十六話 初めてのクエスト、初めての戦闘 (残酷な表現有り
影秋はゴブリンの巣を観察していた。
「もうちょい近づいてみるか・・・。」
影秋は動きだす。
ゴブリンの巣は森の中にあった。
木々の合間を縫い見つからないように近づく影秋。
「ゴブリンが・・・三体いるな。」
小屋の前には火をおこし捕まえたであろう、鹿みたいな動物を焼いていた。
「弱肉強食か・・・わかってたけどね。」
現代日本人である影秋には少しきつい光景であった。
「表に出ているゴブリンは三匹・・・でも小屋の中にいるな・・・。」
影秋は気配を探る。
「3・・・いや4匹小屋の中にいるな」
簡易的に立てられた小さな小屋の中に思った以上の気配を感じ、驚く影秋。
「5匹から7匹に増えたのか。増えるとは聞いてたけどこんなに早く増えるのか?脅威になるなこりゃ」
影秋は勘違いしていた。
通常ゴブリンは気づいたら増えていくが、ゴブリンを確認したのが昨日。
そして、今日の時点で2匹増えているのはすこしばかり早すぎる。
勝手に増えるとは言っても、どんな規模のゴブリンの巣でも2~7日で一匹というのがこの世界の常識であった。
そんなことを知らない影秋は、こうゆうものだと勝手に勘違いしていた。
「!!」
ゴブリンが一匹近づいてきた。
影秋は息を潜める。
しかしゴブリンはまっすぐこっちに向かってきていた。
「う・・・ど、どうすれば・・・」
影秋はテンパっていた、何せはじめてのクエスト、はじめてのゴブリン退治なのだ。
「か、隠れないと」
そして影秋は、その場でジャンプした、人間としてありえないそのジャンプ力を無意識に影秋は使っていた。
そして音も無く木にのぼる。
(これでなんとか・・・)
ゴブリンは真下を通り過ぎていく。
ただ通り道だってだけだったみたいである。
(でも、チャンス!)
影秋は真上からゴブリンを見下ろした。
(背中ががら空きだ!)
影秋は木から狙いを定めて飛んだ。
そのままゴブリンに向かって足を突き出す。
「プギャ」
ゴブリンの声ではない。
影秋の声である。
ゴブリンは声を出す暇なく影秋のとび蹴りによって蹴り飛ばされ、気絶した。
影秋は着地を考えずに木の上からとび蹴りをしたため、地面に激突したのだった。
「いたた、でも擦りむいてないよかったぁー」
「にしてもよく考えると無茶したなぁ・・・この体のおかげか」
影秋は、一人つぶやく。
そして気絶したゴブリンに近づいていった。
「さてと・・・」
そこで気付く、
(俺は、こいつを殺さなきゃならないのか・・・?)
異世界にきて最初のクエスト、生きるために冒険者になることを選択した。
(でも、こいつらだって生きてるんだよな・・・。)
クエストを受け、実際にクエストを行い倒すところまできた。
そこで影秋は今更敵を殺すということに気付いたのだった。
(こいつらは、人間に危害を加える危険な存在。だから倒さないと。)
影秋は自分に言い聞かせようとする。
(いや、ダメだ。人間に危害とかどうとかじゃない。)
影秋は、ゴブリンを殺す理由を他人任せにしてはいけない!と強く湧き上がる思いがあった。
(これは、俺が生きるためだ!!言い訳すんな、俺は俺のためにこいつを殺すんだ!!)
影秋は目の前の気絶したゴブリンを殺す決意をした瞬間だった。
「ぐぎゃ・・・」
そこでゴブリンが目を覚ます。
「しまった!」
「ぐぎゃ!ぎゃぎゃ!!」
ゴブリンが騒ぎはじめた。
「まずい!!」
影秋は焦る、そして
「とりあえずパンチ!!」
「ぎ・・・」
影秋はパンチをした。
ゴブリンは紙切れのように吹き飛ばされ木にぶつかって絶命した。
「あ・・・俺・・・殺したんだよな・・・」
影秋は、目の前のゴブリンをみた。
「・・・」
ゴブリンの顔は影秋のパンチによって変形し、とてもグロテスクになっていた。
「・・・」
影秋はただ見る、己が奪った命を。
(罪悪感がわかない、か・・・)
影秋の中には罪悪感なんてものはなく、ただ敵を倒した安堵のみがあった。
「俺は・・・いや後にしよう。まずゴブリンを全滅させる」
影秋は、絶命したゴブリンに背を向け、巣の方向に歩き出したのだった。




