仕事が終わってもそれで終わりじゃない
結論から言えば、私の仕事……セレスティア王女の護衛は非常に珍しい事に血が一滴も流れないばかりか、一切の問題が起きる事無いまま終わった。
その結果として、私は悪くない額面の報酬が記された小切手と言う形でブライディから受け取った。
私は帰り際、セラスにトミーへ宛てた手紙を渡し、トミーに直接手渡しする様に頼んだ。
手紙は昨夜、寝る前に認めた物で、内容はセラスから相談を受けた事。それに手紙を読み、セラス自身に確認を取った後に彼女が選んだ選択に対してフォローして貰いたいというお願いだ。
私としてはセラスとトミーの悩みがどうなるか?なんて、正直な所としてはどうでも良い。
トミーから悩みという形で愚痴を聞かされ、真剣に悩んでいたセラスから相談された以上は2人の悩みが解決される方が私としては気分が良い。
だけど、実際にどうなるか?なんて誰にも解らない。恋愛絡みなら尚更。
なので、私はこれ以上はその件に関わる気は毛頭無いし、どうなろうが知ったこっちゃない。
仮令、それが友の問題であってもだ。
私には関係無いし、私が出来る事も無いんだから当然でしょ?
薄情者とか思うだろうけど、現実問題として私に出来る事は無いし、私自身もこの件に無関係な赤の他人。
後は当事者同士で解決するべき事。
私はこれ以上は踏み込まないし、踏み込む気も無い。
だから、この件は私の中では終わった事でしか無い。
帰る途中で銀行に寄ったヘルガはトミーからの報酬である小切手と、先日受け取ったシレーラス探索の報酬である小切手。
その2枚の小切手を現金化し、自分の持つ口座に預け入れを済ませた。
そうして用の済んだ銀行を後にすると、ヘルガは手近な食堂で遅めの昼食を取る事にした。
食堂でポークソテーと黒パン。それにスープを食べて昼食を済ませると、食後に甘酸っぱいレモネードを飲みながらヘルガは、この後はどうしようか?呑気に考える。
衣類と銃も含めた全ての装具の整備と点検は昨日で全部終わらせた。だから、やる必要が無い。
トレーニングも早朝に済ませてある。なので、これも特にやる理由がやはり無い。
まぁ、体力向上や維持の観点を踏まえるなら、敢えてやっても良い。つうか、やるべきなんだけど……
だけど、今日はやる気が起きないからしない。
今のヘルガにはやるべき事や、やらなければならない事が無かった。
銃や衣類を始めとした各種装具の整備と清掃は昨日に全て完了済。
トレーニングも今日は早朝に済ませてる。
確かにこの後もやって良いが、今日はやる気がしない。なので、トレーニングも選択肢から外れる。
それ故に……
「参ったわね。やりたい事が浮かばないとか……笑える」
自嘲を交えて漏らしたヘルガはレモネードを一口飲むと、改めて振り返る様に考えていく。
家にある本はもう読み終えた。
本屋や古書店も既に見て廻ってるから、目新しいモノは無い。
歌劇を見に行く?演目が私の好きな奴じゃないから、食指が伸びない。
「参った。今日は下手したら、退屈に殺されるかもしれない」
本当に参った様子でまたも自嘲混じりに漏らすと、ヘルガは自身の退屈凌ぎの下手さ加減に呆れながらもやり残していた仕事があった事を思い出す。
「そうだ。シレーラスの探索が未だ途中じゃん」
セレスティア王女護衛依頼を受ける前。自分が請け負っていた未踏破のダンジョン……シレーラスの探索は、依頼人であるギルド長の打算的な思惑から途中ながらも成功と言う形で終えた。
ヘルガにすれば、それでも構わなかった。
だが、探索を途中でほっぽったままにするのは気分がモニョるし、ケツの収まりも良くない。
それ故にヘルガはシレーラスへ再び赴く事を選んだ。退屈を殺す為に……
そして、ヘルガはレモネードを飲み干すと、ヘルガは帰宅するのであった。




