やりたいこと
ゴブリンキング討伐から二日後。
俺は診療所の前にいた。
「今日は起きてるといいんだが……。」
俺は扉を開け、静かに病室へ入る。
◇◇◇
ベッドの上で、セレナが窓の外を眺めていた。
「……ケンイチ?」
彼女はそう言ってこちらを振り返る。
心なしか、声が少しかすれていた。
「起きたか」
「…ここは?」
「診療所だ」
「他の班の人が運んでくれたらしい」
「そう…だったのね」
俺は椅子に座り、今の状況を説明する。
「ダインさんは重傷だけど、命に別状はない」
「今はミーナさんが付きっきりで看病してる」
「後、第一班の人たちも無事らしい」
それを聞くと、セレナは少しほっとした表情になる。
「良かった…。」
◇◇◇
起きてしばらくすると、セレナはいつもの調子を取り戻す」
「……正直、今回は本当に死ぬかと思ったわ。」
「ああ。本当にな」
ゴブリンキングを前にした時の恐怖は、まだ体に残っている。
本当に、全滅してもおかしくない戦いだった。
「でも。」
セレナが俺を見る。
「誰かさんが、助けに来てくれたから」
「……。」
「正直、来ないと思ってた」
「ひどいな」
「だって、あの状況よ?」
まあ、それはそうだ。
実際、最初は俺自身も逃げようとしていたし。
「でも、あなたはちゃんと来た」
「私の目に狂いはなかったみたいね」
セレナは少しだけ笑う。
その笑顔が、俺にはとても眩しく見えた。
◇◇◇
俺は診療所を出る。
外は夕日に照らされていた。
「一週間、か」
セレナは怪我の影響で、最低でも一週間は活動できないらしい。
だから、しばらくはソロで活動することになる。
「……。」
今回の戦い、俺はゴブリンキング相手にフラッシュで隙をつくり、傷も与えられた。
スライムを相手にしていた時と比べると、確かに成長している。
でも、あれはみんながいたからできたことだ。
もし一人だったら、きっと何もできず死んでいただろう。
「もっと強くならないとな」
俺はスマホを取り出す。
『異世界でやりたい100のこと』
俺がここまで戦えているのも、これの達成報酬のおかげだ。
今までの俺は、ただ成り行きで達成してきた。
俺は画面をゆっくりと眺める。
そこには、難しそうな目標に混じって、妙にくだらない項目が並んでいた。
『魚を釣る』
『山登りをする』
『温泉に入る』
『路上ライブをする』
『屋台の食べ物を全部食べる』
『バンジージャンプをする』
「……なんだこれ」
思わず笑ってしまう。
これは中学生の頃の俺が、やりたいことを書いたものだ。
だから目標の統一感も無いし、幼稚なものも多い。
だからこそ。
「…できることから、やってみるか」
俺は、夕焼けに照らされた王都を見上げる。
叶えてやろうじゃないか。
俺の、やりたいことを。




