依頼
壁一面に貼られた依頼書。
それを見た瞬間、思わず声が漏れた。
「おぉ……。」
これだ。
これが見たかった。
異世界と言えば依頼掲示板。
薬草採取からドラゴン討伐まで、ありとあらゆる依頼が並ぶ夢のような場所。
俺は早速、一番上の依頼書へ目を向ける。
【ワイバーン討伐】
報酬 金貨五十枚
「ワイバーン…」
俺は依頼書に手を伸ばす
「ダメ」
フィアが俺の腕を掴んだ。
「なんで?」
「Aランク限定」
よく見ると依頼書の端に小さく書かれている。
受注条件:Aランク以上
……なるほど。
「じゃあこれ」
次に目に入った依頼を指差す。
【オーク討伐】
「ダメ」
「これも?」
「Cランク」
「じゃあゴブリン!」
「Dランク」
「スライム!」
「依頼がない」
「えぇ……。」
俺は肩を落とした。
「Eランクは新人だからね」
「新人って大変なんだな」
「うん」
ラノベだと最初からモンスターを倒していた気がするが、現実は甘くないらしい。
俺は掲示板の一番下へ目を向ける。
そこにはEランク依頼だけが並んでいた。
薬草採取
荷物運び
迷子のペット探し
畑の害獣退治
「……。」
思ってた冒険と違う。
「どうしたの?」
「いや」
俺は薬草採取の依頼書を見る。
薬草採取。
異世界初心者の登竜門。
よし。
これでいこう。
依頼書を手に取ろうとした、その時。
隣に貼られた一枚が目に入った。
【大量発生したプニ鳥を捕まえてください】
報酬 銅貨八枚
「プニ鳥?」
「かわいい鳥だよ。」
「モンスター?」
「ううん」
「普通の鳥」
「なんで依頼になってるんだ?」
フィアは少し笑う。
「逃げ足がすごく速いの」
「あと、すごく増える」
「なるほど?」
「それと人の畑を荒らす。」
「害鳥じゃねぇか。」
思わずツッコんでしまった。
フィアは楽しそうに笑う。
「でもね。」
「うん?」
「美味しい。」
「食べるのかよ!」
周りの冒険者がこちらを見て笑う。
「プニ鳥は捕まえるの大変だぞ」
「逃げだけなら狼より速い」
「え。」
それは嫌だ。
「じゃあ薬草採取で……。」
俺が依頼書へ手を伸ばすと、
「そっちも大変だよ。」
フィアが真顔で言った。
「え?」
「似た草がいっぱいあるから。」
「……。」
嫌な予感がする。
「間違えると?」
「ただの雑草」
「まあいいじゃん」
「毒草。」
「急に怖くなったな。」
「かぶれる草」
「うん。」
「爆発する草。」
「草って爆発するの!?」
思わず大声が出た。
ギルド中が一瞬静まり返る。
そして。
「はははは!」
冒険者たちが一斉に笑い出した。
「兄ちゃん面白ぇな!」
「新人あるあるだ!」
顔が熱くなる。
恥ずかしい。
「じゃあ」
フィアが薬草採取の依頼書を手に取る。
「これにしよ」
「大変なんじゃないのか?」
「私がいるから大丈夫」
「任せて。」
フィアは胸を張る。
「……よろしくお願いします」
俺たちは受付へ向かい、人生初めての依頼を受けるのだった。




