護衛の始まり
翌日の朝。
井戸水で寝汗を洗い流した後。
雫を完全に拭い去ったヘルガは着替えを済ませると、両サイドに満水にした水筒をセットしたバックパックの中身を改めて点検していた。
食糧とメディキット良し。
予備の弾とGM94。それとM72良し。
ポンチョ良し。
着替え良し。
「バックパックの準備良し」
バックパックの入れ組品の点検を完了させ、異常が無い事を自らに言い聞かせる様に言うと、ヘルガはチェストリグとガンベルトの点検を始める。
チェストリグの入れ組品を確認する様に入念に点検し、問題が無い事を確認し終えれば「チェストリグ良し」その言葉と共にガンベルトの入れ組品の点検を始める。
ガンベルトに取り付けられた雑嚢と2つの水筒の中身を確認し、問題が無い事を自らの目で確認すれば、鞘に収まるマチェットや3連ポーチにGLOCK20の予備弾倉が詰まってる事等を確認していく。
そうしてガンベルトに問題が無い事を確認すれば、右腿にGLOCK20が収まるホルスターを取り付け、GLOCK20を手に取ってプレスチェック。
薬室に10ミリオートが装填されている事を確認すれば、グリップ内に収まる弾倉を抜いて15発の弾が装填されている事を確認して弾倉を戻し、ホルスターへと収めてストラップで留めた。
その後。Mk18とベネリM4のプレスチェックを手早く済ませて問題が無い事を確認すれば、セイフティを掛けた。
それからチェストリグとガンベルトを身に纏い、暗視ゴーグル付きのヘルメットを被れば、バックパックを背負った。
そして、ベネリM4を脇に提げてMk18を手にして自宅を後にした。
いつもの様に屋台で朝食を簡単に済ませて冒険者ギルドに入ると、中は仕事探しと受注する多数の冒険者達で賑わっていた。
駆け出しの若い冒険者達が普通の冒険者とは異なる出で立ちをしたヘルガを物珍しそうに見るが、ヘルガは気にせずに掲示板へと赴く。
多数の冒険者に混じって貼り出された仕事を眺め、ソグルス関連の仕事を見て廻っていると、見慣れぬ若い短弓と矢筒を身に帯びた少女が「御免なさい」そう言いながらヘルガを掻き分け、貼り出された仕事を見詰め始めた。
少女はソグルス内に発生したゴブリンの群れを駆除する依頼書に視線が釘付けとなると、その依頼書を取って受付へと向かった。
そんな少女を何故か気になって見ていたヘルガは内心で「独りで大丈夫かしら?」そう心配しながらも、他の依頼書を見て廻る。
数分後。依頼書を見終えると、ヘルガは空いた備え付けのベンチに赴いて座り、護衛対象である王女達が来るのを静かに待った。
沈黙と共に待ってると、仕事を探し、受注する冒険者達がはけていく。
そうして賑わっていたギルド内が静かになると、ヘルガはバックパックをその場に置いて立ち上がり、一息着いてる受付へと赴いた。
「疲れてる所ごめんなさい」
謝罪する様に語り掛けると、受付の女性スタッフは嫌な顔を一切せずに穏やかな営業スマイルと共に尋ね返す。
「ヘルガさん、如何なされたんですか?」
「最近、ソグルスでトラブルとか起きたりしてない?」
「ソグルスですか?珍しくゴブリンが発生したぐらいで特に問題は無い筈です」
受付の女性スタッフが答えると、ヘルガは確認する様に問う。
「スタンピードの前兆とかも無い?」
「今の所は無い筈です。スタンピードが発生すれば、ソグルスに常駐してる職員から報せが直ぐに来ますし……」
「なら、良かったわ。ありがとね」
感謝の言葉と共に受付を後にすると、バックパックを置いたベンチへと戻り、再び待った。
それから数分後。
革鎧に兜を被り、腰に剣を佩いた2人の男と1人の少女がギルドに入って来た。
ヘルガは然りげ無く視線を向けると、2人の男と1人の少女を観察していく。
装備は兜と革鎧と軽装。
でも、冒険者が兜を被るのは珍しい。
それに2人は少女を護る様な位置を取って周囲を用心深く警戒してる。
その少女は少女で出で立ちは貴族の次男坊や三男坊上がりのなり立て冒険者だけど、醸し出される雰囲気が高貴なの丸出し……
そうなると、あの連中が護衛対象で間違い無さそうね。
僅かな観察から其処まで看破すると、ヘルガは立ち上がってバックパックを背負った。
それから少女達に歩み寄れば、然りげ無く剣に手を掛けた2人の護衛から突き刺す様な視線と、緊張に満ちた少女の好奇の眼差しを浴びながら確認する様に語り掛ける。
「貴女達がトミーの妹さんとその一党で合ってるかしら?」
その問いに対し、2人の護衛は緊張感や警戒を解かずにヘルガの一挙一動を注意深く見詰める。
流石ね、トミー。
王女様の護衛にキチンと警戒出来る奴を付けてくれて助かるわ。
ヘルガを警戒する護衛を他所に少女は安堵した様子で肯定した。
「はい。この度は私の為に時間を割いて戴きまして誠にありがとう御座います」
感謝の言葉を告げた少女……セレスティア王女は自己紹介を兼ねて挨拶をする。
「改めまして私の事はセティとお呼び下さい」
キチンと場を弁え、敢えて本名を名乗らないセレスティア王女にヘルガは心の中で「流石はトミーの妹と言うべきかしら?キチンと場の空気を読めてる」と、好印象に感じながらも返礼としてヘルガも自己紹介をする。
「ヘルガよ。早速で悪いんだけど、トミーから聞いた話ではソグルスで冒険をしたいという事だけど、具体的に何をしたいのかしら?」
自己紹介と共に時間を無駄にする事無く問えば、セレスティア王女は答える。
「実際にダンジョンに足を運び、其処で冒険者の実際の行動を始めとした働きやダンジョンを等を調査したいのです」
大まかながらも具体的な目的をハキハキと答えられれば、ヘルガは剣から手を離してるが、今も自身に対する警戒を怠らぬ2人の護衛に視線を向けて確認する様に尋ねた。
「優秀な御二人さんは今日の事は聞いてるかしら?」
その問いに対し、護衛の1人が答える。
「トミー様より、貴女が護衛の長であると命じられております。ですので、我等を部下の様に御使い下さい」
その護衛が優秀な兵士の如く厳格に告げれば、ヘルガは感謝の言葉と共に3人に向けて命じる。
「ありがとう御座います。では、改めて命じます……万が一の際は私の指示に従って下さい。その際、申し訳ありませんが意見具申は受け付けません。私の様な者が言うのは大変烏滸がましいのは承知しておりますが、私を信じて従って下さい」
そう命じると共にヘルガが頭を深々と下げれば、2人の護衛は異口同音に「承知致しました」と、ハッキリ返事をした。
その返事と共に頭を上げれば、ヘルガは指揮官として確認する。
「ソグルスまでの移動は?」
ヘルガが確認する様に問えば、セレスティア王女は答える。
「冒険者の皆様と同じ様に徒歩で行こうと思ってます」
意外な答えが返って来れば、ヘルガは反論を挟まずに早速命じる。
「1人は彼女の後ろに着いて時折、後方を確認。1人は彼女の前を歩いて下さい。私は彼女の側に着きます」
護衛の陣形を告げれば、2人の護衛が「承知致しました」そう返事すれば、ヘルガはセレスティア王女の傍らに着いてギルドを後にするのであった。




