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冒険者登録

 二本の剣と盾を模した大きな看板。

 その下には、冒険者ギルドという文字が刻まれていた。


 「ここか……。」


 思わず見上げる。

 ゲームやラノベで何度も見てきた場所。

 まさか自分が入る日が来るなんて。


 「行こう。」


 フィアに促され、俺は大きな扉を開いた。


 ガチャッ。


 中へ入ると、一気に賑やかな声が耳に飛び込んできた。

 酒を飲みながら笑う冒険者。

 壁一面に貼られた依頼書。

 ローブ姿の魔法使い。

 獣人やドワーフまでいる。


 「おぉ……。」


 冒険者ギルドだ…。

 思わず辺りを見回してしまう。


 「ケンイチ。」


 「ん?」


 「口、開いてる。」


 「あ。」


 慌てて閉じる。


 すると近くにいた冒険者が吹き出した。


 「ははっ! 兄ちゃん、初めてか?」


 「え、まあ。」


 「安心しろ。最初はみんなそんなもんだ。」


 周りの冒険者も笑う。


 恥ずかしい。

 でも、少しだけ緊張がほぐれた。


 「まずは登録だね。」


 フィアが受付を指差す。


 ◇◇◇


 「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付嬢が笑顔で迎えてくれた。


 「冒険者登録をお願いします。」


 「かしこまりました。登録料として銀貨一枚になります」


 ……銀貨一枚。


 俺は固まった。


 そういえば俺、この世界のお金を一枚も持ってない。


 「どうかされましたか?」


 受付嬢が不思議そうに聞いてくる。


 「いや、その……。」


 「これでお願いします」


 横からフィアが銀貨を一枚取り出し、受付へ差し出した。


 「かしこまりました」


 受付嬢はそういって銀貨を受け取る。


 「フィア?」


 「賢一お金ないんでしょ?」

 「案内のお礼だから気にしないで」


 「でも……。」


 「友達でしょ?」


 フィアは当たり前のように笑った。


 「……ありがとう。」


 礼を言いながらも、胸の奥が少しだけ痛んだ。


 ダークウルフの時に助けられ、冒険者登録まで。

 俺はフィアに助けられてばかりだ。


 いつか必ず返そう。

 そう心に誓い、渡された登録用紙に自分の名前を書いた。


 ◇◇◇


 「登録が完了しました。」


 受付嬢は一枚のカードを差し出した。


 「こちらがギルドカードになります」


 金属でできた小さなカード。

 表には名前。

 そして。


 ランク E


 冒険者ランクが刻まれていた。


 「これで今日から冒険者です」


 冒険者。

 その響きだけで胸が熱くなる。

 子供の頃、何度も憧れた職業だ。


 「それとこちら。」


 受付嬢は丸められた紙を渡してきた。


 「王都周辺の地図です。新人冒険者の方には無料でお渡ししています」


 「ありがとうございます。」


 地図まで貰えるのか。

 これはありがたい。


 「依頼はあちらの掲示板から自由に選べます」

 「分からないことがありましたら、お気軽にお尋ねください。」


 「はい。」


 受付を離れた、その時だった。


 ピコン

 スマホが震える。


 俺は人目につかないよう、そっと画面を開いた。


 『冒険者になる』


 目標を達成。

 達成数 5/100


 『報酬を獲得』


 『アイテムボックス』を獲得しました。


 「アイテムボックス?」


 説明を見る。


 > 触れた物を収納できます。

 > 現在容量 3kg


 「おぉ……。」


 思わず声が漏れそうになる。

 試しにさっきもらった地図に触れてみる。


 触れた瞬間。


 スッ。


 地図が消えた。


 俺は画面を見る。


 収納一覧。


 ・地図


 本当に入ってる。

 今度は「取り出す」と念じる。


 パサ。


 目の前に地図が現れた。


 「すげぇ……。」


 「ケンイチ?」


 フィアがこちらを見る。


 「どうしたの?」


 「あ、いや……。」


 危ない。

 少し感動してしまった。


 「なんでもない。」


 そう誤魔化しながら、俺はそっと地図をアイテムボックスへしまった。

 きっとこいつにはこれからの冒険で、何度も助けられることになる。

 そんな予感がした。


 「じゃあ、依頼を見に行こう。」


 「ああ。」


 俺たちは並んで依頼掲示板へ向かう。

 そこには、俺が夢見ていた「冒険者」としての第一歩が待っていた。

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