仲間
翌朝。
まだ日が昇りきらないうちに、俺は冒険者ギルドへ向かった。
昨日は緊張してあまり眠れなかった。
「おはよう、ケンイチ」
「ああ。おはようセレナ」
ギルドに行くとセレナがいた。
昨日もそうだが早いな。
「準備はできてる?」
「もちろん」
俺は腰の剣を軽く叩く。
大きなリュックに加えてアイテムボックスには缶詰に水に包帯に。
荷物は完璧だ。
「ならいい」
セレナは小さく頷いた。
その時だった。
「おー!」
聞き覚えのある豪快な声。
「新人コンビ!」
「こんな時間から来てるなんてやるじゃねーか!」
ダインさんだ。
今日も大きな斧を背負っている。
そして隣にはミーナさん。
相変わらず表情はあまり変わらない。
「ちゃんと飯食ったか!」
「はい!」
俺は大きな声で返事をする。
「二人ともうるさい」
ミーナさんがため息をつく。
「気合い入れねぇとな!」
「近所迷惑」
「ギルドだからいいだろ!」
「そういう問題じゃない」
息ぴったりだ。
昨日も思ったけど、この二人は見ていて飽きない。
「セレナちゃん」
ミーナさんがセレナに声をかける。
「武器見せて。」
「え?」
セレナは言われるがまま剣を渡す。
ミーナさんは刃を確認し、軽く振る。
「……うん。」
「やっぱり状態が悪い」
「剣のメンテナンスはしてないの?」
「…はい」
「お金がなくて…。」
ミーナさんがため息をつく。
「そう……」
「ならこの依頼を達成した後、すぐ鍛冶屋に行きなさい」
「これは仲間を危険に晒す行為よ」
「命に関わるから。」
「覚えといて。」
「はい……」
セレナは頷く。
ダインさんが笑う。
「ミーナは口うるさいけどな!」
「ただ生き残ってほしいだけなんだ」
「ダインうるさい」
ミーナさんは、確かに厳しいように見える。
でもそれは、仲間を守るためのものだ。
……いい人なんだな。
◇◇◇
受付嬢が前へ出る。
「皆さん、お待たせしました。」
「合同依頼を開始します。」
全員の視線が集まる。
「今回の目的は森の安全確認、および魔物の討伐です。」
「無理はしないこと。」
「異常を感じた場合は、すぐに他班へ連絡してください。」
「それでは──出発!」
◇◇◇
王都を出る。
十六人もの冒険者が列になって歩く光景は、なかなか迫力がある。
「なんか…大規模依頼って感じがする」
セレナが横を見る。
「今さら?」
「いや、今までは二人だったし。」
フィアと歩いた時、セレナと歩いた時。
どちらも楽しかった。
でも今回は違う。
ベテラン冒険者がいて。
新人がいて。
まるで一つの部隊みたいだ。
「……すげぇ」
思わず笑みがこぼれる。
セレナはそんな俺を横目で見て、小さく息を吐いた。
「子どもみたい」
「でも…それは私も同じか」
「もし戦闘中に剣が折れたら、仲間を危険に晒すことなんて分かってたのに」
「自分の都合で放置してたんだから」
セレナは少し、落ち込んだような声で言う。
「…その剣を放置すれば危ないってことは、俺も知ってたんだ」
「俺にも責任がある」
「だから、一人で背負わないでくれ」
「……ありがと」
セレナはそれだけ言って、また前を向く。
そうして歩いていくと、森の入り口が見えてくる。
合同依頼が、いよいよ始まる。




