港町
王都を出発してしばらく経ち、俺たちはルーベンに到着した。
そこには太陽の光を受けてきらきらと輝く海と砂浜。
そして、海岸には無数の船が並び、潮風の匂いがここまで流れてきていた。
「おお……。」
思わず声が出る。
王都とは違い、海と船が並ぶ港町といった感じだ。
ピコン。
スマホが鳴る。
『目標達成。』
『港町にいく』
達成数 18/100。
『報酬を獲得』
アイテムボックスに旅人の地図が追加されました。
「旅人の地図?」
俺は気になって、アイテムボックスからそれを取り出す。
広げてみると、それは何も描かれていないただの紙だった。
「これのどこが地図なんだ?」
俺がそう思った瞬間、冒険者登録の時にもらったエストリア王国の地図が強く光り始める。
――エストリア王国の地図を読み込んでいます。
スマホにそう表示されると、さっきまで何も書かれていなかった紙に、無数の線が浮かび上がる。
そして––––。
『旅人の地図にエストリア王国が追加されました。』
交易都市ルーベンとともに、エストリア王国の市場、王城、冒険者ギルドまでもが地図として詳細に描かれていた。
「……すげぇ」
旅人の地図。
これはただの地図じゃない。
俺が訪れた場所を記録していく、旅そのものの地図だった。
◇◇◇
街を歩く。
石畳の道の両側には、レンガ造りの建物が並んでいた。
窓には色鮮やかな布が掛けられ、二階部分がせり出した建物も多い。
そこを抜けると、荷馬車を引く商人や魚を担いだ漁師、船から荷物を運び出す人々が見えた。
市場では子どもたちが走り回り、露店の店主が威勢よく客を呼び込んでいる。
「王都よりずっと賑やかだな。」
「ええ。」
「王都も活気がないわけじゃないけど、こっちは町が“生きてる”って感じ。」
確かにその通りだ。
この市場には、まだ到着したばかりなのに––––。
「安いよ!安いよ!」
「そこの二人、ちょっと味見していくかい?」
「今日あがったばかりだよ!」
と、店の店主からたくさん呼び込まれた。
俺は思わず笑ってしまう。
「なんか、他の町に来たって感じがする。」
「新鮮な気持ちだ。」
「魚だけに。」
「………。」
セレナが冷ややかな視線を向けてくる。
「……ごめん忘れてくれ。」
俺はもう二度と言わないと心に誓った。
◇◇◇
試しに露店を見てみる。
そこには、巨大な魚。
見たことのない貝。
干された海藻。
香辛料の山に、珍しい毛皮や鉱石まで並んでいる。
「すごい……。」
俺は完全に観光客になっていた。
「ほら、あんまりキョロキョロしない。」
「無理だって。」
「ほら、タコみたいなのも売ってるぞ。」
俺がはしゃいでいると、露店の店主が声をかけてきた。
「兄ちゃん、姉ちゃん!」
「焼きイカ食っていかないか!」
香ばしい匂いが漂ってくる。
俺とセレナは顔を見合わせた。
「……食べる?」
「聞くまでもないわね。」
◇◇◇
串に刺さった焼きイカを受け取り、俺たちは港を眺めながら歩く。
カモメが鳴き、波が岸壁に打ち寄せていた。
「うまっ!」
噛むたびに甘辛いタレの味が広がる。
セレナも珍しく素直に頷いた。
「これは確かに美味しいわね。」
「だろ?」
「でも、食べながら歩くのは行儀が良くないわね……。」
「セレナは堅いな。」
「これが醍醐味なんじゃないか。」
『目標達成。』
『朝市で食べ歩きをする。』
達成数 19/100。
『報酬を獲得』
アイテムボックスに保存袋が追加されました。
◇◇◇
港へ出ると、大きな船がちょうど入港してくるところだった。
笛が吹かれるとともに、船員たちが慌ただしくロープを引いている。
俺はその光景に見入ってしまった。
「……かっこいいな。」
「船、好きなの?」
「男なら一度は憧れるだろ。」
映画、小説、漫画。
海や船には、人を冒険へ誘う何かがある。
それに海の向こうには、まだ知らない街や国があるかもしれない。
そういったワクワク感が、俺は好きだった。
◇◇◇
しばらく港を歩いたあと、セレナが地図を取り出す。
「ギルドへ行きましょう。」
「ルーベン領主に紹介状を渡さないと。」
「そうだった。」
「つい観光気分になってた。」
「本当にそうね。」
「ここに来て早々、魚だけに……とか言い出すくらいには…」
「それは本当に忘れてくれ。」
俺たちは港から続く大通りを歩き始める。
活気に満ちた港町ルーベン。
ここでまた、新しい冒険が始まる。




