それでも日常は続く
翌日の朝。
ヘルガは早朝のトレーニングを始めとした何時もの日課を全て終えると、完全装備の出で立ちで冒険者ギルドに来ていた。
「あ、ヘルガさん。どうしました?」
長い列に並んで漸く自分の順番が廻り、受付の女性スタッフから問われると、ヘルガは告げる。
「依頼抜きでシレーラス探索を続行したくなかったから、ギルド長に伝えといて欲しいの」
それはトミーと交わした約束を果たす為でもあった。
だが、そうとは露知らずに女性スタッフは仕事として返す。
「畏まりました。必ずお伝え致します」
「ありがと。後、暫くは仕事請け負うのが難しいとも言っといて」
感謝の言葉と共に受付を後にすると、其処に満面の笑みを浮かべたサリーが立っていた。
サリーはヘルガの肩に腕を掛けると、笑顔と共に語り掛ける。
「シレーラス行くんだろ?俺達も良いか?」
その言葉に何かを察したヘルガは呆れ混じりに問う様に返す。
「宝箱取れなかったの?」
その問いに対し、サリーは正直に認めた。愚痴る形で。
「何だよ。あのモンスターの数と強さは……7階層まで行けたけどよ、ヤバくて引き揚げざる得なかった」
サリーが答えると、ヘルガは告げる。
「分け前、6:4なら付き合う。もち、其処で見付けた宝も私が先に選ぶのも込みで」
ヘルガが一割多く貰う事を条件として提示すれば、サリーは渋々ながらも条件を呑んだ。
「しゃねーな……それで良い」
そうしてサリーがスンナリ条件を呑めば、ヘルガは更に続けて言う。
「戦闘は私が請け負うんだから良いじゃない。私としては9:1か8:2でも良いのよ?」
ヘルガの手厳しい言葉に対し、サリーはゲンナリとした様子で「6:4で良い」と、降参するしか出来なかった。
そんなサリーの様子を見ると、弟子である青年は呆れ混じりにボヤく。
「相変わらずサリーはヘルガに言い負けてんな」
そのボヤきにサリーは吐き捨てる様に返した。
「うっせぇクソガキ」
そんな2人の様子にヘルガは呆れながら思った事をそのまま漏らす。
「相変わらず仲良いわね」
ヘルガが呆れながらも仲睦まじいと感じていると、サリーは尋ねる。
「それよりもお宝は何処にあるんだ?」
目的の品とも言える多数の宝箱は何処にあるのか?
それを問われると、ヘルガはアッサリ答えた。
「10階層と20階層。その2箇所に多かった……中身は確認してないけど、位置は覚えてる」
「なら、お前さんがガイド兼俺等の護衛だな。俺と坊主はお前さんがあの明かりで照らしてる所を見張るし、荷物持ちに徹する」
銀等級と言う常人では高いレベルの冒険者でありながら、自分は荷物持ちと警戒に回る。
そんな事を平然と言えば、サリーからクソガキや坊主と呼ばれた青年は少し不満そうであった。
「何か、俺達ってヒモみてぇじゃん……実質、ヘルガが居なかったら稼げねぇんじゃさ」
その言葉にサリーは「ガキが偉そうに言うな」そう返すが、ヘルガは違った。
「あのね。適材適所って言葉がある様に私は暴れる。サリーとネッドは周囲の警戒とブツを集めて運ぶ。そうするのが効率的なだけ……」
「そうだぞ坊主。ヘルガの言う通りだ」
2人。もとい、ヘルガの言葉をサリーと共に過去に組んだ事があるからこそ、ネッドは納得は出来てはいなくとも理解していた。
「そりゃ解ってるよ……銀等級のサリーですらヤバいシレーラスで黒曜等級の俺なんて3歩進む前にくたばっちまうのも含めて」
若さ故にネッドは自分も活躍してみたいと言う願望も含め、ヘルガに頼る事に対して気が進まなかった。
そんなネッドの態度に対し、ヘルガはサリーに言う。
「相変わらず初心な坊やね」
「お陰で何時までも半人前のクソガキのまんまだから、俺は頭が痛ぇんだ」
辟易とした様子でサリーが漏らすと、ヘルガは告げる。
「一先ず、シレーラスの手前の街……サイラスに向かう。其処で宿を確保したら、食糧を買い込んで支度をする。で、その翌日にシレーラス……問題は?」
ヘルガがシレーラスに入る前の大まか予定を口にすれば、サリーとネッドが異論を挟む事は無かった。
「それで良いぜ。坊主は?」
「俺も文句ねーよ」
そんな2人が是とすれば、ヘルガはサリーとネッドを連れて冒険者ギルドを後にする。
そして、シレーラスへ向けて歩みを進めるのであった。




