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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


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何がしたいか?選べ


 その日の夜。

 ヘルガは何時もの様に酒場で一杯引っ掛けていた。

 グラッパを飲み、チェイサーにレモネード。ツマミにサラミを齧りながらノンビリと過ごしていると、入口にセラスの姿があった。

 セラスはヘルガを見付けると、歩み寄って語り掛ける。


 「隣、良いですか?」


 「好きにしなさい」


 ヘルガが何時もの様に素っ気無く返すと、セラスは隣に座った。

 そんなセラスの表情を見ると、何か厄介な問題を抱えている様に思えた。

 だからなのか、ヘルガはバーテンにレモネードを1杯頼んだ。

 バーテンが無言でレモネードを目の前に置けば、ヘルガはそれをセラスの前に差し出して言う。


 「私が奢りたいから、グダグダ言うのは無しよ」


 有無を言わさぬ言葉にセラスは自分は気を遣って貰っている。と、聡明な知性から察してただ一言……ありがとう御座います。

 そう感謝し、一口飲んだ。

 そうして落ち着いたであろうセラスにヘルガは語り掛ける。


 「何か私に相談したいの?」


 見透かす様に言われれば、セラスは素直に肯定した。


 「はい」


 そんなセラスに対し、ヘルガは他人事の様に尋ねる。


 「丁度、暇してたから聞いて上げる。だけど、過度な期待はしないでね」


 ヘルガが耳を傾けてくれる。

 それを理解すれば、セラスは口を開いた。


 「実は正直言って困ってます」


 前置きする様に言うと、セラスは意を決した様子で本題を切り出した。


 「私と同じ教室の殿方達が私に好意的で、何と言うべきでしょうか……」


 其処で何と言えば良いのか?セラスが言葉に迷う様子を見せると、ヘルガはその先を促す為に敢えて口を挟む。


 「つまり、貴方に惚れた野郎共が居る。で、その野郎共は自分と比べたら超偉い奴等でもある……そんな所?」


 ヘルガが直球ストレートに言えば、セラスは認めた。


 「仰有る通りです」


 「つまり、私に恋愛相談をしたいと……貴女、一番宛にならない相手を選んでるの理解してる?」


 その言葉にセラスは申し訳無さそうな面持ちを浮かべてしまう。

 だが、ヘルガは気にする事無く続ける様にして更に問うた。


 「それで?貴女はどうしたいの?」


 具体的な事情を聴かず、敢えてセラス自身はどうしたいのか?それを問えば、セラスは正直に答える。


 「正直言って解りません。ですが、殿方の1人は婚約者が居ります。だから、それに応えるのは私としては駄目だと思っています」


 婚約者の居る1人の殿方がトミーの弟なのを察すると、ヘルガはまたもセラス自身の事を問うた。


 「貴女はその婚約者の居る殿方をどう思ってるの?」


 「嬉しくは思います。私の様な者を好いてくれている事に対しては……ですが、私はその殿方を友人としては好いているのですが、愛する者としては見れないのです。婚約者である彼女の事を差し引いても、愛したいと思えないのです」


 セラスが本音を打ち明ける様にして答えれば、ヘルガは他の殿方達に対しても確認する様に問う。


 「なら、他の殿方とやらには?」


 「その方々も同様です。私の様な者を好いてくれている事は嬉しく思います。しかし、私は平民と言う立場を差し引いても、やはり愛したいとは思えないのです」


 ヘルガの問いにこれも正直に本音を打ち明ける様にして答えれば、セラスは結論を告げる様にして続けた。


 「自分勝手と言われるかもしれませんが、私は皆様を傷付けたくないのです」


 そんなセラスの優しさに満ちた答えを聞くと、ヘルガは容赦無く斬り捨てる。


 「残念だけど、それは無理よ」


 セラスはヘルガの答えに驚かなった。

 だが、それでも何か良い方法が無いのか?ソレを求める様にして言う。


 「無理なのですか?」


 「断れば、傷付く。だけど、断らずにそのままズルズルし続ければ、相手は皆もっと傷付くし、更に言うなら最悪の展開だって起きるかもしれない」


 ヘルガが理由を告げる様にして言えば、セラスはどうすれば良いのか?解らずに俯いてしまう。

 そんなセラスにヘルガは背を押す様に言う。


 「だから、貴女が選ぶべきは他の連中の為になる事じゃない。貴女が選ぶべきなのは自分のしたい事を敢えてする事よ」


 「自分のしたい事を選ぶ。ですか?」


 ヘルガの言葉に顔を上げたセラスが首を傾げる様にして問うと、ヘルガは続ける。


 「貴女は殿方達を学友としてしか見れず、愛する相手として認められない。まぁ、平民っていう立場もあるから余計そうなんでしょうね……」


 「その通りです」


 セラスがヘルガの言う自分が皆の愛を受け取れない大まかな理由を肯定すれば、ヘルガは言う。


 「で、貴女自身はその愛に気付いているからこそ、ソレを受け取る事が出来ない。だからこそ、余計にどうすれば良いのか?解らないから私なんかに相談してる」


 「そうです」


 「なら、こう言う時は自分のしたい事をすれば良い。で、傷付けるのを覚悟の上で皆に誠意を以て振って学友として付き合いを続ける……多分、コレしか無いわ」


 そのアドバイスに対し、セラスは本当にそれで良いのか?考え、悩んでしまう。

 そんなセラスの信条を察すると、ヘルガは確認する様に尋ねる。


 「断った後に何かしらの報復的なのに脅えてるのね?」


 「私は平民です。その平民が貴族の皆様の御好意を無碍にしたら、何をされるのか?解らない……だからこそ、恐いんです」


 少しだけ泣きそうになっているセラスに対し、ヘルガはセラスの置かれた状況が流石に酷すぎる。そう感じると、またも普段ならば焼かないお節介を焼く事にした。


 「その時は私がケツを持つわ」


 「え?」


 「幸いと言うべきか?貴女のその悩みに関して頭を抱えている友人が居てね……ソイツなら、その件に対して貴女が脅える理由を取り除けるかもしれないのよ」


 ヘルガから語られた内容にセラスは驚いてしまう。

 だが、ヘルガはそんなセラスを気にする事無くその背を押す様に告げる。


 「だから、貴女は殿方達に迫られたら誠意を以て嘘を一切付かずに正面から御断りしなさい。後の問題は此方で片付けてやるから……」


 その言葉にセラスは救われた気がした。

 だが、それでも不安はあった。

 だからこそ、懐疑的になってしまう。


 「本当にそれで良いのですか?」


 「他に方法あったら教えて……それを採用するから」


 またも斬り捨てられる様に言われてしまった。

 斬り捨てた本人は更に続けて言う。


 「貴女は優しいし、誠実。だからこそ、悩んでしまったし、誰も傷付けないと思ってしまった」


 その言葉にセラスが肯定に満ちた沈黙で返すと、ヘルガは断言する様に言う。


 「でもね、誰を愛するか?どんな人生を歩んで死ぬか?それは貴女自身が決めるべき事であって、他人に握らせる事じゃない」


 力強い断言にセラスはまたも沈黙すると、ヘルガは更に言う。


 「貴女は人の目を気にし過ぎよ。まぁ、確かに平民と言う立場としては他者の目を気にしないとならないけど、貴女自身がしたい事を蔑ろにして良い理由にはならないわ」


 「そうなのかも知れません」


 ヘルガの言葉を認める様にセラスが返すと、ヘルガは言う。


 「誰かを愛するなら、己を愛する様に愛せ」


 「え?」


 「どっかで聞いた言葉……何処で聞いたか?忘れたけど。要するに何が言いたいかっていうと、貴女は先ずは自分自身を愛しなさい。それから他人を愛してみなさいって事よ」


 告げられた言葉にセラスは「自分自身を愛する」そう反芻する。

 そんなセラスにヘルガは話はこれで終わり。

 そう言わんばかりに告げる。


 「これ以上言う事は無い。私は言うべき事は言った。だから、この後どうするべきか?それは貴女が自分で選ぶしかない」


 最後の言葉が突き放す様なモノに対し、セラスは流石に呆れてしまった。


 「ヘルガ様は優しいのか?厳しいのか?解らなくなりました」


 「私は私。優しいとか、厳しいとかは勝手に決めれば良い……後、私に様は要らない」


 ヘルガがそう返すと、セラスは目の前のレモネードを飲み干してから感謝の言葉を述べた。


 「でも、スッキリしました。私の相談に答えてくれてありがとう御座います。ヘルガさん」


 「礼は要らない。私がそうしたいからかってにしてるだけだから」


 本心から返せば、セラスは改めて感謝して席を立って酒場を後にしていく。

 そんなセラスの背を見送ると、ヘルガはサラミを齧り、静かにグラッパを傾けていくのであった。




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― 新着の感想 ―
ヘルガさんカッコいいな。 やっぱり世話やきだ。
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