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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


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自由と無法は違う


 ギルド長……ブライディはセレスティア王女の取材に対し、答えた。

 冒険者と言う仕事は浮浪者や孤児を含めた仕事の無い者達や元罪人の様に行き場や居場所の無い者達が悪の道へ進まない為の受け皿である事を。

 その様な事を答えた上でブライディは言う。


 「冒険者と言うのは特例的に武装が認められ、本来であるならば違法行為として処罰される殺人行為も特定の条件で法的に許されている面もあります」


 ブライディが冒険者は法的には特殊な立ち位置にある事を告げると、真面目にメモへ書き留めていたセレスティア王女はその手を止めてセラスにメモを任せると共に尋ねる。


 「法的には特殊な立ち位置と言いますと?」


 「先ずは武装です。私を含めた平民等には自己防衛の範囲に収まる武装は許されております。しかし、そちらに居る白金等級(ヘルガ)とセラスを見て解ると思いますが、自己防衛の為の護身と言う点で見れば、過剰な武装と言えるでしょう」


 ブライディがギルド長として、2人の武装は護身の範疇から逸脱してる点を事実として告げれば、セレスティア王女は「言われてみると、その通りですね」と、納得する。

 そんなセレスティア王女に対し、ブライディは更に続ける。


 「しかし、冒険者として依頼遂行に必要な武装と言う事で王国からは特例と言う形で所持。同時に使用が認められています」


 冒険者と言うのは見ての通り、大概の者が様々な武装をしている。

 中には何処かで手に入れた聖剣や魔剣と言った強大な武器を有している者も居る。

 そうした武装の所持と使用を特定条件下に於いて特例的に許可されている。

 そう告げると、セレスティア王女は尋ねる。


 「ギルド長は先程、殺人行為も許されている。その様な発言を致しましたが、具体的な内容はどの様なモノなのですか?」


 当然浮かび上がる疑問をぶつければ、ブライディは答える。


 「そうですね。仕事で多いのは盗賊に対する殺害でしょうか……」


 「盗賊ですか?」


 「はい。冒険者の業務の中には盗賊の討伐や護衛依頼遂行の一環として襲撃者の対応があります。前者は各地を収める領主と国王の許しの下で許されている業務の一環。後者は依頼遂行に必要な行為兼正当防衛と言う形で殺害が特例的に許可されています」


 ブライディが冒険者の請け負う依頼を例にして殺人が特例的に許可されている事を説明すれば、それをセラスは一言一句違える事無く真面目に書き留めていく。

 そんなセラスを他所にセレスティア王女は次の質問をぶつけた。


 「では、それ以外で正当な理由が無いにも関わらず殺人を犯した場合は如何なさるのですか?」


 「先ず、先程も言いました盗賊の討伐や護衛依頼遂行の一環で戦闘した件で話しますが、戦闘の意思が消失し、投降した者を正当な理由も無く殺害した場合は特例の範疇から逸脱したとなり、必要ならば拘束。必要な調査をした上で正当な理由が無いと判明すれば、直ぐに官憲に殺人犯として引き渡します」


 投降した者や戦意を喪失した者達を殺害すれば、必要ならば直ぐにその者を拘束。

 拘束後、徹底的に調査して有罪と判断せざる得ない結果が出れば、即刻、官憲に殺人犯として引き渡す。

 そんな厳しい処置が取られる。

 そう聞かされると、セレスティア王女は思った事をそのまま口にした。


 「意外と厳しい措置を取るのですね」


 そんなセレスティア王女にブライディは正直な意見と現実を交えて告げる。


 「通常の者達と違い、武装が許されている立場である以上、コレは必要不可欠な措置と言わざるを得ません」


 その告げられた言葉の意味を理解しながらも、セレスティア王女は敢えて尋ねた。


 「何故でしょうか?」


 「敢えて問う様に答えますが、冒険者と言うのは魔物や人間問わず、武装も含めて殺しの技術を有しています。そんな者達が好き勝手に振る舞えば、治安はどうなるでしょうか?」


 ブライディの語った答えはセレスティア王女が予想していた答えと同じであった。

 だからこそ、セレスティア王女は何も言わなかった。

 そんなセレスティア王女へブライディは更に言う。


 「貴女様のその沈黙が答えであります。だからこそ、冒険者達に武装を始めとした特例を許すと同時にソレを反した者達を厳しく取り締まる必要があるのです。その為、法は犯していないまでも素行が酷く悪い者を昇級させない措置も取らざる得ないのです」


 最後の締め括りにある素行の悪い者は昇級させない。

 それを聞くと、セレスティア王女はソグルスで言っていたヘルガの言葉を思い出す。


 「確か、冒険者となってから2年の間。素行が悪くなければ、黒曜等級になれないでしたか?」


 「はい。それも治安維持と冒険者になり立ての者達が冒険者は無法者では無い事を理解させる為に必要な措置なのです……そして、黒曜等級以上になった者の中に不届きな考えを持ち、それを実行した者達には不届きな行い如何ではありますが、一番下の白磁等級へ降格始めとした各処分。酷いものや法を犯すものであったならば、即刻官憲に罪人として引き渡します」


 サマリアル王国内の冒険者達と各地の冒険者ギルドを統括する責任ある者として、ブライディがハッキリと断言すれば、セレスティア王女の中で冒険者と冒険者ギルドが自由気儘に生きていると言う考えが一気に吹き飛んだ。


 「私はお話を伺うまでは冒険者の皆様は自由気儘に生きているものと思っていました。ですが、実際は重い責任を背負っているのですね」


 「確かに特例的と言う形で様々な自由を認めています。しかし、先程も語らせて貰った様に自由と無法は大きく異なります。それ故に重い責任を背負わせると共に、子供に教える様にして悪い事をしたら罰が下されると言うのを徹底させる必要があるのです」


 セラスが書き留めながら父の友でもあるブライディが責任ある立場の大人として語った内容に深く理解すると、セレスティア王女は好奇心から尋ねてしまう。


 「私の身勝手な好奇心から尋ねるのは申し訳無く思うのですが、例えばの話としてですが……ヘルガ様の様な白金等級の冒険者が無法者に転じてしまった場合、その際は如何なされるのですか?」


 強い好奇心があった。

 だが、同時に王家の一員として冒険者ギルドがヘルガの様な強大な力を有している白金等級の冒険者が悪の道へ堕ち、無法者となった時はどう対処するのか?気にもなっていた。

 だからこそ、その疑問の答えを知る為に敢えて問えば、ブライディはハッキリと断言する。


 「その場合も私共が取る処置は代わりません。官憲とギルド内の冒険者による合同での逮捕。または殺害も念頭に入れた上で取り締まります」


 その答えに対し、壁に寄りかかったまま遣り取りを静かに眺めていたヘルガは心の中で「そりゃそうだ」と、納得していた。

 そんな己を申し訳無く一瞥したセレスティア王女に対し、ヘルガは呑気な様子で気にせずに言う。


 「私を例に挙げた事を気にする必要は無いわよ」


 その言葉にセレスティア王女が何かを言おうとしたが、ブライディがそれを制した。


 「貴女様が懸念し、彼女を敢えて例にしたのは当然の事。それに彼女はその様な事で気分を害しませんし、寧ろ、それを当たり前とすら思ってます」


 助け舟を出す様に気にする必要が無いと、ブライディが告げれば、セレスティア王女は申し訳無さを感じながらもその好意に甘える事にした。


 「お気遣いありがとう御座います」


 そんなセレスティア王女に向け、ヘルガは涼しい顔で言う。


 「寧ろ、その点が気にならずに触れない方が流石に問題あると思うわよ」


 その言葉にブライディは同意しながらも窘める。


 「ヘルガさん。その様な物言いは慎みなさい」


 セレスティア王女の前だからか、ブライディの言葉は真綿に包んだ様に優しいものであった。

 そんなブライディにヘルガは「普段なら黙れクソエルフって怒鳴ってるだろうに」と、内心で愉快そうにしながら「失礼しました」そう返して再び沈黙した。

 そして、2人の少女による入念な取材は続くのであった。



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