退院
翌朝、俺は冒険者ギルドの前に立っていた。
今日はセレナが退院する日だ。
俺は自分の装備を見直す。
「よし、変なところはないな」
昨日の夜、鏡の前で何度も確認した。
今の俺の姿は、どう見ても前より冒険者っぽいだろう。
そんなこと考えていると、セレナの姿が見える。
「せっかくだし驚かせてやるか」
俺はセレナの後ろから声をかける。
「退院おめでとう。セレナ」
「ありがとう」
「待たせたわね」
そう言ってセレナは後ろを振り向く。
すると、急に固まった。
「………。」
「どうした?」
「…いや。」
セレナは俺を上から下まで眺める。
まるでなにか信じられないものでもみているように。
今の俺は、革の胸当て、籠手、脛当て、ブーツ、といった普通の装備だ。
…変なところはないはずだが。
するとセレナが口を開く。
「……あなた、そのマントは何?」
彼女は俺が羽織っているマントを見て、そんなことを聞いてきた。
「ふっ」
俺はマントを軽く翻す。
すると、黒い布が風に揺れた。
「どうだ。」
セレナは無言だった。
「…………。」
「………。」
「…………。」
「何か言えよ!」
俺がそう言うと、ようやくセレナが口を開く。
「ダッサ……」
「なっ!?」
あまりにもストレートだった。
「いや、待てよ!」
「結構格好いいだろこれ!」
俺はもう一度マントを翻す。
ふわっ。
「やめて」
「朝から恥ずかしい」
「なんでだよ!」
セレナは額に手を当ててため息をつく。
「普通の革装備はちゃんとしてるの」
「だから余計に、そのマントだけ浮いてるのよ」
「うっ……。」
言われてみれば、確かに他が初心者向けの革装備の中で、明らかにマントは浮いている。
「とにかく、恥ずかしいから早くそれ脱いで」
「で、でも…」
「このマントは魔法耐性もあるし、…なにより高かったんだぜ?」
「知らないわよ」
「それにそんなマント羽織ってたら動きづらいでしょ」
「分かったらさっさと着替えてきなさい。」
そんな感じで、俺の黒いマントはセレナに全力で拒否られ、渋々アイテムボックスにしまうこととなってしまった。
『目標達成』
『マントを装備する』
達成数 16/100。
『報酬を獲得』
筋力 25
体力 40
俊敏 15
魔力 5→10
戦闘力 90
◇◇◇
ギルドにて。
「そういえば私達、両方ともDランクだから、オークの依頼受けられるわね」
…冒険者はパーティーを組むと、通常より上のランクの依頼を受けられる。
前、Eランクの時にゴブリン討伐の依頼を受けられたのも、その制度を利用した仮パーティーによる物だ。
「でもセレナは怪我明けだろ?」
「無理しない方がいいんじゃないのか?」
俺がそう言うと、セレナが少し驚く。
「私のことを心配するなんて…」
「あなた、本当に何かあったの?」
「失礼だな。」
「ゴブリンキング戦の時、無茶してたの見てたんだぞ。」
「……。」
セレナは少しだけ視線を逸らした。
「だから、オーク討伐は無しだ。」
「また倒れられたら困るからな。」
「……。」
一瞬、セレナが黙り込む。
そして小さく咳払いした。
「ま、まあ」
「今日のところは、様子見にしておくわ」
「……言ったのは俺なんだけど、なんか素直だな。」
「なっ!」
「誰のせいでこうなったと思ってるのよ。」
「え?」
「……なんでもない。」




