↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/32

張り込み

 翌朝、俺たちはルーベン領主アルベルトの執務室を訪れていた。

 窓の外にはのどかな青い海が広がっている。

 だが、室内の空気は少しだけ張り詰めていた。


 「お二人とも、何かありましたか?」


 アルベルト領主が尋ねる。

 セレナが一歩前に出た。


 「一度、ルーベンを離れて北の森を重点的に調べるつもりです。」

 「街道の魔物も、その辺りから降りてきているという情報もありますので。」


 もちろん、これは嘘だ。

 本当に北の森に行くわけじゃない。

 セレナの作戦は、情報がどこかから漏れているかどうかを確かめることだった。


 アルベルト領主は少し考えるように顎に手を当てたあと、静かに頷く。


 「分かりました。」

 「必要ならば、巡回兵にも協力を命じましょう。」


 「いえ、今回は私たちだけで十分です。」


 セレナはあくまで自然に答える。

 俺は横で黙っていた。

 演技が下手だから、余計なことを言わない方が安全だ。


 「…そうですか。」

 「では、どうかお気をつけて。」


 アルベルト領主はそう言って俺たちを見送った。


◇◇◇


 ギルドを出たあと、俺は小声で聞く。


 「本当にこれで分かるのか?」


 「分からない。」

 「でも、何もしないよりはずっといいわ。」


 セレナは真剣だった。


 「もし魔物が私たちの動きを把握しているなら、“北の森へ行く”という情報に反応するはず。」

 「だから私達は、南の街道沿いで張り込む。」


 「結構大胆な作戦だな。」


 「疑うなら徹底的に。」

 「中途半端が一番危険よ。」


◇◇◇


 ルーベンの南側にある街道へ移動して半日、いまだに魔物は現れていない。

 外が暗くなる。

 街から少し離れているため、人通りはほとんどない。


 「ここで一晩?」


 「そう。」

 「魔物が現れるなら、夜の方が可能性が高いわ。」


 セレナは岩陰に腰を下ろした。

 俺も荷物を下ろす。

 そして、アイテムボックスから寝袋を取り出した。


 「はい、セレナ。」


 「……何それ。」


 「寝袋。」


 「それは見れば分かるわよ。」

 「どこから出したの?」


 「あー……。」


 しまった。

 完全に無意識だった。


 「便利な収納魔法みたいなもの…かな?」


 「疑問形なのが気になるんだけど。」


 セレナはじっと俺を見る。


 「………。」


 もう言い逃れはできないと悟った俺は、アイテムボックスについて白状することにした。


◇◇◇


 保存袋から焼きイカを取り出す。


 「張り込みのお供にどうぞ。」


 「……まだ残ってたの?」


 「保存袋、結構すごいんだよ。」

 「温かさも少し残る。」


 セレナは半ば呆れた顔でイカを受け取る。


 「あなた、本当に時々意味が分からないわね。」

 「しばらく目を離すと強くなってるし。」


 「褒め言葉として受け取っておく。」


 「褒めてない。」


 そうしてしばらく波の音を聞きながら焼きイカを食べていると、セレナがぽつりと呟いた。


 「……前から気になってたの。」


 「何が?」


 「あなたの荷物。」

 「ガルドさんを助けた時、突然ポーションを出したじゃない。」

 「しかも、ルーベンに行く時も荷物が増えてるはずなのに全然重そうじゃなかった。」


 「うっ。」


 「正直、かなり怪しかった。」


 セレナは少し呆れたような顔で言う。


 さらに夜が更けていく。

 ルーベンの街明かりが遠くに見え、その向こうで灯台の光がゆっくりと海を照らしていた。


 「……静かだな。」


 「ええ。」


 セレナは短く答えた。

 俺は寝袋にくるまりながら寝転がる。

 見上げた星は、驚くほど綺麗だった。


 「…冒険者って、こういう時だけは最高だよな。」


 「こういう時だけ?」


 「普段はオークとかゴブリンキングとかいるし。」


 「それは否定できないわね。」


 二人で小さく笑う。


 『目標達成』

 『星空を見る』


 達成数 21/100。


 『報酬を獲得』

 

 筋力 25

 体力 40

 俊敏 15

 魔力 10→20


 戦闘力 100


◇◇◇


 寝袋にくるまっている時も、セレナの視線はずっとルーベンの街の方を向いていた。

 彼女は、アルベルト領主を疑っている。

 そして俺も、それを完全に否定しきれているわけではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。