対価
ダンジョンコアに到達してからの帰り道は順調な道行きであった。
途中でモンスターと遭遇して退治したり、時には退治し終えたばかりの駆け出しな冒険者達の取材もする事が出来たが、入場手続きの為の詰所へ無事に戻る事が出来た。
そんな詰所にある休憩用ベンチに座り、今回の取材で纏めたメモをセレスティア王女が振り返る様に確認していると、ヘルガは普段ならば焼かないお節介を焼いた。
「ねぇ、セティ。明日、私に付き合ってくれるなら貴女の取材に協力しても良いわよ」
「本当ですか!?」
セレスティア王女が驚きと共に食いつくと、ヘルガは更に続けて言う。
「取材とは言ってもダンジョンに行く訳じゃないわよ。ギルドで他の冒険者に声を掛けて、取材出来る様にするだけだから……」
ダンジョンに行くだけが冒険者を知る方法ではない。
それを理解するからこそ、セレスティア王女はヘルガの提案を快く受け入れた。
「是非お願いします!」
「なら、決まりね。あ、お二人さんも彼女の護衛として付き添って貰って良いかしら?」
休みながらもセレスティア王女警護の為に警戒を怠らぬ2人の護衛にも付き合って貰いたい。
そう願えば、2人の護衛が反対する事は無かった。
「そう言う事でしたら喜んで」
「私も構いません」
2人の護衛が明日の取材でも同行する事を快諾してくれれば、ヘルガは「悪いわね」そう簡単に謝罪する。
そうして3人が明日の取材する事になると、セラスはヘルガに申し訳無さそうに言う。
「明日の取材に同行は喜んでやらせて戴くんですが……」
その言葉と表情からヘルガはセラスが何をしたいのか?察すると、護衛の長として許可した。
「あぁ、戦果回収してなかったわね。良いわよ。この後はギルドに戻るだけだから行っても問題無いわ」
「ありがとう御座います!」
セラスが感謝すると、ヘルガは更に続けて言う。
「私が演練で仕留めたのとか、貴女を助けた時に始末した連中の分も回収しちゃいなさいな……そこら辺の事も私がギルドに話を通しておくから」
ヘルガが自分の内情を鑑みる様にして善意からお節介を焼けば、セラスは改めて感謝する。
「何から何までありがとう御座います」
「気にしなくて良いわよ。私は貴女を雇っただけに過ぎないんだから……あ、私達は休んだらギルドへ戻るわ」
そう返せば、セラスはヘルガの善意に感謝しながら詰所を後にして急いで最深部へと向かった。
そんなセラスを見送ると、セレスティア王女はヘルガに言う。
「ヘルガ様は御優しい方なのですね」
自分の安全を最優先して護衛をしてくれたり、途中で出会った冒険者達に自分が取材出来る様に手筈を整えてくれた。
更にはこうしてセラスの為に善意と共に別れる事を許しもした。
だからこそ、セレスティア王女はヘルガが優しいと正直に感じていた。
しかし、ヘルガにすればそう言う優しいという感情からではない。
「そう言うんじゃないわよ」
ヘルガが自分は優しくない。
そう返すと、セレスティア王女は首を傾げる。
「そうでしょうか?」
「私は結果的に彼女の本来の行動予定を潰してしまった。更に言うなら、彼女の獲物も横取りした」
そう返されたセレスティア王女は「確かに」と、同意すると共に自身もセラスの本来の予定を潰した者である事を理解すると共に申し訳無さを覚えてしまう。
そんなセレスティア王女に対し、ヘルガは更に続けて自分がセラスにお節介を焼いた理由を述べていく。
「相手の事情を無視して自分の為に利用しちゃった以上は埋め合わせしてあげないと申し訳無い。それに利用して使った以上はその分の対価を支払わないと人として不味いし、それ以前に筋が通らないわ」
ヘルガの語った答えを聞くと、セレスティア王女は真面目な面持ちと共に言う。
「ならば、私もヘルガ様に明日の取材に付き合って貰う対価を支払わないとなりませんね」
自分も筋を通さんとするセレスティア王女にヘルガは涼しい顔で意外な答えを返した。
「要らないわよ」
「何故です?」
セレスティア王女がヘルガの答えに首をまたも傾げると、ヘルガは素っ気無く答える。
「その分の報酬も既に支払われる契約だから」
「え?」
「兎に角、貴女が気にしたり、心配する必要は無いから安心しなさいな」
ヘルガが安心させる様にして告げれば、セレスティア王女は「そう言う事でしたら、御言葉に甘えさせて戴きます」と、感謝を込めて返した。
その後。休憩が済めば、3人は詰所を後にしたのであった。




