合同依頼
「おはよう」
ギルドへ入ると、セレナがいた。
「早いな」
「あなたが遅いの」
そう言って、セレナは依頼掲示板へ向かう。
「今日は少し稼ぎたいの」
「何か欲しいものでもあるのか?」
「うん」
セレナは自分の剣を差し出す。
「剣か」
見てみると、かなり摩耗している。
それに、刃こぼれもひどい。
「この前オークを相手にした時も危なかったし」
「なるほど」
冒険者は命がけの仕事だ。
武器や防具にお金をかけるのも当然なのだろう。
「ケンイチは?」
「俺?」
聞かれて考える。
欲しいもの。
……思いつかない。
「とりあえず生活費かな」
「夢がないわね」
「現実的って言ってくれ。」
そんなやり取りをしている時だった。
ガランッ。
ギルドの扉が勢いよく開く。
「おーい!」
筋肉質な男が大声を上げた。
「合同依頼の参加者は集まってくれ!」
ギルドの空気が一気に変わる。
あちこちの冒険者が立ち上がる。
「始まるのか。」
「今回は森の掃討らしいぞ。」
「久々だな。」
俺はセレナを見る。
「なあ、合同依頼ってなんだ?」
「あなた知らないの?」
「うん」
「はぁ……」
「合同依頼っていうのは、ギルドからの依頼を複数のパーティーで受けるものよ」
「危険な依頼なのか?」
「逆。」
「ベテランもいるから普通より安全」
「へぇ」
「それに、普段の依頼よりも稼げる」
「大体はランク制限があって受けられないから、私たちには縁がないものだけど」
「なるほど」
◇◇◇
受付嬢が前へ出る。
「今回の合同依頼ですが、参加条件はEランク以上になります。」
俺たちは顔を見合わせる。
「…受けられるな。」
「…うん。」
受付嬢は続ける。
「依頼内容は森の巡回、および魔物の討伐。」
「討伐対象はゴブリン、コボルト、その他Eランク相当の魔物です。」
「特にゴブリンが増えているので、見つけたら優先的に討伐してください」
「危険な魔物を見つけた場合は単独で戦わず、周囲へ知らせてください。」
周囲の冒険者たちは慣れた様子で聞いている。
俺は少し緊張していた。
「参加者は全部で十六名。」
十六人。
結構多い。
「四人ずつ四班に分かれて行動します。」
セレナが小声で言う。
「良かった」
「?」
「人数が多い方が事故は少ないから」
確かに。
セレナは強いが、剣があの状態だと何かトラブルが起こるかもしれない。
それに、俺もまだ自分一人で戦える自信はない。
◇◇◇
「それじゃあ班分けを発表します。」
受付嬢が紙を読む。
「第一班」
次々と名前が呼ばれる。
知らない人ばかりだ。
「第二班」
まだ呼ばれない。
「第三班」
「セレナさん。」
「ケンイチさん。」
「はい!」
思わず大きな声が出る。
少し恥ずかしい。
「それから」
「ダインさん」
大柄な男が片手を上げる。
斧を背負った三十代くらいの冒険者だ。
見るからに強そうだ。
「ミーナさん。」
今度は小柄な女性。
背中には杖を背負っている。
「よろしくお願いします」
ダインさんが豪快に笑う。
「新人が二人か!」
「任せとけ!」
……すごい安心感だ。
一方。
ミーナさんは冷たい雰囲気だ。
「ダイン」
「甘やかしちゃ駄目」
「新人っていっても、冒険者なんだから」
「ははは!」
「それもそうだ!」
なんだろう。
この二人。
正反対のはずなのに、息がぴったりだ。
セレナが小さく呟く。
「この人たち、ずっと同じパーティーってことで有名なの」
「…なるほど」
どこかしっくり来るのはそういうことか。
少しだけ羨ましく思う。
俺もいつか、こんな風に背中を預けられる存在になれるのだろうか。
◇◇◇
説明が終わり、各班は解散していく。
ダインさんが俺の肩を叩いた。
「明日はよろしくな!」
「はい!」
「今日はしっかり休めよ!」
そう言って笑いながら去っていく。
その背中を見送りながら、俺は思う。
ダインさん、頼りになるな。
こういう人もいるんだ。
「怖い?」
隣でセレナが聞いてくる。
俺は少し考えてから答えた。
「ああ…。」
「……でも」
怖くないと言えば嘘になる。
しかし、今まで知らなかった世界を知れる。
冒険者として、みんなと一緒に戦える。
「…楽しみだ」
俺は、ワクワクしていた。




