拓途視点【その4】 (※イメージです)
ゆうべからずっと、妄想ばっかりしてる。昨日、海で会ったあの子、『なつ』から、告られるっていう。
今は、学校の帰りで自転車に乗ってんだけど、妄想やめらんない。
俺が、海沿いの道を通りかかったら、なつがいるんだ。昨日会ったのと同じ場所で、防波堤の上にちょこんと座ってる。それで、めっちゃドキドキしながら、俺のこと待ち伏せするっていう設定。
「なつ!」
俺は照れつつも、彼女の名前を初めて呼ぶ。なつは、ちょっとびっくりしたような顔で、俺のことを見て、そのあとは……。
「あの、わたし」
そう言ったきり、なつは黙ってうつむく。
これは妄想だから、俺には、彼女の考えてることが、字幕ついてるみたいに簡単に読めた。なんかギャルゲー風だよな。俺はギャルゲーやったことないから、(※イメージです)っていう注意書きはつくけど。
ギャルゲーって、俺のふわっとしたイメージでは、スマホとかパソコン画面の中にいるかわいい女の子を、どうにか攻略してつきあう(※ついでにエロいこともする)っていうゲーム。
現実じゃ、女子って何を考えてんのか想像つかない。男の俺にとっちゃどうでもいいような細かいことで、急にキレたりするし、怖い。でも、俺の妄想に出てくる彼女は、まさにギャルゲー(※イメージです)って感じなんだ。
『ううっ、どうしよう。やっぱり、告白なんて勇気ないよ』
そんな字幕をつけたくなるくらい、わかりやすく挙動不審になってキョロキョロしたり。
『勇気出せ! わたしっ』
自分を奮い立たせてるみたいに、ミニスカートのすそを、ぎゅっと握ったり。
そしてなつは、俺を見上げて、困ったように笑う。この笑顔たまらん。ギャルゲーだったら、このシーンで画面止めて、スクリーンショット撮ったりできるかな? できるんなら、俺、絶対この顔、保存する!
もし本当に、現実の世界で、なつがあんな顔したら、俺、ニヤニヤ笑い止まんないと思う。単に困った顔ってだけでなくて、ちょい首かしげてるところが、かわいいんだよ。
でも、あんな困った顔されたら、思わず、こっちから告っちゃいそうだな。
「惚れちゃったんだ」
なんて、直球でズバッと告白すんのは……無理か。俺、そこまでの度胸ない。ふわっと匂わせるぐらいなら、言えるかも。
だったら、こういう展開って、どうだろ?
「隣に、座っていいかな」
俺は自転車を降りて、なつの隣に座る。
「あ! 座んのは、今だけじゃなくて、明日もあさっても、ずっとだからな!」
うわっ、自分が言うところ想像しただけで、なんか照れる。俺に、そんなこと言えるかな? ひとりで照れまくって意味わかんないこと言っちゃうとか、たぶんグダグダになって、自爆しそうだ。
まあ、現実が、そんな妄想みたいにうまくいくわきゃないよな。
もし本当に、なつが俺のこと待ってたりしたら、速攻でデートに誘うか? 誘ったら、意外と簡単にOKくれたりして、そのままいい雰囲気になっちゃうとか!
ないない! 絶対ない!
この先の角を曲がったら、海が見えてくる。昨日、なつと会った海沿いの道は、もうすぐだ。




