッドは「そうするわ」と、返すしか出来なかった。

 そんなネッドを他所にサリーは食事を続けるヘルガに告げる。


 「俺達で見張っとくから、支度するんならしといてくれ」


 ヘルガの装備の欠点等を知るからこそ、サリーは気を遣った。

 そんなサリーに「なら、それに甘えさせて貰うわ」そう返すと、ヘルガは食事を続ける。

 暫くして食べ終えると、ヘルガはサリーの厚意に甘える様にして支度を始めた。

 腰の雑嚢からメンテナンスキットを取り出したヘルガはMk18からサプレッサーと弾倉を外すと、チャージングハンドルを引いて抜弾した。

 その後。ランタンの灯りを頼りに慣れた手付きでMk18を分解していく。

 1分ほどで分解が完了すると、メンテナンスキットを手にしたヘルガは火薬煤等で汚れた各部品を清掃し始めた。

 細かな部品を入念に磨いて火薬煤を落としていく様子をネッドは興味深く見詰める。

 そんな様子を見たサリーはネッドに言う。


 「休める時に休むのも大事だ。だが、それと一緒に自分の装備や道具の手入れもするのも休憩時間の良い使い方でもある」


 その言葉を聞きながらネッドは真剣な面持ちと共に、作業の手を止める事無く進め続けるヘルガを見詰める。

 ヘルガの動きは滑らかで、自分でも簡単に出来るんじゃないか?そう思わせる程であった。

 そんなヘルガを見ると、ネッドは「重いのさえ我慢できれば、俺でも出来るんじゃないか?」そう漏らしてしまう。

 だが、それをサリーは聞き逃す事は無かった。


 「お前、今のヘルガの動きを見てアレなら自分でも出来るんじゃないか?そう思ったろ?」


 「いや、そう言うつもりじゃ……」


 ネッドがしどろもどろに答えると、サリーは溜息を漏らしながらも責めなかった。


 「お前の気持ちは解る。俺だって同じ事を考えた事が何度もあるからな……ヘルガの事を抜きにしてもよ」


 自分の予想とは大きく異なる答えが返ってくると、ネッドは驚いてしまう。

 そんなネッドにサリーは師として真剣に言う。


 「ソイツの動きを見て自分でも簡単に出来る。そう思っちまうってのはな、ソイツ自身が滅茶苦茶高い実力と技術。それに練度を持ってるからなんだ」


 「そうなのか?」


 「お前だって俺の動きを見て、自分でも簡単に出来ると思って実際にやったら出来なかったとか、難しかったってのが何度もあったろうが……」


 サリーが当時の、今よりも未熟だった頃を触れて語れば、ネッドは納得するしか出来なかった。

 そんなネッドに対し、サリーは師として真剣な面持ちで釘を刺す様に言う。


 「高いレベルで熟練した実力者ほど素人が簡単に出来ると勘違いさせるもんさ……だから、お前の気持ちや考えは仕方無い事だ。だが、それが当たり前と思うな。そうなったら、お前は未熟なまんまで終わっちまうぞ」


 サリーが師として告げれば、ネッドは静かに肝に銘じた。

 そんな師弟の遣り取りをヘルガは聞いていたが、口出しする事は一切せずに整備を続ける。

 暫くして清掃や整備。それに組み立てと動作点検を完了させると、ヘルガは満タンの弾倉を叩き込んでチャージングハンドルを引いてからMk18を脇に置いた。

 それから直ぐにバックパックから袋詰めされた大量の5.56㎜徹甲弾を取り出すと、ダンプバックに入れていた使用済みの弾倉を取り出し、目の前に並べていく。

 程なくして並べ終えると、ヘルガは手近な弾倉を1つ取った。

 そして、袋から1発ずつ取り出した弾を弾倉に補充し始めた。


 「なぁ、アレは何やってんだ?」


 ネッドが尋ねると、サリーは答える。


 「アイツの銃って言う武器は弓に矢が無いと使えないのと同じでな、弾ってのが無ければ重いだけの邪魔物になるんだそうだ」


 サリーが答えると、ネッドはヘルガの動きを見詰めながら自分の考えを口にする様にして尋ねる。


 「なら、あの小さい金属の何か(銃弾)が矢で、四角い長いの(弾倉)が矢筒って事か?」


 ネッドの問いにサリーは肯定すると、自分の解る範囲で説明していく。


 「その認識で合ってるぞ。四角い長いのが銃に取り付ける矢筒で、銃はその矢筒から弾を補充しながら撃つ。お前も見たろ?あのアホみたいに連続で撃ってる所をよ……」


 銃の簡単な仕組みと共に強さとも言えるデタラメぶりを聞くと、ネッドはまたもドン引きしてしまう。


 「マジかよ。やっぱデタラメ過ぎだろ……」


 「だが、欠点もある。あの矢筒が空になったら矢筒を交換しなきゃならん。戦ってる時に空になったら無防備になっちまうんだから当然だな」


 サリーが銃の欠点を挙げると、ネッドは思い出す。


 「そういや、何度もあの矢筒を交換してたな」


 「ちゃんと見てて偉いぞ坊主。ヘルガはそう言う欠点を補える様に立ち回りを常に進める……そう言う点も見習っとけ」


 「それってマジで滅茶苦茶難しくねぇか?」


 「それでもやるんだよ。お前さんが本気で腕の良い冒険者を目指してぇなら……」


 サリーが厳しく言い放てば、ネッドはゲンナリとしながらも学ぶ為にヘルガを静かに見つめるのであった。



ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。