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<第11話>待ち伏せ

 次の日は、空がよく晴れていた。もう少しすれば、きれいな夕日が見られるかも。


 私は、仕事帰りに自転車をこいで、防波堤沿いの道を走っている。


 自転車といっても、私が高校生の頃に乗っていた銀色のやつとは違う。これは、えんじ色のママチャリだ。娘を乗せるチャイルドシートが、サドルの後ろにくっついているの。前かごには、特売の食品が詰まってパンパンに膨らんだエコバッグ。


 私が昨日、ここで体験したことが、夢か現実か、確かめるために海まで来ちゃった。


 私が15才の姿に変身して、高校生の男の子と会ったのは、たぶんこの辺り。私は、海を見つめた。沖に大きな島が見えて、すぐそばに小さな島がある。ここで間違いない!


 このへんで座って、あの男の子が来るのを待とう。あの子は毎日、ここを通って、家へ帰ると言っていたの。だからもし今日も、あの子が自転車に乗って現れたら、あれは現実で、夢じゃないってこと。


 私は昨日とは違って、35才のおばさんのままだし、彼はよもや、昨日ここで会った女子高生と同一人物だと気づくまい。探偵が変装しているみたい。うわーっ、楽しくなってきた。わくわくしちゃう! 本当に、あの子は来るかな? ドキドキしながら誰かを待つのって、デートみたい。こんな気持ち、久しぶり。


 私は自転車を停めると、防波堤によじ登って座る。


 彼は、なかなか来ない。今日は昨日と違って、仕事がスムーズに終わったし、定時で帰ってきたもんね。昨日は、夕日が沈みそうな時間だったのに、今は空がまだ青い。来るのがちょっと早すぎた? それとも、あれはやっぱり夢だったのかな。


 そのうちに日がずいぶん傾いて、まぶしくなってきた。海面がキラキラと光っている。そのキラキラした光の上を、沖の方で滑るようにタンカーが横切っていく。海の上に漂う光をぼーっと眺めていたら、うとうと眠っちゃいそう。


 ゆうべはよく眠れなかったの。昨日、この海で体験したことを、繰り返し夢に見ちゃって。


 夢の中じゃ、鏡をどんだけ見直しても、私は15才の顔のまま。いつも使っているスマートフォンはいくら探しても見つからないし、35才に戻れなかったらどうしよう! なんて、泣きそうな気分で自転車を飛ばすの。何回もうなされて目が覚めちゃった。


 もし、昨日のことが夢だったとしたら、今夜は、安心して眠れるかな。彼は来るのか? 来ないのか? 夢か? 現実か?


 今夜は、ぐっすり寝られるかな――

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