表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/33

異常な白金等級冒険者による演練


 暫くの間。

 静かな時間だけが過ぎ、周りは全て同じに見えてしまう木々や葉の生い茂る森が続いた。

 そんな静かながらも不気味な中をセレスティア王女とセラス。それに2人の護衛は緊張に満ちた面持ちで警戒しながら歩みを進めていく。

 すると、ヘルガが突如として立ち止まった。

 立ち止まったヘルガは静かにその場にしゃがむと、静かに目を凝らして正面を見詰め始めた。

 一頻り見詰めて目的の連中と言えるゴブリンの群れを視認すると、ヘルガは振り返って小さな声でセレスティア王女達に告げる。


 「居たわ。ゴブリンよ」


 その言葉に皆は驚く。

 だが、具体的な位置は解らない。

 そんな様子にヘルガはチェストリグの弾嚢の脇にある大きなパウチから単眼鏡を取り出すと、皆へ静かに自分の居る所まで来るように命じる。

 そうして皆が足音を立てぬ様にして静かにやって来れば、ヘルガは単眼鏡を差し出しながら指差して告げる。


 「この正面。距離は約200メートルと言った所……そこにゴブリンの群れが居るわ」


 その言葉に懐疑的な視線を向けながらも、セレスティア王女は単眼鏡を手に取って覗き込む。

 単眼鏡越しにゴブリン達の姿が見えると、セレスティア王女は驚きと共に尋ねてしまう。


 「本当に居ました。でも、何で解るんですか?」


 「私、こー見えてハイエルフだから森の中を簡単に見通せるのよ」


 問われたヘルガが呑気に返すと、セレスティア王女から単眼鏡を渡されたセラスも確認し始める。


 「本当に居る。でも、数は少なそうですね」


 ゴブリンを視認すると共に数を大まかに確認したセラスが言えば、ヘルガは講師の様に指摘する。


 「キチンと確認するまでは少ないと思い込むのは厳禁よ。それで油断するなんて論外だからね?」


 その言葉にセラスは同意すると共に申し訳無さそうにする。

 すると、2人の護衛が「私達も後学の為に拝見してもよろしいでしょうか?」そう尋ねて来た。

 ヘルガはその御伺に許しを与えると、2人の護衛に変わって周辺警戒をする。

 そうしてヘルガが安全確保すれば、2人の護衛達はセラスから単眼鏡を受け取って確認していく。


 「本当に居た。武器を持ってるのはそんなに見当たらないな」


 その言葉と共に護衛がもう1人の護衛に単眼鏡を差し出すと、その護衛は単眼鏡を覗き込んで目を凝らしていく。

 少しして見つければ、その護衛も同じ様に漏らす。


 「本当だ。ゴブリン居た」


 そんな皆に向け、ヘルガは小声で告げる。


 「悪いけど、この後もまた移動するわよ」


 「風下に向かうんですか?」


 セレスティア王女が確認する尋ねれば、ヘルガは肯定する。


 「そうよ。仕掛けるなら風下からが基本だから当然よね」


 その肯定にセレスティア王女始めとした面々が納得すると、単眼鏡を回収したヘルガは再び歩き出す。

 また暫く歩いて風下に移動すれば、先程の様に方向転換をしてゴブリンの群れへ向けて一歩ずつ静かに、確実に接近していく。

 そうして一頻り進んだ所で再び立ち止まると、ヘルガは少し考える。


 このまま奇襲を仕掛けるなら、目立つ荷物と邪魔な荷物を別の奴に持たせる方が良いわね。


 そう判断したヘルガは皆にしゃがむ様に命じると、背負っていたバックパックとベネリM4を静かに降ろした。

 それから直ぐにバックパックからGM94と予備の弾が12発収まる2つのバンダリアを取り出し、護衛の1人とセラスに命じる。


 「貴方はコレ(バックパック)を背負って。セラスさんはコレ(ベネリM4)を持って」


 それぞれに差し出された其れ等を受け取ると、2人はその重さに驚きを露わにしてしまう。


 「な!?」


 「重い」


 差し出された其れ等の重さに2人が驚くと、ヘルガは気にする事無くベネリM4を持たせたセラスに注意喚起する。


 「その武器の引金には絶対に触らない事」


 「この(クロスボウ)の引金を小さくした部分ですか?」


 セラスが確認する様に尋ねれば、ヘルガは「そうよ」と、肯定。

 それからGM94と予備の弾が詰まった2つのバンダリアを身に帯びたヘルガは次の行動を告げた。


 「悪いけど、此処から先は這っていくわよ」


 「何故でしょうか?」


 セレスティア王女が純粋な疑問として問えば、ヘルガは答える。


 「ゴブリン共にバレない為に必要なのよ」


 ヘルガが無駄な事を一切させない事を短い間ながらも理解していたセレスティア王女は「解りました」と、直ぐに納得。

 そして、王女の身ながらヘルガの指示通りに地面を這って進んだ。

 そうして接近しながらも安全な距離まで時間を掛けてゆっくりと進めば、ヘルガは静かに立ち上がる様にしゃがみ姿勢を取ってゴブリンの群れを警戒しながら次の行動を命じる。


 「護衛2人は左右に別れてしゃがみ、左右と後方の警戒」


 その命令を受けた2人の護衛は素早く這って左右に別れてしゃがみ姿勢を取り、左右と後方の警戒を始めた。

 そうして周辺警戒による安全確保を済ませると、セレスティア王女とセラスに自分の傍らに来てしゃがみ姿勢を取る様に命じる。

 程なくして2人の少女がヘルガの傍らに来れば、ヘルガは背負っていたGM94を手に取って上部の畳まれたサイトを上げながら告げる。


 「これからするのは広範囲に攻撃出来る魔法使いと同じ様な攻撃。その攻撃を初手として敵の数を減らすと共に混乱を誘う」


 講師の如く告げれば、泥だらけのセレスティア王女とセラスは真剣にゴブリンの群れを見据える。

 そんな2人を他所にGM94を構えていたヘルガは2人に耳を塞ぐように言う。

 2人が耳を塞いだのを確認すると、ヘルガは引金を引いた。

 軽やかで慎ましい砲声と共に43ミリ榴弾が放たれて放物線を描いていく。

 ヘルガはフォアエンドを勢い良くポンプアクションさせて排莢と共に薬室へ次弾を装填し、遠くで木霊する爆発音をBGMにして2度目の引金を引いた。

 其処から更に2発撃ち込んでGM94が弾切れとなると、GM94を脇に投げて直ぐ様Mk18を掴んで瞬時に構える。

 そして、4発の43ミリ榴弾の猛威から生き延びた残存するゴブリン達をくぐもった銃声と共に次々と射殺していった。

 30秒も掛からずにゴブリンの群れを苦も無く皆殺しにし終えれば、ヘルガは生き延びた取り零しが居ない事を残心の要領で確認していく。

 そうして取り零しが居ない事を確認し終えると、ヘルガは涼しい顔でセレスティア王女に尋ねた。


 「コレで良いかしら?」


 その問いに対し、セレスティア王女はどう答えるべきなのか?解らなかった。

 勿論、セラスも同様に困惑していた。

 2人にすれば、自分達はキチンと見ていた。

 だが、最初の攻撃で4度の爆発でゴブリン達の大半が殺されたのは理解出来たが、その後に起きた息を吐く間も無く行われた攻撃は理解出来なかった。

 そんな2人の少女を他所に好奇心から警戒を怠り、ヘルガの攻撃を見ていた2人の護衛は互いに言う。


 「今の攻撃って練度の高い魔法使いを1人か2人と、優れた弓兵が数人居ないと再現出来ないよな?」


 「あぁ、それを独りでやって退けて涼しい顔でコレで良いとか……デタラメ過ぎるだろ」


 そんな2人の言葉が聞こえる程度にセラスは落ち着いていたのだろう。

 2人の護衛の言葉に同意する様に言う。


 「私もそう思います」


 そんなセラスの言葉に護衛の1人は「そうだよな?」と、同意する様に返した。

 すると、落ち着き始めたセレスティア王女は行われたばかりの攻撃を独り言ちる様に分析しながらメモに書き留め始めた。


 「最初の強力な4度の攻撃で敵に打撃を与えると共に混乱を誘う。そうして、敵の数を減らすと同時に混乱した敵へさらなる追撃を仕掛けて一気呵成に片付けた……まるで優れた部隊による攻撃。それをヘルガ様はたった独りでやってみせてる」


 分析をそう締め括ると、セレスティア王女は今も周囲を警戒するヘルガに王族として尋ねた。


 「ヘルガ様」


 「何かしら?」


 「ヘルガ様の用いた銃と言う武器を我が国の兵全員に配備する事は出来ないでしょうか?」


 実際に銃の猛威を目の当たりにしたが故にセレスティア王女は王族として当然の疑問をぶつけて来た。

 そんなセレスティア王女に対し、ヘルガは懐かしさを覚えると、過去に同じ問いを答えた時と同じ様に答えた。


 「辞めた方が良いわ」


 「何故ですか!?その武器が全ての兵に行き渡れば、我が国の安全は確保されたも同然となるんですよ!?」


 セレスティア王女が珍しく感情的に声を荒げると、ヘルガは益々懐かしさを感じながら理由を語る。


 「私のこの武器は私自身のレアスキルで得られてるだけでしかない。だから、王国は私に依存する事になり、不健全極まりない状態に陥るわ」


 ヘルガの言葉を理解出来ている。

 だが、それでも王族としてセレスティア王女は続ける。


 「しかし、それでもこの武器は戦争を大きく一変させるだけの力があります!!」


 その言葉も間違ってない。

 しかし、それでもヘルガは過去に答える様に反対する。


 「その通りなのかもしれない。だけど、私という存在が死ねば、その供給は途絶える。そうなった時、私に供給を依存し続けてるだろう王国は瞬く間に周辺諸国に食い荒らされ、最終的に滅びるかもしれない」


 ヘルガの反論に対し、セレスティア王女は聡明で高い知性を持つが故に理解してしまう。

 そんなセレスティア王女に向け、ヘルガは更に続ける。


 「本格的に配備したいなら、私以外からの供給……つまり、自分達で大量に生産出来る様にならなければならない」


 「なら、生産すれば……」


 セレスティア王女が当然浮かび上がる答えを口にすると、ヘルガはそれを切り捨てる。


 「不可能よ。この国に限らず、他の国々であっても此等を大量に生産するのは無理なのが現実」


 「そんな……」


 心の底から残念そうにすると、ヘルガは過去にトミーと同じ様な遣り取りをした事を思い出して懐かしさを強く感じた。

 それ故にポツリと漏らす。


 「やっぱりトミーの妹なのね。トミーも同じ事を私に言ってたわ」


 「え?」


 「だから、コレ以上は言わない。そこら辺の理由を知りたいなら、トミーに聞いてみなさい……アイツなら、それを聞かれた時に貴女が自分と同じ事を私に言ったと直ぐに察して優しく教えてくれる筈だから」


 これ以上は語らない。

 そう告げられれば、セレスティア王女はこれ以上の事は聞かないと、素直に引き下がってくれた。

 そんなセレスティア王女と他の面々に対し、ヘルガは立ち上がると長として言う。


 「長居は無用よ。さぁ、移動しましょう」


 命じる様に言われれば、皆は多数のゴブリンの屍を尻目にダンジョンコアへ向かって移動するのであった。



面白かったらブクマと評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ