普通の黒曜等級冒険者は異常な白金等級冒険者を分析する
セレスティア王女と周囲を警戒する2人の護衛が何故にヘルガがカルディスから聞いた方向とは異なる方向を進んでる事に疑問を覚えていた。
それ故にセレスティア王女は自身の傍らで周囲を注意深く警戒してくれるセラスに尋ねる。
「セラスさん。ヘルガ様はどうして、カルディスさんからお聴きになられた方向とは異なる方向を進んでるのでしょうか?」
その疑問に対し、セラスは自身の経験を根拠にして答える。
「風向きです。恐らくですが、安全と判断出来る距離まで進んだら方向転換して水場の方へと向かうと思います」
セラスが答えると、セレスティア王女は直ぐに思い出して理解すると共に合ってるか?確認する様に更に尋ねた。
「成る程。つまり、セラスさんの戦い方と同じ戦い方をヘルガ様は行おうとしている。そう言う事ですか?」
「恐らく。そう言う事だと思います」
その遣り取りを警戒しながらも然りげ無く聞いていた2人の護衛も納得すると、セラスはヘルガがカルディスからゴブリンを見掛けた事を聞いた後に地図を開いていた事を思い出し、仮説を口にする。
「それとコレは私の想像なのですが、ヘルガさんは水場の近くに群れが居ると当たりを付けたんだと思います」
「成る程。それは理解出来るのですが、ヘルガ様は何故に直接水場へ向かわずにこうして遠回りしているのでしょうか?」
セレスティア王女が純粋な疑問を口にすると、セラスは自分の立てた仮説を答えた。
「コレも私の想像でしかないのですが、恐らくはセティ様の安全の為だと思います」
「私の為ですか?」
セラスの語った言葉を理解しながらも、セレスティア王女はそれがどう繋がるのか?首を傾げると、セラスは理由を語っていく。
「はい。直接水場へ行って正面から仕掛けず、敢えて風下から迂回する様にして進む事で私達の気配をゴブリン達に露見させない。そうする事でゴブリンからの奇襲や不意討ちを避ける事が出来ます」
「私達の安全を優先しての選択なのですね」
セラスが語ってくれた利点を聞くと、セレスティア王女は理解すると共に納得した。
そんなセレスティア王女にセラスは補足する様にして続けて言う。
「後、もう1つあるとするならば、先程セティ様が仰られた様に私の戦法と同じ様な戦法をする事で逆にゴブリン達へ奇襲を仕掛ける意図もある筈です」
セラスの語った分析は理解出来た。
勿論、納得もした。
だが、それでも疑問はあった。
「例えばですけど、ヘルガ様は私共が居なかった場合……ヘルガ様は直接水場へ向かっているのでしょうか?」
ヘルガが自分一人ないし、自分と異なる戦える者達と共に仕掛けるならば、直接水場へ向かっていたのか?
IFの話を疑問として挙げれば、セラスは自分の経験則を交えた上で正直な意見を述べた。
「正直申しますと、解りません」
その答えにセレスティア王女が意外そうに感じると、セラスは「私が同じ立場になったと言う、もしの話と言う形でもよろしいならば、私の意見を述べますが?」そう返せば、セレスティア王女はそれで構わないと言った。
その言葉を聞けば、セラスは語る。
「本来ならば、居場所が解らない場合には目撃情報を頼りに目撃された所へ直接赴き、其処を基点に捜索します」
その語られた内容をセレスティア王女が書き留めると、セラスは続ける。
「そうして直接赴いたら、その場に残る足跡などの痕跡を捜します。そして、見付ける事が出来たならば、それ辿って具体的な位置を探り出す……それが本来取るべき行動なのです」
若いながらもベテランの冒険者として語れば、セレスティア王女は疑問を覚え、首を傾げてしまう。
何故、本来取るべき行動を取らないのか?
何故、自分の安全を優先しているにも関わらず、迷いなく行動を続けてるのか?
解らないが故にセレスティア王女は首を傾げる。
だが、セラスは気にする事無く続けた。
「しかし、ヘルガ様は先程、カルディスさんからゴブリンの目撃情報を聞いた際に地図を開いて自分の位置と水場の位置を確認してました。これも恐らくですが、ヘルガ様はその時点で水場の周囲に群れが居ると、大まかな当たりを付けたのだと思います」
セラスが分析した内容を斥候として先行していたヘルガは、自身の持つハイエルフの優れた聴覚を以て聞いていた。
聞いていたからこそ、ヘルガはセラスの高い分析力に感心すると共に呆れてしまう。
見事な分析ね。
本当に4年しか冒険者してないの?って、くらいに解ってるじゃん……
マジで4年しかしてないの?
高い分析能力を見せたセラスに対し、ヘルガはキチンと警戒しながら進みながらも冗談混じりの呟きを心の中で漏らす。
実はセラスは私と同じ様なエルフ。
実際の歳は数百過ぎとかで、冒険者としての経験が100年以上とかのヤベェ冒険者だったりしてね……
そう言われたら信じる。
寧ろ、分析力の高さや立ち回りの良さに対して納得するすらあるくらい。
そうじゃないなら……私と同じ転生者か?
結論から言うなら、セラスの分析や仮説は正鵠を射ていた。
全てセラスの分析通りなのだ。
そんなセラスに対し、ヘルガは長い年月を生きてきたエルフか?
それとも、自分と同じ様な前世を持った転生者か?
ヘルガはそんな事を感じながらも、セラスが何者なのか?興味はそこまで感じなかった。
まぁ、別に彼女が何者なのか?なんて、ブッチャケどーでも良いんだけどね。
私としては面倒や厄介事を起こさず、キチンと仕事をしてくれてさえ居れば構わないし……
セラスが何者なのか?
ヘルガは一欠片の興味も無かった。
ただ、問題を一切起こさずにキチンと仕事さえしてくれれば良い。
寧ろ、それだけで十分とすら本心から思っていた。
そんなヘルガは暫く歩いてから立ち止まる。
周囲を見廻して安全な事を確認すると、方角を確認してから目的の方向へと向きを変えた。
そして、2人の護衛を含めた全員に長として命じる。
「此処から先は私語やお喋り禁止。だけど、敵となるモンスターを発見した際は皆に周知出来る様にキチンと大声で報せて……ゴブリンへの接近より、セティの安全が最優先事項だから」
命令するばかりか、その命令の理由を告げれば、皆は直ぐに理解すると共に納得した。
そんな皆に向け、ヘルガは更に続ける。
「陣形に変更は無し。このまま前進してゴブリンの群れへと向かう……質問は?」
皆が沈黙を以て質問無しと返せば、ヘルガは静かに前進するのであった。
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