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拓途視点【その10】 だいすき

【お知らせ】


 ちょっぴりシモネタ入ります。嫌いな方は、ごめんなさい!

 う……お……、すげえ! なつが、手握り返してきた。


 カナちゃんの作戦、めっちゃ最強じゃん! 神だろ? カナちゃん、俺の親戚のオバさんやってるけど、ホントは恋愛の神なんだろ?


『彼女に愛されてる自信がないんだったら、ハイタッチするフリして、手握っちゃえば!』


 ゆうべ、俺にホイホイ作戦の説明してくれたあとに、カナちゃんがそんなこと言ってた。俺、それを実際にやってみたんだけど、めっちゃ納得したんだ。


 手握るとキンチョーして、なつの顔がちゃんと見れないし、しゃべんのも恥ずかしいし無理。だけど。


 しゃべるより、気持ち伝わってくる感じするな。俺が握ったら、キュッと握り返してくる。なつの指は、細くて柔らかい。俺ら、向かい合って手にぎにぎして、顔もやたらニコニコしてて、完全にバカップルっぽいけど、手放すの嫌だな。ずっと握ってたい。


 ここの公園、今は誰もいないし、いいよな? バカップル全開でも。


「ダメなの!」


 急に、下の方からでっかい声した。なつがしゃべった? いや、違う。なつは下の方をチラッと見て、ニコニコ笑ってるし。


 ちっちゃい妹が、なつの太ももに抱きついてる。あっ、ずるい。俺もそれしたい! 制服ミニスカの下にある神の領域に、顔をくっつけてバフバフっと――


 ――じゃなくて! なつの妹、一緒にいたんだったわ。俺、なつと手つなげたのが嬉しすぎて、完全に忘れてた。でも俺さっき、この子を、砂場に置いてきたはずだろ? いつの間に、こっちへ来た?


「おてて、ダメ!」


 妹のはるちゃん、なぜかわからんけど、怒ってるみたいだ。


 なつの太ももに、猛烈な勢いでバフバフしてる。まさか、頭突きか?


「そんなことしたら痛い! はる、ダメでしょ。ママ痛いよ」


 なつも、はるちゃんに怒った。


 だけど、なつはちっちゃい子みたいなこと、何で言うんだろ。『ママー、痛いよー』って、高校生は普通言わねえだろ。姉妹でふざけてんの?


「はる! 止めなさい」


 なつは両手で、はるちゃんの頭をガシッと止める。俺とつないでた手は、振り払われてしまった。


 はるちゃんは、頭突きを止めて、なつの顔、見上げてニヤっとした。『勝った!』って言ってるような表情……。えっ? 幼児なのに、めっちゃ悪い顔したぞ!


「にいたん!」


 はるちゃんは、秒速でクルッと向き変えて、俺の足に抱きつく。


 ええっ! 今度は、こっちへ頭突きするつもりか! はるちゃんの頭、ちょうど俺の腹のすぐ下にあるんだけど。そこへ全力でバフバフするのはやめて!


「だいすき」


 はるちゃんは、俺のひざ上に顔を埋める。


 うわ、助かった。ひざ上で……あれ? はるちゃん、俺に変なこと言わなかった?


「はる、お兄ちゃんが大好きなんだね。自分もお兄ちゃんとおててつなぎたかったの?」


 なつは、はるちゃんの頭なでる。


「さっきはるが泣いてたとき、お兄ちゃん優しかったもん。大好きになったんだよね」


 俺のことより、なつのしゃべり方が、めっちゃ優しいな。姉妹っていうより、親っぽい。

 

「ママもそうかも」


 なつは、照れたみたいな顔した。

 

「ママ?」


 俺は訊き返す。だって俺、なつとはるちゃんの親には会ったことないけど……。


「えっ、えええっと、うちのママも拓途に会ったら、ぜ、絶対好きになるかなーって」


 なつは一瞬でめっちゃ真っ赤になって、あせってる。照れてんな? ホントは親じゃなくて自分が、俺のこと好きなくせに。

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