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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


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答え合わせ


 疲れはあった。更に装具を纏っての負荷を掛けた状態で何時ものように35キロを走り抜き、邪魔にならぬ所で腕立て伏せやプランクを始めとした各種筋トレをして2時間近く後に帰宅。

 その後。何時もの様に汗だくの衣類と装具を脱いで井戸で水浴びをして汗を流し、ラフな出で立ちになったヘルガはやってきた客。

 否、トミーに呆れ混じりにボヤく。


 「こんな明るい内に私の所に来るとか……アンタ暇なの?」


 呆れるヘルガにトミーは涼しい顔で返した。


 「キチンとスケジュール管理をしてるから気にするな」


 「私もこう見えて納税者だからさ、貴方がこうして城を抜け出してるのを見る度に税金取ってる分働けってなるし、時には正当な脱税に賛成しそうになるんだけど?」


 ヘルガが嫌味と皮肉を返すと、トミーは苦笑いと共に「それを言われると耳が痛い」そう返してから要件を切り出す。


 「今日は本当にありがとう。君のお陰で妹の羽根も伸ばせたばかりか、様々な学びを得られて有意義なモノになった」


 妹……セレスティア王女の取材と護衛に対し、心の底から感謝するトミーにヘルガは素っ気ない態度で返した。


 「報酬分の仕事しただけよ」


 「相変わらずだな。だけど、君にしては偉く優しくないか?」


 呆れ混じりにトミーが問うと、ヘルガは首を傾げる。


 「何処が優しいのよ?」


 「明日もセティの取材に付き合ってくれるんだろ?普段の君なら面倒臭がって絶対しないだろうに」


 それなりに付き合いがあるからこそ、トミーが好奇心から言う。

 そんなトミーにヘルガはまたも素っ気無く返した。


 「単なる気紛れよ」


 「そう言う事にしておこう」


 トミーがコレ以上は言わない。そう返すと、ヘルガは尋ねるようにして言う。


 「今日の護衛さ……驚く事にバカ共が一切仕掛けて来なかった。滅多に無い千載一遇のチャンスだって言うのに」


 ヘルガが自分に何を問おうとしているのか?

 それを察したトミーは敢えて質問で返した。


 「君は何でだと思う」


 その問いに対し、ヘルガはトレーニング前に思い浮かべていた仮説を答える。


 「そうね……バカ共が恐れ、絶対に逆らえない圧倒的な力を持った存在が睨みを利かせたからかしら?」


 ヘルガの答えにトミーはアッサリ認める様に肯定した。


 「結論から言えば、その認識で問題無い。寧ろ、正解と言っても良いな……」


 肯定したトミーは具体的な名前は伏せた上で語る。


 「その絶大な力を持った顔役と僕の思惑は幸運にも一致していた。だから、僕はその人にお願いして、その人は自分の利益も兼ねて妹に手を出そうとするバカ共に睨みを利かせて抑え込んでくれた」


 トミーが語ると、ヘルガは涼しい顔で返した。


 「貴方の居る世界も私の居る世界もそう言う所は変わらないのね」


 「まぁ、御偉い人達の世界も君を始めとした平民の世界も根本は変わらない筈さ……」


 さも当然の様にトミーが答えると、ヘルガは好奇心から尋ねる。


 「その顔役が貴方のお願いを聞き入れてくれたのって利益の為だけ?」


 「その人にすれば、僕に貸しを作れるのも大きな利益だろうね。でも、最大の理由は私の父(国王)だ」


 其処で言葉を止めると、トミーは一息入れてから続ける。


 「父は君にも教えた様に不在。そんな状況で大きな問題……ブッチャケるなら、セティが何者かに殺された。または、誘拐されたとなったら父は普段の温厚で寛大な姿勢が嘘みたいに怒り狂う。そうなったら、関係した者達を片っ端から捜し出して全員吊るすぐらい平気でする」


 父である国王が怒り狂ったら、とても恐ろしい。

 そんな言葉が語られると、理解すると共に納得したヘルガは自分の認識が合っているか?確認する様に言う。


 「要は貴方の妹に万が一の事が起きたら、ソイツもタダじゃ済まない。だからこそ、貴方のお願いに応じる形でそう言う万が一が起きない様にして、自己保身を優先したと?」


 「まぁ、ブッチャケるならそう言う事だね」


 トミーがアッケラカンに認めると、ヘルガは「政治の世界って恐いわ」そう他人事の様にボヤいた。

 そんなヘルガに対し、トミーは話題を変える様に言う。


 「セティに友が出来た」


 「あぁ、セラスの事?」


 ヘルガが問うと、トミーは頷いて肯定してから続ける。


 「彼女と少し話した。平民ながらも礼節を知り、キチンと僕の様な偉い者相手にしても正しい振る舞いを出来る良い娘だったよ」


 その言葉に含みがあるのを察すると、ヘルガはある事を思い出し、それを敢えて率直にぶつけた。


 「セラスがアンタの頭痛の種?ほら、婚約者を蔑ろにしてるアンタの弟が惚れてる平民の娘がセラスなの?」


 ヘルガの問いにトミーは肯定する。


 「そうだ。セティから聞かされた時は僕は本当に驚いたよ」


 「それで?」


 「実際に彼女と話してみて思ったのは、頭が良くて聡明な上に礼節もある良い娘だった。だからこそ、()()()()


 その答えの意味する事を察すると、ヘルガは敢えて問う様にして言う。


 「その様子だと、セラスの身辺は調べ終えてるのね。銀等級冒険者の娘で、本人も優秀な部類の冒険者でしかない事を含めて」


 「当然さ……だから、ハニートラップの可能性が極めて低い事に安堵してる」


 心の底から参った様子で言うと、トミーは自身が頭を抱えてる理由を打ち明ける様にして語る。


 「あのセラス嬢が悪人なら話は簡単に済んだ。しかし、調べれば調べる程に天涯孤独の身でありながら腐る事無く善良で居続けたばかりか、セティ始めとした高貴な者達と劣らぬばかりか、切磋琢磨出来る程に努力も怠らない事が解ってしまってね」


 トミーにすれば、セラスが悪人なら手段がどうあれ、心置き無く手っ取り早く片付ける事が出来た。

 しかし、実際のセラスは優等生の部類に入る善良な苦労人。

 だからこそ、責められなかった。

 そんなトミーにヘルガは他人事の如く涼しい顔で宣う。


 「それは私には関係無い話よ」


 「解ってるよ。でも、愚痴は言わせてくれ」


 そう返したトミーにヘルガは自分には関係無い。そう言いながらも、要求する。


 「貴方がセラスに頭を抱えるのは理解してるけどさ、どんな方法や対処をするのかも興味無い。だけど、悲劇的な結末だけは辞めなさいよ?」


 その要求にトミーは心外と言わんばかりに少しだけ怒気を露わにした。


 「君は僕の事を何だと思ってるんだ?」


 「私に面倒だったり、厄介だったりするクソ仕事を押し付ける面倒臭くて厄介な飲み友」


 ヘルガが率直に思ってる事を答えると、トミーはその答えに呆れながらも本心で返した。


 「ボロクソ言いながらも僕を友として呼んでくれるのは嬉しいよ。だけどさ、僕には善良な娘に理不尽な目に合わせたいって気持ち悪い趣味は生憎と無い」


 「なら、良かったわ」


 トミーの言葉に涼しい顔で返したヘルガに対し、トミーは大きな溜息を漏らしてしまう。


 「ハァァ……ハニートラップって最悪の展開は限りなく薄くなった事だけは良しとしておかないとな」


 困った様子ながらも、一番最悪な可能性が実質消失している事にトミーが安堵すると、ヘルガは助け舟を出す様に意見した。


 「だったら、先ずはセラス本人の意思を確認しなさいよ」


 「え?」


 「アンタの話通りなら、セラスは色んな野郎から好かれてるつうか惚れられてて何股してるの?状態。だったら、セラス自身はその状況をどう思ってるのか?実際に本人の口から確認してから対処するんでも遅くないんじゃないの?」


 ヘルガが理路整然にセラス本人から聞き取りして、その状況の当事者として自身はどう思っているのか?

 それを確認してから対処方法を選んでも遅くない。

 そう言われると、トミーはそれを素直に受け入れた。


 「そうだね。先ずはセラス本人に確認するのが筋だよね……」


 「セラスなら正直に答えてくれると思うから、その答えを対処方法模索の基にして対処するのが多分だけど、一番手っ取り早いと思うわよ」


 ヘルガが他人事ながらも的確にアドバイスすれば、トミーは敢えて最悪の可能性を問うた。


 「セラスが弟を好いていたら?」


 「そんなの知らん。私には関係無い話なんだから、アンタ達が何とかしなさいよ」


 関係無い。

 その一言で斬り捨てられてしまうと、トミーはヘルガに満面の笑みを浮かべて中指を突き立てるのであった。



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