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薬草採取

 「フィア、これ?」


 「違う」


 「じゃあこれは?」


 「違う」

 「それは毒草」


 「……。」


 俺たちは薬草採取の依頼を受けている。

 しかし、見分けがつかない。

 全部同じに見える。


 そんなことを考えていると、フィアはしゃがみ込み、一株の草を摘み取った。


 「これが薬草」


 「他と全然変わらなく見えるけど」


 「よく見て」


 フィアは葉を指差した。


 「葉っぱの真ん中の一枚だけ、少し長いの。」


 「ほんとだ」


 「それと、茎の先が少しだけ赤い。」


 「細かいな……。」


 「慣れるとすぐに分かる」


 「これは毒草」


 「え、違いある?」


 「葉っぱの形は似てるけど、裏返すと紫色」


 「あ、本当だ」


 「だから裏まで確認すること」


 「分かった」


 「それと、これ。」


 フィアは神妙な面持ちで指を指す。


 「これも薬草?」


 「違う。ただの雑草」


 「雑草かよ」


 思わずツッコむと、フィアはくすっと笑った。


 その瞬間、スマホが震える。


 素材鑑定を解放しました。

 薬草を撮影してください。


 「…これってもしかして」


 俺は言われたとおりに写真を撮ってみる。


 【回復草】


 軽い傷や疲労を癒やす薬の材料になる。


 「おぉ……。」


 次は毒草。


 【毒草】


 触るとかぶれる。


 「便利すぎるだろ。」


 フィアに教えてもらった特徴と、鑑定の結果が一致している。


 これなら間違えようがない。


◇◇◇


 一時間後…。


 「終わったー!」


 俺は依頼で指定された薬草二十本を採り終えた。


 「お疲れ様」

 「早かったね」


 「そうか?」


 「うん。初心者は普通、半日かかるから」


 「まじか…」


 冒険者って大変なんだな。


 その時だった。


 ガサッ。


 近くの茂みが揺れる。


 「……!」


 思わず身構える。

 またモンスターか?


 すると。


 「ピヨッ!」


 一羽の丸っこい鳥が飛び出してきた。


 黄色い体。


 ふわふわした羽。


 特徴はひよこのようだが、大きさは鶏くらいある。


 「あ。」

 「プニ鳥。」


 「こいつが?」


 確かに依頼書で見たやつだが、もっと小さいのを予想していた。


 「かわいい」


 「確かにそうだな」

 「なんかデカいけど」


 「食べたい」


 「えぇ…。」


 その感情は両立するものなのだろうか。


 プニ鳥もこちらを見ている。


 目が合う。


 「ピヨ。」


 ちょっとかわいい。


 その瞬間。


 バサバサッ!


 プニ鳥が急に近づいてくる。


 「うわっ!」


 バランスを崩し、その場で転ぶ。


 ドサッ!


 「いてて……。」


 起き上がる頃にはプニ鳥の姿はもうなかった。


 「逃げられた」


 フィアが少し残念そうに言う。


 「……速すぎない?」


 「うん。だから依頼になってる」


 なるほど。


 確かにあれは捕まえられる気がしない。

 というか、鶏くらいの大きさの鳥が超スピードで動いてくるの怖すぎる。


 「今度挑戦してみる?」


 フィアが少し悪戯っぽく笑う。


 「遠慮しとく」


 即答だった。


◇◇◇


 王都へ戻る道。

 夕日が俺たちの影を長く伸ばしていた。


 「楽しかった?」


 フィアが聞く。

 俺は少しだけ考える。


 派手な戦いはなかった。

 魔王もドラゴンも出てこない。

 やったことと言えば薬草を採っただけだ。

 それなのに。


 「…楽しかった」


 異世界で初めて受けた依頼。

 確かに大変だが、確かな達成感があった。

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