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黒歴史

 釣りが終わったので、俺は店主に釣竿を返しに行っていた。


 「苦戦してたな」

 「ほら、これでも食っていけ」


 そう言って店主は、俺にスープを渡した。


 「ありがとうございます」


 俺はスープを飲む。

 飲んでみると、口全体に磯の香りが広がり、すっきりと澄んだ味が押し寄せてきた。


 「…美味しい」


 「それは良かった」

 「好きなだけ休んでいけ」

 「釣り好きな奴に、悪い奴はいねぇからよ」


 そう言って店主は店の奥に行ってしまう。


 「ありがたいな…」


 俺は少し、休ませてもらうことにした。

 そういえば、釣りの報酬を確認してなかったな。

 俺はスマホを見る。


 『報酬を獲得』

 『スキル【明鏡止水】を習得しました』


 「明鏡止水?」


 なんか急に格好いい名前が来た。

 スマホをタップすると説明が表示される。


 【明鏡止水】

 心を静め、極限まで集中することで、一撃の威力を大きく高める。

 発動中は集中が完了するまで移動できない。


 「……おぉ」


 デメリットはあるけど、使えたら強そうだ。


 翌朝。

 俺はギルドの掲示板を眺めていた。

 セレナは診療所で休んでいるので、今日は完全なソロ依頼だ。

 …今までの俺はソロとなった時、薬草採取しか受けられなかった。

 しかし、ゴブリンキング討伐の功績で、俺はDランクに昇格していた。

 だから、今日は王都近郊のコボルト討伐を受けることにした。


 「明鏡止水、実際に使うのが楽しみだ」


 受付で依頼を受理してもらい、俺は森へ向かう。

 街道をしばらく歩いていると、道端に果物を売る屋台が見えた。

 赤くて丸い果実。

 …リンゴに少し似ている。


 「そこの兄ちゃん、今なら一個銅貨一枚だよ!」


 「じゃあ一個ください。」


 俺は歩きながら果物をかじる。


 シャクッ。


 「うまっ。」


 甘酸っぱくて、本当にリンゴみたいだ。


 その瞬間。


 ピコン。


 『異世界の果物を食べる』


 目標達成。

 達成数 12/100。


 『報酬を獲得』


 筋力 20→25

 体力 40

 俊敏 10

 魔力 5


 戦闘力 80


 「…おぉー」

 「ステータスも結構上がったな」

 

◇◇◇


 その後、森へ入る。

 地図によると、コボルトの生息域はこの辺りらしい。

 ガサッ。


 茂みが揺れる。

 現れたのは一匹のコボルトだった。


 【コボルト】

 戦闘力 40


 今の俺なら、普通に戦えば勝てる相手だ。

 距離は十分、周りに他の気配もない。


 「試すなら今だな」


 俺は剣を構える。

 そして、目を閉じた。

 釣りをしていた時の、あの感覚を思い出す。

 呼吸を整え、雑念を捨てる。

 そしてただ、目の前の一撃だけを思い描く。


 【明鏡止水 発動】


 世界が静かになる。

 でも、感じる。

 迷いも、恐怖も、今の俺にはない。


 俺は剣を振り上げた。

 そして――。


 ズバァッ!!


 一閃。

 コボルトが真っ二つになって吹き飛んだ。


 「えっ。」


 自分でも驚いた。

 威力が明らかにおかしい。

 普段の俺とは、比べ物にならない攻撃だった。


 「すげぇ……。」


 その瞬間。


 ピコン。

 『決め台詞を言う』


 「なんだ……これ。」

 「こんな目標書いたっけ。」


 俺は記憶を思い起こす。

 そういえば中学一年生の頃、好きだった漫画の、剣士の人の台詞に憧れてたっけ。

 そう…確か。


 「また、つまらぬ物を斬ってしまった」


 『目標達成』

 『決め台詞を言ってみる』


 達成数 13/100。


 「なんで俺……こんな目標、設定したんだ……。」


 森の中で一人、俺は頭を抱えた。

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