自由の代償
取材が終わりを迎えつつある頃。
ブライディはギルドの長として、最後に1つ。
無粋なのを承知で現実的な事をセレスティア王女に向け、告げる。
「最後にセレスティア王女。貴女様に私が語った冒険者ギルドが様々な者達への受け皿として存在もしていると言う言葉に嘘や偽りは一切御座いません」
その言葉にセレスティア王女ばかりか、セラスは首を傾げる。
だが、ヘルガはブライディが何を言おうとしているのか?察していた。
しかし、それに口を挟む事無くブライディの口から言わせる。
「それには確かに善意も含まれています。しかし、同時に現実的な一面として彼、彼女達に冒険者と言う形でお金を稼ぐ手段を与える事で、税収を得ると言う目的も含まれております」
シビアと言っても良い世知辛い現実的な点をブライディが口にすれば、セレスティア王女は目を丸くして驚きと共に尋ねる。
「税収を得る為ですか?」
尋ねられると、ブライディは肯定する。
「はい。貴女様にこうした事を言うのは心苦しいのですが、善意や建前だけで物事は上手くいかないのが現実です」
その言葉に現実に生きる大人としての重みを2人が感じると、ブライディは続ける。
「先程もお伝えした様に冒険者と言う仕事は困窮する者達や罪を償ったが居場所や仕事の無い者達への受け皿も兼ねています。そうする事で犯罪を犯さずに済む様にし、人生を立て直すチャンスを与える……それは冒険者ギルドの理念の1つでもあり、大事な役目なのも事実です」
困窮する者達が犯罪に走らない。
法的な形で罪を償って監獄から出所した者達に再犯させない。
そうした受け皿としての役目は冒険者ギルドの理念であり、現実的にも大事な役目。
それを改めて告げると、ブライディはその先を言う。
「そして、そうする事で彼、彼女達は冒険者として真っ当にお金を稼ぐ事が出来る様になります。そうして、その者達が日々の糧を得られる様にすると同時に行政は収入に合わせた税収を得る事が出来る様にもなるのです」
そう……出所したばかりの居場所の無い者達も含む困窮する者達に冒険者と言う職を与える事でお金を稼げる様にし、日々の糧を得られる様にすると同時に再犯も含めた犯罪率を低下も狙う。
そして、そんな者達がお金を稼げる様になれば、行政は其処から税収を得る事が出来る。
冒険者と言うのは、サマリアル王国ではセーフティネットであり、様々な人々を経済の輪に入れる重要な取り組みと言えた。
そんな観点を気付けなかったセレスティア王女は、やはり真面目で聡明な性格と王族の一員である事が相まって自身の至らなさに落ち込んでしまう。
だが、これを一学生の身でもある彼女に求めると言うのは酷であろう。
そんなセレスティア王女へ教える様にブライディは冒険者と言う存在が、王国や行政に認められているもう1つの大事な理由を語る為、敢えて問うた。
「セレスティア王女……冒険者が陛下や陛下に仕える者達から特例的に自由を認められている理由を御存知でしょうか?」
その問いに対し、セレスティア王女は自分の答えを告げる。
「人々の為に危険な仕事を代行するからでしょうか?」
その答えをブライディは肯定しながらも、それとは別に存在する大事な理由を優しく教える様にして答えた。
「それも理由の1つです。しかし、それよりも大きな理由はこの国が戦になった際、冒険者達は陛下に仕える兵として王国に尽くすからで御座います」
ブライディの言葉にセレスティア王女は思わず沈黙し、セラスの書き留める手が止まってしまう。
そんな彼女等に対し、ブライディは自身が残酷な現実を突きつけている事を嫌でも理解する羽目になった。
だが、2人は真面目に取材をしている。
そして、セレスティア王女は王家の一員。
だからこそ、ブライディから残酷な現実を突き付けられたセレスティア王女は恐る恐る尋ねた。
「つまり、兵として戦で戦うと言う事なのですか?」
ブライディに向けて、その問いを口にしたと同時。セレスティア王女は気付いてしまった。
隣で友として、書記として取材内容を書き留めてくれているセラスも兵として従軍する事になるのか?と……
だからなのか、セレスティア王女は真剣な面持ちになりながらまたも恐る恐る尋ねてしまう。
「セラスさんはこれを御存知なのですか?」
セレスティア王女から問われると、セラスは正直に答えた。
「はい。冒険者として登録した際に必ずそれを告げられます。そして、ギルドが用意した同意書にサインをして冒険者としての登録が完了するのです」
セラスが淡々と答えれば、セレスティア王女は言葉を失ってしまう。
そんなセレスティア王女へ向け、ブライディは語る。
「全ての冒険者が前線へ赴く訳ではありません」
「え?」
「大半の冒険者は前線へ赴く兵の背後を護る為、更には敵国が潜入させた者達や潜伏してる王国や人々にへ仇なす者達の対処を始めとした治安維持等の活動が主な仕事になります。無論、その間も普段の冒険者として、発生した問題の処理もします」
その言葉に安心して良いのか?
セレスティア王女は本心から悩んでしまう。
そんな彼女を安心させる様にブライディは告げる。
「しかし、其処のセラス嬢の様な学生の身分を持つ者や適正と言える歳に満たぬ冒険者は特例的に動員から除外されます」
「そうなのですか?」
確認する様に尋ねられると、ブライディはハッキリと明言する様に告げた。
「その特例的な除外を御決めになられたのは、国王陛下御自身で御座います」
告げられた答えにセレスティア王女は驚きを露わにしてしまう。
「父上が?」
「はい。国王陛下は子供達や学生は何れ、この王国を背負って立つ未来として人々と同じ様に護るべき存在として見ておられました。その為、国王陛下は特例的な除外する様に命じ、私を始めとした多数の者達はそれに賛同し、受け入れられたのです」
その言葉にセレスティア王女は父親である国王の聡明な考えに驚きを露わにしてしまう。
同時に娘として、父である国王の偉大さに胸を張りたい気持ちも浮かんだ。
だからなのか、小さな声で漏らした。
「父上は其処まで御考えになられてたのですね」
その言葉に対し、ブライディは敢えて何も言わなかった。
すると、セレスティア王女はふとある事に気付いた。
「そうなりますと……学生の身分を卒業を含めて何らかの形で失効したら、敢えてセラスさんを例にしますが、特例が除外されて冒険者として動員されるのですか?」
確認する様に尋ねれば、ブライディは淡々と肯定する。
「はい。そうなります」
不気味にも聞こえる淡々とした肯定を聞くと、セレスティア王女は友人としてセラスに尋ねてしまう。
「セラスさんはそれを受け入れられたのですか?」
「はい。だからこそ、今もこうして冒険者を続けているのです」
覚悟に満ちた答えを聞くと、セレスティア王女は目の前の友に並々ならぬ敬意を覚えた。
しかし、セラスはそれに気付く事無く言う。
「私の父は冒険者でした。その背中を幼い私は見続け、憧れもしていました。そして、両親の死後に稼ぐ宛のない私は冒険者になりました……勿論、父から冒険者は戦時になれば、動員される事も聞かされてました。だから、私はそれを理解した上で同意書にサインし、冒険者の道を選んだのです」
覚悟に満ちたセラスの言葉に対し、セレスティア王女は何も言えなかった。
だが、強い尊敬や敬意の念は確実に感じていた。
しかし、それを口にするのはどうなのか?そうも感じているからこそ、セレスティア王女は黙したまま尊敬や敬意に満ちた眼差しを向ける。
そんなセレスティア王女にブライディは戦時に於ける動員に関して概要を語った。
其れ等の内容を噛み砕いて言うならば、こうだ……
ヘルガの様な白金等級や金等級の様な人の姿を保ってるだけのバケモノに当たる者達は、前線で戦って貰う。
銀等級を含めた銀等級以下の者達は、官憲と軍の指揮下で国内の治安維持を始めとした後方支援。
銀等級以下の者達でも志願するならば、兵として前線で戦う事が出来る。
そう言った事をブライディが語って取材が終わりを迎えれば、其れ等を真剣に書き留めるセラスを他所にセレスティア王女は立ち上がる。
セレスティア王女が立ち上がると、セラスも急いで立ち上がった。
そして、セレスティア王女は深い感謝の念を述べた。
「この度は取材に応じて戴きまして誠にありがとう御座います。ギルド長のお陰で、私は王家の一員として多くの知るべき事を学ぶ事が出来ました。本当にありがとう御座います」
その言葉と共に強い敬意と深い感謝を込めて深々と頭を下げれば、セラスも同様に強い敬意と深い感謝を込めて深々と頭を下げる。
こうして、セレスティア王女とセラスの取材はとても有意義な形で終わりを迎えたのであった。




