表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/33

それぞれの事情


 取材のキリが着いた昼より少し前頃。

 多数の冒険者から取材をして得た内容をヘルガが手配した冒険者ギルドの一室で、改めて確認する様にセラスと共に纏めていたセレスティア王女は思った事をそのまま漏らす様に言う。


 「冒険者の皆様は様々な人達が居るのですね」


 セレスティア王女の取材に応じてくれた冒険者は大半が冒険者となる前は村々で農民をしていたり、街に住む平民等であった。

 だが、中には貴族の次男や三男坊。それに貴族の令嬢も混じっていた。

 それ以外にも元は商人や傭兵等であったが、仕事が見つからないと言った等の理由で冒険者に転職した者達も居た。

 多数の異なる者達が様々な事情や理由から身分に関係なく冒険者となってる事に対し、セレスティア王女は驚いていた。

 そんなセレスティア王女はふと思った事を口にする。


 「ヘルガ様はお手隙そうなのにお尋ねにならなかった方がいらっしゃいましたが、何故なのでしょうか?」


 セレスティア王女はちゃんと見ていた。

 自分の取材の為に声を掛ける冒険者達を。

 大概は手の空いてる者達ばかりであった。

 だが、何故か一向にヘルガが取材協力を取り付けぬ手隙の者達も居た。

 それを理解してるからこそ、セレスティア王女は純粋な疑問としてヘルガに尋ねる。

 その問いの対し、ヘルガが何と答えるべきか?珍しく言い淀んでいると、薄々勘付いていたセラスは尋ねる様に言う。


 「ヘルガさん。もしかして、あの人達は"前"のある人達なんですか?」


 聞き慣れぬ言葉にセレスティア王女が首を傾げると、ヘルガは白旗を挙げる様に肯定した。


 「そうよ」


 「あの、前のある人達と言うのは?」


 セレスティア王女がその言葉が何を意味するのか?問うと、ヘルガは答える。


 「一言で言うなら、前科者よ」


 「前科者。つまり、元は罪人だったと言う事ですか?」


 確認する様にしてセレスティア王女が尋ねると、ヘルガは肯定すると共に"前のある者"が何を意味するのか?答えていく。


 「そう。罪を犯して監獄に入り、刑期を満了して出所した元罪人……前があるって言うのは、それを大っぴらに言わない様にする為に私達が使ってる隠語」


 冒険者の中には元罪人も居る。

 そんな一面を知ると、セレスティア王女は驚きを露わにしてしまう。

 ヘルガはセレスティア王女とセラスに彼等に取材を求めなかったのか?その理由を述べていく。


 「私は一応は護衛だから、余計なリスクを作らない為に貴女の意に沿わない事を理解した上で敢えて避けた」


 その答えに対し、珍しく不満や不快な気持ちになるセレスティア王女にヘルガは更に続ける。


 「誤解を避ける為に言っておくけど、彼等はキチンと更生している方よ。後、彼等に自分の犯した罪や棄てたい過去を自らの口で語らせたくなかった……正直に言うと、護衛としての理由は建前で、彼らをソッとしておきたかったのが本音ね」


 ヘルガが本当の理由を語れば、不満はあるもののそうした人情を理解したからなのか?セレスティア王女は責めなかった。

 だが、それでも真面目で誠実な性格から一言漏らす。


 「そう言う事情があるならば、私もそれ以上の事は聞きません。ですが、ヘルガ様の口からそうした事を聞かせて貰いたいと思ってます」


 ヘルガの口からそうした点を語って欲しい。

 そんな要求が叩きつけられると、ヘルガは要求を呑むようにして語る。


 「刑期を満了した者達の人生は其処で終わりじゃない。病や事故等で亡くなるなり、自害するなりしない限り人生は死ぬまで続く」


 其処でヘルガが切ると、2人はその言葉が意味する事を察すると共に理解する。

 そんな2人へ向け、ヘルガは更に続ける。


 「で、その人生の続きを生きる為にはお金が必要となるし、そのお金を得る為には仕事をしなければならない」


 「つまり、その方々はキチンと真っ当に生きる為に冒険者の道に進んだのですか?」


 「多分だけどね」


 セラスの確認する様な言葉に対し、多分という形でヘルガが肯定すると、セレスティア王女は疑問をぶつける。


 「キチンと刑期を満了して罪を償ったとは言え、罪人であった方々を冒険者にするのは大丈夫なのですか?」


 差別する気持ちは無い。

 だが、それでも素行を大事にする冒険者ギルドが元罪人達を受け入れるのを矛盾に感じるからこそ、セレスティア王女は尋ね、セラスもその答えを知りたかった。

 そんな2人の問いに対し、ヘルガは答える。


 「だからこそよ」


 「どう言う事ですか?」


 セラスが首を傾げながら問うと、ヘルガは言う。


 「罪を犯した連中が全員が全員救いようのないクズと言う訳じゃない。まぁ、中には救いようのないクズも居るけど……でも、そうじゃない奴等の中には帰る場所や居場所すら無い者も居る」


 「と、言いますと?」


 「前科者の中には幸運な事に出所を待ち、再び雇ってくれる者や愛してくれる者達の居る帰る居場所がある者も居る。そう言う者が居る前科者は人生を取り戻せるけど、そうじゃない前科者は?」


 言葉の締め括りで唐突に問われると、2人はどう答えるべきなのか?悩んでしまう。

 そんな2人に教える様にヘルガは言う。


 「真っ当に生きる為の手段や方法、帰る場所含めた居場所が無い者が悪の道に進まない様にする為、冒険者ギルドは刑期を満了した者達を受け入れるのを選んだのよ……コレはずっと前から決めたそうよ」


 冒険者ギルドが刑期を満了した元罪人達を受け入れる理由を知ると、2人は真面目で優秀だからこそ、その考えに至らなかった自身に歯痒さを覚えてしまう。

 特にセレスティア王女は王族であるが故に、セラス以上に己の至らなさに歯噛みしていた。

 そんな2人にヘルガは更に続ける。


 「一応言っておくけど、ギルド側は手放しに信頼してる訳じゃないわ」


 「どう言う事ですか?」


 「刑期を満了したとは言え、元は罪人……だから、警戒せざる得ないのは否めない。だから、素行とかに目を光らせて法を犯したら、即刻取り締まって官憲に引き渡せる様にしてるし、それで逃げたら官憲と合同で捕縛しにも行く」


 現実的な観点を告げると、2人は納得する。

 そんな2人に向け、ヘルガは締め括る様にして自分の考えを告げた。


 「それでも二度と悪事を働かないように誓って真面目に冒険者とかを勤める者達だって居るのも事実。だから、私としてはそっとしてやりたかったから、貴女に取材させようとしなかった」


 ヘルガが改めて過去に罪を犯した者達への取材を2人にさせなかった理由を告げれば、2人は心から納得した。

 しかし、そうだからこそセレスティア王女は取材したいと内心で感じていた。

 そんな彼女を察すると、ヘルガは釘を刺す様に言う。


 「人の中には触れられたくない古傷を抱えてる者が居る。その古傷が理由で今も苦しんでる者も居る……そんな傷を持つ者の傷を無理に触れるのは流石に人としてどうかと思うわよ?」


 自分を見透かす様にして言われると、セレスティア王女は断念してしまう。

 だが、ヘルガは責めなかった。


 「でも、貴女の気持ちは解るわ。更生した者だからこそ、その者を取材して自分次第でやり直せると知らせたいって言うのはね……」


 「え?」


 「実際、刑期を満了した者達の中には再犯する者達だって大勢居る。そんな者達を1人でも減らせるならと思って、取材してそれを皆に教えて救いの1つにしたい……短い間とは言え、優しさや誠実さに満ちてる貴女の性格を理解してる者としては解らないでもない」


 己を見透かす様にして言われると、セレスティア王女は何も言えなかった。

 そんな彼女とセラスにヘルガは笑顔で言う。


 「さて、辛気臭い話はこれで終わり。折角だから、取材に応じてくれる面白い人を連れてくるわ」


 ヘルガの言葉に2人は首を傾げてしまう。

 そんな2人を他所に後ろに控えていた2人の護衛に退室してる間、2人の事を頼んだヘルガは部屋を後にする。

 それから少ししてヘルガはある人物を伴って戻ってきた。


 「お待たせ。彼が面白い人よ……」


 その言葉と共にヘルガに引っ張られ、前に出された男……王都の冒険者ギルドと国内にある各地の冒険者ギルド支部を統括するトップと言えるギルド長は2人に頭を下げると、自己紹介をする。


 「サマリアル王国冒険者ギルドの統括させて戴いてますブライディです……よろしくお願い致します」


 その自己紹介に2人は礼儀正しく自己紹介を返し、取材に応じてくれる事に感謝すれば、取材が始まるのであった。



面白かったらブクマと評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ