信頼関係
コボルトを倒したあと、俺はスマホを取り出した。
『目標達成』
『決め台詞を言ってみる』
達成数 13/100。
『報酬を獲得』
筋力 25
体力 40
俊敏 10→15
魔力 5
戦闘力 85
「俊敏が上がったのか。」
セレナとの差を少しでも埋められるのは嬉しい。
「…戦闘力、かなり上がったな」
この異世界に来た時、俺の戦闘力は20だった。
それが今は85、さらにアイテムボックスや明鏡止水というスキルもある。
ステータスの上がり幅は少なくなっているものの、これを達成して強くなるという方針はおそらく間違ってないだろう。
俺は次にやることを決めるため、未達成の目標をスクロールしていく。
『屋台の食べ物を全部食べる』
『路上ライブをする』
『バンジージャンプをする』
『川下りをする』
『カッコいいマントを着る』
『一日中ゴロゴロする』
「今できそうなのはこんなもんか」
さらに下へスクロールする。
そして、その文字が目に入った。
『魔王を倒す』
「……あったな、こんなの。」
中学の頃、ファンタジー作品にどっぷりハマっていた時に書いたんだろう。
魔王を倒して、世界を救う。
今見ると、かなり恥ずかしい。
しかし、急に現れたゴブリンキングのことやオークの生息域の変化のことを考えると…。
ただの偶然とは、少し思えなかった。
「まあどちらにしろ、今の俺じゃな……。」
俺はそう思いスマホをしまった。
まずは強くなること。
魔王を倒すなんて、その何百歩も先の話だ。
◇◇◇
帰り道。
街道近くの森を歩いていると、人の声が聞こえてきた。
「うわっ、来た来た来た!」
「リク! 囲まれてる!」
「まじでやばいって!」
俺は声の元へ向かう。
するとそこには、三人組の冒険者がいた。
茶髪の短剣使い。
大柄な盾持ちの青年。
そして、見習い神官らしい少女。
そんな彼らを囲むように、四匹のコボルトがいた。
「これはまずいな」
俺は剣を抜く。
そして……。
「後ろの二匹は俺に任せろ」
そう言って俺はコボルトに斬りかかり、一撃を入れた。
しかし、致命傷ではない。
明鏡止水を使えば一撃だが、あれは隙が大きい。
敵が複数いる今の状態じゃ使えない。
俺は普通に踏み込み、弱ってる一匹を斬り払う。
そしてーー。
「フラッシュ」
「ピギャアッ」
ブシュッ
二匹目も地面に崩れ落ちる。
俺はさっきの冒険者の方を見る。
二匹のうち一匹は盾役の少年が体当たりし、短剣使いが背後から斬りかかる。
そして二匹目は神官の放った小さな光弾に怯んでいる。
俺は落ち着いて間合いを詰め、剣を振るった。
ズバッ。
コボルトが倒れる。
「た、助かった……。」
茶髪の青年がその場に座り込んだ。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
「本当に助かったよ」
全員、大きな怪我はなかったようだ。
俺は青年に手を差し伸べる。
◇◇◇
「俺、リクっていうんだ」
「こっちのでかいのがトリスで」
「で、こっちの神官がラウラだ」
「おいリク、でかいのとはなんだでかいのとは」
「そうですよリクさん」
「悪い悪い。」
「それで、お兄さんの名前はなんて言うんだ?」
「賢一だ。」
「ケンイチさんか!」
「いやー本当にさっきの戦い、すごかったよ!」
「いや、普通だよ」
「普通じゃないって。俺なんか最初の一匹でパニックだったし」
その後、俺たちは街道を一緒に歩いた。
リクは明るく、よく喋る。
盾役のトリスは真面目でしっかりしていて、神官のラウラは素直で気配りができる、という印象だった。
なんというか、俺が中学の頃に読んでいたラノベに出てきそうな新人パーティーだった。
◇◇◇
王都へ入る前、リクが笑って言う。
「今度ギルドで飯でも食べよう!」
「おう。」
俺が頷くと、リクたちは手を振りながら人混みの中へ消えていった。
俺はその背中を見送りながら、少しだけ思う。
俺とセレナも、他の人から見たらあんなふうに見えるのだろうか。
お互いに信頼し合って、戦えてるのだろうか。
ゴブリンキングとの戦いで、俺とセレナの距離は確かに縮まった。
今は、彼女に少しは信頼してもらえている――と思う。
だからこそ、その期待に応えられるようにしたい。
「……診療所、寄っていくか」
そう呟きながら、俺は夕暮れの王都へ足を踏み入れた。




