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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン


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王女は学ぶ


 ソグルスまで徒歩で行く事を選んだセレスティア王女はそれが正解だったと心から感じていたし、歩いて行く事に関しても一切苦に感じなかった。

 ヘルガと言う最高位の冒険者から愉しくも貴重な話を聞け、その前には実際の王都の様子を見る事が出来たのだから当然なのだろう。

 そんなセレスティア王女はソグルスの出入口の近くにある詰所に護衛の1人と共に居た。勿論、ヘルガも一緒だ。

 ヘルガは詰所のスタッフと遣り取りをしていた。

 その内容はソグルスに入った者達の管理簿を見せて貰い、同時に昨日から今の間に見慣れぬ者を見てないか?そんな確認であった。


 「昨日も言いましたけど、不審な者や見慣れぬ者は来てないですよ。勿論、今日もそうした者も見てません」


 「悪いわね、無理を言って……」


 「いえいえ、ギルド長から前もって言われてるのでお気になさらず」


 ソグルスへの出入を管理するスタッフが穏やかな面持ちながらも真剣に返すと、ヘルガは改めて管理簿に目を通していく。

 管理簿には駆け出しの冒険者やダンジョン等でキャンプする趣味人の名前があった。

 そんな管理簿をセレスティア王女は好奇心から脇から覗き込むと、知ってる名前があった事に珍しそうにすると共に少しだけ驚きを見せる。


 「あら……この方は」


 セレスティア王女がふと漏らした言葉を聞き逃す事無かったヘルガは確認する様に尋ねる。


 「知り合いの名前が載ってた?」


 ヘルガが問うと、セレスティア王女は隠す事無く正直に答える。


 「はい。私と同じ学院に通う学友の名前がありました。黒曜等級の冒険者としてゴブリン駆除の為に来てるとありました」


 その答えを聞くとヘルガは直ぐに管理簿にある黒曜等級の冒険者を捜し始めた。

 程なくして黒曜等級で、ゴブリン駆除の為に入場した冒険者の名前を見ると、ヘルガはセレスティア王女に確認を取る様に名前を口にする。


 「黒曜等級の冒険者……セラス。彼女が貴女のお友達かしら?」


 「はい。そうです」


 セレスティア王女が肯定すると、ヘルガは同行者を確認する。

 管理簿に同行者の記載は無かったの知ると、ヘルガはスタッフに尋ねる。


 「ねぇ、此処に載ってるゴブリン駆除で来たセラスって黒曜の冒険者だけど……独りで入ったの?」


 ヘルガに尋ねられると、スタッフは直ぐにその時の事を思い出し、肯定した。


 「はい。1人でしたよ」


 そうして管理簿の内容に間違いが無い事を確認出来ると、ヘルガは管理簿をスタッフに返した。

 それから呆れ混じりにボヤく様に漏らしてしまう。


 「ゴブリンの群れ相手に単独で挑むとか、貴女のお友達は命知らずなのかしら?」


 「ゴブリンの群れを単独で挑むのは危険なのですか?」


 ゴブリンはスライムよりは強いが、基本的には雑魚の代名詞だ。

 村に現れたゴブリンを村人が倒した。追い払ったなんて話も珍しくない。

 それを知るからこそ、セレスティア王女はヘルガの言葉に意外なモノを感じると共に首を傾げてしまった。

 そんなセレスティア王女にヘルガは冒険者として答える。


 「一匹や二匹くらいなら単独でも問題無いのよ……でも、ゴブリンってのは基本的に群れで行動するから単独で挑むのはハッキリ言って無謀なのよ。で、たかがゴブリンと侮って群れに挑んで逆に殺されて身包み剥がされた冒険者とかも珍しくないのが世知辛い現実でもあるわ」


 ヘルガが世知辛い現実を答えると、セレスティア王女は自分が学院等で学んだ事が間違っているのか?そう思いながらも口にする。


 「学院ではゴブリンは弱いモンスターと学んだのですが、違うのですね」


 セレスティア王女が尋ねるように言うと、ヘルガは半分だけ肯定し、残り半分は否定を込めた補足説明で返していく。


 「弱いモンスターと言う認識も間違って無いわ。でも、それは一匹や二匹と言った極少ない数での話……ゴブリンは基本的に5匹とかで動くし、大きな群れになると10匹や20匹。下手をすると、100匹居たりする。だから、そんな数を相手に独りで挑むのは正直、自殺に等しいのよ」


 ヘルガが熟練の冒険者として現実を語れば、セレスティア王女はそれをメモに認めていく。

 メモに認め終えると、セレスティア王女は気になっていた事を尋ねた。


 「所で気になっていたのですが、職員の方にソグルスに入った方々を尋ね、書類も確認した理由をお尋ねしても良いでしょうか?」


 解らない事は直ぐ素直に尋ね、学ぼうとする姿勢をセレスティア王女が一切の嫌味無く見せると、ヘルガは少し好ましく思うと共に優しい教師の如く答えていく。


 「今回は貴女の護衛の為と言うのが主な理由。でも、こういう遣り取りする根本的な理由は仕事に望む前にこうして現地で情報を集めるのは仕事の成功に近付く為に必要不可欠だから……コレに尽きるわ」


 ヘルガが具体的に答えると、セレスティア王女はメモを取りながら尋ねる。


 「成功の為ですか?」


 「そう。ギルドで依頼を受ける際、依頼書に記されてるのは依頼内容と依頼人。それに仕事する場所だけ……だからこそ、こうして現地の人達と話をして、具体的な問題や実際の状況。討伐なら、討伐対象の居る具体的な場所の手掛かりや位置を知る必要がある。仕事を成功させ、生きて帰る為にもね」


 ヘルガの語った理由にセレスティア王女は理解すると共に素直に納得すると、学友であるセラスの事が頭を過った。

 そんなセレスティア王女は対応してくれたスタッフの元へ赴くと、礼儀正しく丁寧に尋ねる。


 「失礼します。先程、お尋ねした黒曜等級の冒険者であるセラスは入場前にゴブリンの規模や位置を確認致しましたか?」


 セレスティア王女に問われると、スタッフは礼儀正しく対応した。


 「はい。その方は貴女がお尋ねした通り、ゴブリンの発生した位置と数を確認しました」


 スタッフがハキハキと簡潔明瞭に答えると、セレスティア王女は更に続けて尋ねる。


 「ゴブリンの数は解りますか?」


 その問いに対し、スタッフは心の底から申し訳無さそうに答えた。


 「申し訳御座いません。この様な報告をするのは心苦しいのですが、私共も具体的な数は掴めていないのです。勿論、件のセラス氏にも同じ様に具体的な数は不明である事はお伝えしました」


 スタッフが嘘偽りを一切抜きに正直に答えると、セレスティア王女が責める事は無かった。勿論、ヘルガも具体的な数を把握出来ていない事を責めなかった。

 寧ろ、自分とセラスに解らない事を正直に解らないと答えてくれた事に好ましさを覚えていた。

 そんなセレスティア王女は最後の質問を投げた。


 「では、そのゴブリンの具体的な位置は解りますか?」


 「それに付きましては……失礼します」


 一言断りを入れて壁際へ赴いたスタッフは壁に掲示されたソグルス最深部の簡易地図の前に立つと、備え付けの指し棒で位置を示しながら告げる。


 「ゴブリンは此処と此処。それに此処で目撃されました。コレに関しても残念ながら目撃情報のあった周囲に群れが居ると言う可能性しか無いのが現状です」


 ゴブリンを目撃した者達から得た位置を指し示すと、ヘルガは自分の持つソグルス最深部の地図を取り出し、その位置に印を付けていく。

 そんなヘルガを他所にセレスティア王女はスタッフに改めて尋ねる。


 「セラスさんもソレは御存知なのですか?」


 「はい。入場手続きした際にお尋ねになられたので、具体的な位置も解らない点も含めてお伝えしました」


 スタッフが肯定すれば、セレスティア王女は「ありがとう御座います」と、感謝の言葉と共に礼儀正しく頭を下げて礼を告げた。

 その後。頭を上げたセレスティア王女はヘルガの元へ戻ると、お願いをした。


 「ヘルガ様。この様なお願いをするのは心苦しいのですが、私をゴブリン退治へ赴いたセラスさんの所まで護衛して戴けないでしょうか?」


 王都でヘルガが要望した事を護る様にしてセレスティア王女が望むと、ヘルガは敢えて理由を尋ねる。


 「理由を確認しても良いかしら?」


 理由を尋ねられると、セレスティア王女は包み隠す事無く正直に答えていく。


 「1つは私の研究課題の為です。ゴブリン退治をする冒険者に取材をして、研究の一助にしたいのです」


 研究課題の為。

 そう答えたセレスティア王女にヘルガは当然の様にもう1つの理由を尋ねた。


 「もう1つの理由は?」


 「セラスさんに万が一の事があったらと言う心配からです。セラスさんは平民でありますが、優秀な方でもありますし、私にとって大事な友でもあるのです」


 もう1つの理由が学友であり、友人でもあるセラスを友として心配している。

 そんな私的極まりない理由である事を包み隠す事無く正直に告げれば、ヘルガは正直に理由を語ったセレスティア王女に確認する。


 「場合によっては危険な状況にあるセラスとやらの救出も頼みたい。その認識で良いかしら?」


 「はい。コレが私の我儘なのは重々承知しております」


 自分が我儘を言っている事を理解した上でセレスティア王女が願えば、ヘルガは承諾した。条件付きで……


 「最優先事項は貴女の身の安全。コレに尽きる。だから、最悪の場合としてセラスさんを迫られたら見殺しにせざる得ない……それを承諾してくれるなら、最善を尽くすわ」


 「ソレで構いません」


 王家の一員としてセレスティア王女が提示された条件を呑めば、ヘルガは改めて承諾する。


 「仕方無い。可能な限り貴女の要望に応えれる様に最善を尽くすわ」


 「ありがとう御座います」


 そう言う事になれば、ヘルガはセレスティア王女と2人の護衛を連れてソグルスへと向かうのであった。



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