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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


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14/33

普通と異常


 風下の生い茂る葉の陰にしゃがんで身を潜める若き冒険者である彼女……セラスは短弓を手にジッと息を殺し、視線の先に居る3匹のゴブリンを注意深く見詰めていた。

 その3匹のゴブリンは武器を持っておらず、警戒も疎かで呑気に歩みを進めていた。

 そんなゴブリン達を注意深く見詰めると、セラスはその周囲を警戒する様に見廻していく。


 あの3匹の周りに仲間の姿は無い。

 なら、仕掛けるなら今ね……


 決心と共に短弓を構えたセラスは矢を弦に番えると、狙いを定め始める。

 狙いは通り過ぎたばかりのゴブリン達の一番後ろを進むゴブリンの背だ。

 矢を番えた弦を強く引き、狙いを定めた瞬間。その手を離した。

 矢が勢い良く放たれれば、音も無く一番後ろを進むゴブリンの背を貫き、ゴブリンは何の前触れも感じる事無く倒れて動かなくなる。

 そうして1匹目のゴブリンを仕留めれば、未だ仲間が死んだ事に気付かぬゴブリン達に短弓を向け、矢を番える。

 それから直ぐに二匹目の背を狙い、矢を放った。

 矢が音も無く飛んで二匹目の背を貫くと、先頭を歩いていた最後のゴブリンが気付いて振り返り、驚きを露わにする。

 そんなゴブリンの眉間を瞬時に弓矢で貫いて始末すれば、セラスは3匹の死を確認してからその周囲を見廻していく。


 他のゴブリンの姿は無い。

 仲間の死に気付いた様子も無さそう……と、見ても良さそう。


 周囲を注意深く見廻すと共に周りの音に耳を立てて警戒し、新手が来ないと判断すると、セラスは静かに立ち上がって3匹の死体へと歩み寄る。

 程なくして3匹の死体の前に立てば、ナイフを手にゴブリンの耳を片方ずつ切り取っていく。

 そうして慣れた手付きでゴブリン退治した証拠と言える3匹分の耳と生命を奪った3本の矢を確保したセラスは、ゴブリン達がやって来た方に他のゴブリン達が居る。そう判断を下すと、周囲を警戒しながら慎重に歩みを進め始めた。

 今は亡き3匹の足跡を辿って進んで行くと、1匹のゴブリンがその場で野糞してる姿があった。

 セラスは周りを見廻すと主に集中して耳を澄ませて周囲にゴブリンの姿や気配が無い事を確認すると、ナイフを抜く。

 抜いたナイフを逆手に握り、呑気に野糞するゴブリンの背後から慎重に、静かに歩み寄る。

 そうして野糞を終えたばかりのゴブリンの背後に立てば、ゴブリンの口と鼻の穴を左手で押さえ込んだと同時に喉を掻き斬った。

 斬り裂かれた喉から血を勢い良く噴き出させながらバタバタと暴れるゴブリンが左手の中でグッタリとして動かなくなると、セラスは静かにゴブリンの死体を目の前に置き、血塗れのナイフを手に周囲を見廻していく。


 大丈夫そうね。


 未だ群れに気付かれていない。

 そう判断すると、野糞してたゴブリンの耳を切り取って回収してから足跡を探す。

 少しして見付ければ、セラスはその足跡を辿ると共に警戒しながら慎重に歩みを進めていく。

 暫く進んで行くと、ゴブリンの群れが見えて来た。

 セラスは風下へ足音を立てぬ様に移動すると、木陰から群れの様子を見詰める。


 アレが依頼にあったゴブリンの群れと見て間違い無さそうね。

 数は……


 見付けた群れを構成するゴブリン達の数を数えて具体的な数を割り出すと、セラスはどう仕留めていくか?思考を巡らせていく。


 数は28。

 正面から仕掛けたら間違い無く死ぬ。

 魔法で一気に片付けたいけど、取り零しが出たら面倒臭い。

 そうなると、やっぱり地道に殺していくのが無難ね。


 1匹ずつ地道に殺す事を決めれば、セラスはその場で群れから離れるゴブリンが出るのを静かに待ち続ける。

 30分ほど待つと共に水筒の水を一口飲んで渇きを癒やすと、3匹のゴブリンが群れから離れるのが目に留まった。

 水筒を腰に戻したセラスは静かに立ち上がり、歩みを進める。

 そうして群れを迂回する様にして静かに進んで群れから離れた3匹のゴブリンの背後を取ると、群れのある後方を警戒してからその場にしゃがみ、背負っていた短弓を手に取る。

 静かに矢筒から矢を1本抜き取り、短弓に番えたセラスは最後尾を進むゴブリンの背を狙い、矢を放った。

 最後尾を進むゴブリンの背が音も無く貫かれると、先程と違って他の2匹がそれに気付いて振り向いて来た。

 そんな緊張した状況となってもセラスは慌てる事無く2本目の矢を番えると、狙いを定めて放った。

 2本目の矢が2匹目のゴブリンの胸を貫く。

 だが、もう1匹のゴブリンが手にしていた木の棒を振り上げ、叫び声を上げながら突っ込んで来る。

 そんなゴブリンに対し、セラスは手にしていた短弓をその場に捨てながら立ち上がると、腰に差していた手斧を引っ掴んだ。

 そして、躊躇する事無く投げれば、突っ込んで来るゴブリンの頭を貫くと共に叩き割る。

 すると、背後から仲間の叫び声を聞き付けた残りのゴブリン達が駆け付けてくる慌ただしい多数の足音がセラスの鼓膜を叩いて来た。


 「ヤバい!バレた!」


 セラスは慌てて短弓を引っ掴むと、3匹の死体の方へと駆け出す。

 そうして一番手前にあるゴブリンの死体から手斧を引っ掴みながら駆け抜けると、脱兎の如く逃げんと走り続ける。

 セラスは入り組んだ木々の間を勢い良く駆け抜け、背後から迫るゴブリンの群れから逃げ続ける。

 息苦しくなってもセラスは足を決して止めなかった。

 そうして走り続けていると、見慣れぬ出で立ちの冒険者と貴族の令嬢と思わしき少女。それに2人の護衛が視線に飛び込んできた。


 「ゴブリンの群れが来る!逃げて!!」


 セラスが申し訳無さと共に息苦しいのをそっちのけで叫ぶと、見慣れぬ出で立ちをした冒険者。

 否、ヘルガは涼しい顔でMk18を構えると、セラスの後ろから迫りくるゴブリンの群れを撃ち始めた。

 淡々と規則正しいくぐもった銃声を響かせる度、ゴブリンの眉間が次々に撃ち抜かれていく。

 そうして1分もしない内にセラスを追い回していた25匹のゴブリンは死んだ。文字通りの皆殺しであった。

 そんな光景を目の当たりにして唖然としてしまうセラスを他所にヘルガは構えを解かぬまま残心の如く周囲を見廻し、残敵の確認をしていく。

 程なくして安全と判断すれば、ヘルガは構えを解いて後ろを振り返って剣を抜いてセレスティア王女を護る様に周囲を警戒する護衛に告げる。


 「今は安全よ」


 その言葉と共に2人の護衛が警戒を解きながらも、側面を含めた周囲を見廻す。

 そんな護衛に護られていたセレスティア王女はセラスの姿を見ると、驚きと共に語り掛けた。


 「セラスさんなんですの?」


 その声と姿にセラスは心の底から驚くと、その場に跪いた。

 そんなセラスの姿にセレスティア王女は少し困った様子になりながらも、セラスに告げる。


 「セラスさん。跪く必要はありませんわ」


 その言葉にセラスは顔を上げてセレスティア王女以上に困った面持ちを浮かべると、ヘルガが助け舟を出す様にセレスティア王女とセラスに語り掛けた。


 「セティ。今はそれどころじゃないわ……さて、セラスさんだったかしら?他にゴブリンは居るの?」


 冒険者として現状の把握を最優先するヘルガに問われると、セラスは正直に答える。


 「解りません。ですが、私が確認したゴブリンは残り25匹です」


 セラスが駆け出しの冒険者にしてはキチンと答えられてる事にヘルガは少し意外そうに思いながらも、護衛にセレスティア王女の警護を任せると、セラスと共にボディカウント……死体の数確認を始めた。

 1匹ずつ地道に死体の数を数えていく中。セラスはどのゴブリンも正確に眉間を貫かれて絶命している事に驚きと共に恐怖を覚えてしまう。

 そんなセラスを他所にボディカウントを完了させたヘルガはセラスに尋ねる。


 「何があったの?」


 その問いにセラスは申し訳無さそうな面持ちを浮かべると、正直答えた。


 「ゴブリンの群れを地道に倒してたんですが、その時にバレて……その……」


 「あー……地道に各個撃破で安全に倒そうとしたら、叫び声を上げられて群れにバレて追い回されたのね」


 ヘルガが見透かす様にして確認すれば、セラスは「その通りです」と、恥ずかしさと気不味さで心が張り裂けそうになった。

 そんなセラスにヘルガは呑気に言う。


 「まぁ、そういう時もあるわ。次は同じ失敗しない様に気を付ければ良いだけの話だから気にしない事ね」


 「でも、そのせいでセレスティア王女を危険な目に合わせてしまいました」


 心の底から申し訳無さそうにすると共に罪悪感でいっぱいなセラスに対し、ヘルガは助けた者として言う。


 「結果的に彼女を危険な目に合わせたのは事実だし、自分自身を赦せないのは解るわ。でも、此処はダンジョンよ?何が起きるか?解らないのを理解して覚悟した上で彼女もこのダンジョンに足を踏み入れてる」


 ヘルガが告げると、沈黙と共に2人の遣り取りを見詰めていたセレスティア王女はセラスに告げる。


 「ヘルガ様の仰有る通りですわ。私はダンジョンの危険を理解した上で此処に居ります。だから、セラスさんも自分をそれ以上責めるのはお止しになって下さい」


 セレスティア王女が寛大な温情や慈悲を見せる様に告げれば、セラスは改めて跪いて頭を下げた。


 「寛大な御言葉。感謝致します」


 「セラスさん、頭を上げて下さい。此処に居るのは王女ではなくセティと言う貴族の放蕩令嬢ですわ……なので、気軽に話して下さい」


 「ありがとう御座います」


 セラスが感謝の言葉と共に頭を上げれば、ヘルガはセレスティア王女に尋ねる。


 「この後はどうする?予定通り、探索を続けるの?」


 ヘルガが護衛の長として尋ねると、セレスティア王女は答える。


 「はい。このまま予定通り、コアのある最深部へと行ってみたいと思います」


 「了解。なら、引き続き護衛を継続するわ」


 ヘルガが了承すると、セレスティア王女はセラスに語り掛ける。


 「セラスさん。私共と同行して下さいませんか?」


 「え?」


 驚きと困惑の入り混じったセラスにセレスティア王女は理由を語った。


 「私は研究課題として冒険者を調査してますの。セラスさんも冒険者であるなら、私としては友であるセラスさんのお話を聞きたいのです」


 「解りました。セレスティア王女がお望みであるならば、私は反対出来ません」


 セラスが同意すると、セレスティア王女はヘルガに尋ねる。


 「ヘルガ様。申し訳ありませんが、セラスさんの同行を許して戴けないでしょうか?」


 その望みにヘルガはMk18の弾倉を詰め替えながら考えると、仕方無い。そう言わんばかりに許可を下した。


 「私の仕事は貴女の護衛。だから、彼女は護らない。それでも良いなら許可するわ」


 「ありがとう御座います」


 セレスティア王女が許可してくれた事に対して感謝の言葉を述べれば、ヘルガは告げる。


 「一先ず、移動するわよ。死体の臭いに釣られてモンスター達が集まってくるかもしれないから」


 そうと決まれば、ヘルガはセレスティア王女達と共にその場から去るようにして移動するのであった。



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