王女様達の取材
朝の冒険者ギルドは何時もの様に活気に満ち溢れていた。
依頼を早いもの勝ちで受注せんとする多くの冒険者。
受注した依頼をどうやって成功させるか?会話する冒険者一党。
様々な情報を交換して遣り取りする年季の入った冒険者達。
仕事とは無関係な話をして盛り上がる冒険者達。
兎に角、冒険者ギルド内は多数の冒険者達で賑わい、活気に満ち溢れていた。
そんな光景を目の当たりにする学院の制服に身を包んだセレスティア王女は、興奮気味にその様子を熱心にメモへ書き留めていく。
すると、書き留める手を止めたセレスティア王女は人集りの出来ている掲示板に気付くと、同じ様に学院の制服に身を包むセラスに尋ねた。
「あの壁際でどの依頼を引き受けるべきか?それを確認してるんですの?」
そう問われると、セラスは肯定する。
「その通りです。壁にはギルドが正式な依頼として受注した様々な依頼が貼り出されており、冒険者達は其処から自分が引き受ける依頼を選びます」
自らの冒険者としての経験を語る様にして答えれば、セレスティア王女はふと思った疑問をぶつけた。
「その際に良さそうな依頼が無かった時はどうなさるのです?」
当然の様に浮かび上がる疑問を口にすれば、セラスは答える。
「その時は残った依頼の中で良さそうな依頼を選びます」
正直に答えると、セラスはセレスティア王女が疑問に思ってるだろう事を察したのだろう。
補足する形で更に続けて語った。
「セティさんも見ての通り、依頼選びは早いもの勝ちな所が強いです。だから、早起きして我先にと掲示された依頼の中から自分にとって一番良い依頼を選びます」
「ありがとう御座います。セラスさん」
感謝したセレスティア王女は今聞いた内容を書き留めると、もう1つ浮かび上がった疑問を口にする。
「因みにですが、一番良い依頼と言うのはどの様なモノを指すのでしょうか?やはり、報酬の良い依頼が一番良い依頼なのですか?」
その疑問に対し、セラスは自身の考えも交えて答えていく。
「それも当然あります。ですが、自分の実力内で成功するか?または、敢えて砕けた言い方をしますが、自分にとって楽に稼げる依頼か?そうした要素から選びます」
「成る程。ただ、報酬が良いからと言って良い仕事とは限らないのですね」
「仰有る通りです。これは補足になりますが、依頼によっては等級を指定する形で依頼を受ける冒険者を逆に選ぶ内容の物もあります」
セラスが肯定すると共に補足説明をすると、セレスティア王女は首を傾げながら尋ねる。
「と、言いますと?」
「敢えて極論で言いますが、セティ様が私の様な黒曜等級や冒険者になりたての白磁等級の冒険者だとしましょう。その際に暴れているドラゴンを退治しろと命じられたら出来ますか?」
そう語り掛けると、セレスティア王女は正直に答える。
「無理ですわね」
「そういう事です。これはギルド側の処置なのですが、最初から等級を指定する事で無用な被害を出さない様にする為です」
依頼によっては等級の指定がある事をギルドによる必要な処置である事をセラスが語ると、セレスティア王女は理解すると共に納得した。
「キチンと考えられているのですね」
「はい。ですが、依頼の発注者の中には等級を指定する方や冒険者を指定する方も居ります。コレは私自身はギルドの職員ではないので詳しくは言えませんが、依頼者の中には裕福な方もいらっしゃいます。その為、確実に成功して欲しいから上位の等級を指定するのだと思います」
セラスが語れば、セレスティア王女はメモ帳にそれを記していく。
そうして記し終えると、傍らで護衛として黙したまま語らずに立っていたヘルガに尋ねる。
「ヘルガ様はセラスさんが今語ってくれた様に指名された事はあるのですか?」
取材も兼ねた好奇心から問われると、ヘルガは答える。
「あるわよ。一番多いのは多分、貴方の御兄様ね」
「御兄様ですか?」
「えぇ、現に私は貴女の護衛として指名されてるでしょ?」
ヘルガが現在進行形で行っている護衛依頼を口にすれば、セレスティア王女は「確かにその通りですわね」と、直ぐに納得してくれた。
そんなヘルガに今度はセラスが尋ねる。
「ヘルガさんにとって、一番良い仕事って何ですか?」
その問いは白金等級と言う冒険者の頂きに立つ大先輩が思う一番良い仕事が何か?セラスが若き冒険者として知りたいものであった。
そんなセラスの問いに対し、ヘルガは答える。
「貴女が言った、楽に稼げる依頼。これに尽きるわね」
身も蓋もない答えにセラスとセレスティア王女は苦笑を浮かべると、ヘルガは「私、真面目に言ってるんだけど?」そうボヤいてしまう。
そのボヤきに2人の少女が申し訳無さそうにしてしまう。
だが、ヘルガは微笑みと共に「気にしなくて良いわよ」と、優しく返してから更に続ける。
「さっきセラスが語った一番良い仕事は何か?その答えは間違ってない。寧ろ、正解と評価しても良いわ」
その言葉にセラスが少し嬉しさを見せると、ヘルガは更に続けて語る。
「だけど、そんな正解を敢えて補足するなら、時には冒険者の実力を抜きにしたソイツ自身の抱える事情が大きく絡む事がある」
「自身の抱える事情ですか?」
セレスティア王女が研究者としての好奇心と共に反芻しながら真面目に耳を傾けると、セラスも真剣な面持ちで耳を傾ける。
そんな2人の少女にヘルガは言う。
「さっきのセラスの様に解り易くする為に敢えて極論の様に一例を言うけど、直ぐに大金が必要になってしまった問題が自身に降り掛かってしまったとしましょう」
分かりやすくする為に簡単な例を口にすると、ヘルガは更に続ける。
「借金返済か?愛する人が病を患ってしまったか……兎に角、そういう事情を抱えてしまった。その解決や解決の一助にする為に纏った金。要するに大金が必要になり、その大金を稼ぐ為に自分の実力では難しい、または不可能に近い依頼を受注する事だってある」
世知辛い現実を教える様にして語ると、2人は沈黙してしまう。
そんな2人にヘルガは師の如く更に続けた。
「だから、一番良い依頼と言うのは簡単に解らないし、正解も無い。それでも敢えて言うなら、その冒険者自身の都合や事情に適した依頼が一番良い依頼と言うべきかもしれないわね」
語られた内容に2人は納得すると共に自分達には無かった視点まで至らなかった未熟さに歯痒さを覚えてしまう。
だが、ヘルガはそれを責めなかった。
「あのね、こういうのは実際に現場で経験を積まないと解らないものだから貴女達が解らなくても仕方ない事よ?だから、そんなに自分を責めるのは辞めなさい……私が悪者みたいだから」
その言葉に優しさが含まれてる事を知ると共にヘルガの様な視点を持てる様に努力しようとする姿勢を2人が見せると、ヘルガは話題を変えると共に目的に進む為に告げる。
「じゃあ、早速だけど話を聞いて回りましょう」
そう言われれば、2人は2人の護衛に護られながらヘルガの後に続いた。
そうして楽しそうに会話を弾ませている数人の冒険者達へ赴くと、ヘルガは語り掛ける。
「話してる所、御免なさい。少し良いかしら?」
その言葉で会話が中断されると、冒険者の1人が尋ねる。
「白金等級の冒険者様が俺達に何か用かい?」
「そこに居る2人は冒険者に関する研究をしててね。悪いんだけど、この2人の為に話をして貰えないかしら?」
要件を切り出す共に2人を指し示すと、2人は自己紹介をした。
「セティと申します」
「セラスです」
そんな2人の少女から自己紹介を受けると、冒険者達は最低限の礼儀として自身も自己紹介をした。
そうして自己紹介が済むと、冒険者達は取材を快諾した。
2人は何故、冒険者になったのか?を始めとした多数の疑問をぶつけ、冒険者達はそれを正直に語っていく。
長く時間が掛かりながらも、2人は満足のいく形で取材が終われば、冒険者達に深々と頭を下げて感謝した。
「この度は私共の取材に応じて戴きまして誠にありがとう御座います」
「良いって。嬢ちゃん達は真剣に俺達の話を聞いてくれたし、こうして答えるのも意外と楽しかったからよ」
冒険者達が乱暴な言葉遣いがらも快く返すと、セラスと共に頭を上げたセレスティア王女は尋ねる。
「取材協力なさって下さった皆様の名前をレポートに記し、残したいのですが……大丈夫でしょうか?」
ヘルガから提出するレポートに今日の取材に協力してくれた者達の名前を記し、同時に取材協力者達へ向けた感謝の言葉を載せて欲しい。
此処へ入る前にそう頼まれたからこそ、セレスティア王女はこうして誠意を見せる様にして尋ねた。
そんなセレスティア王女の御伺に対し、冒険者達は快く快諾してくれた。
「良いぜ。寧ろ、俺達の名前がお貴族様の書き物に残るなんて名誉な事だからよ!」
その言葉を皮切りにその場に居た他の冒険者達も相槌を打つように「そうだそうだ」と、快諾してくれた。
そんな彼等に対し、2人が改めて感謝の言葉を述べると、ヘルガも感謝の言葉を述べる。
「ありがとうね。付き合ってくれて」
「良いって。気にすんなよ」
そうして取材の一端が終われば、次の冒険者へと取材の為に赴くのであった。
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