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仮パーティ

 「もしかして」


 「パーティー探してる?」


 その一言に、俺は思わず固まった。

 「えっと……まあ。」


 「実は私も」


 少女は腕を組む。


 「一人だと受けられない依頼があって、組む人を探してるの」


 「だから。」


 少女は俺を見る。


 「仮でいいなら組まない?」


 仮パーティー。

 依頼を受けるために、一時的に組むだけの関係。

 しかし、俺にはその提案が魅力的なものに感じた。


 「……お願いします」


 俺は頭を下げる。


 「よかった」


 少女は少しだけ笑う。


 「私、依頼中は結構厳しいから」


 「え?」


 「あと敬語いらない」


 「あ、分かり……うん。分かった」


 「うん。」


 それだけ言うと少女は受付へ向かった。


◇◇◇


 受けた依頼はゴブリン討伐。

 初心者向け。

 ただ、今の俺一人じゃ受けられない依頼だ。


 「あなた、前衛よね?」

 「剣持ってるし。」


 「……多分。」


 「多分?」


 「これ買ったの昨日だから。」


 「昨日!?」


 少女は思わず立ち止まった。


 「昨日って昨日?」


 「うん」


 「もしかして、薬草採取しかしてない?」


 「うん。」


 少女は空を見上げた。


 「……初心者とは思ったけど、まさかここまでとは」


 「俺もそう思う」


 少女は深いため息をついた。


 「仕方ない」


 「今日は私が前」

 「あなたは後ろ」

 「危なくなったら逃げて」


 「え?」


 「無理して死なれる方が困る」


  ……ずいぶん現実的な人だ。


◇◇◇


 森へ入る。

 昨日来た場所とは違う。

 木々が生い茂り、昼なのに薄暗い。

 少女は歩きながら辺りを見渡していた。


 「……いる。」


 小さく呟く。


 その視線の先。


 二匹のゴブリンがこちらへ歩いてきた。


 「グギャ!」


 「来る!」


 少女は一気に駆け出す。


 速い。

 そして、迷いがない。


 剣を振る。


 一匹。

 二匹。

 あっという間だった。


 「終わり。」


 「すご……。」


 思わず声が漏れる。


 「冒険者やって、もう長いのか?」


 「ううん。初心者よ」


 「というかあなた」


 「?」


 「何もしないわね。」


 「……。」


 図星だった。


 「ご、ごめん」


 「別に怒ってない。」


 「でも。」


 少女は真っ直ぐ俺を見る。


 「下手に動かれても、足手まといだもの」


 その言葉が胸に刺さる。


◇◇◇


 その後も依頼は続いた。

 三匹目のゴブリンを倒し、依頼は達成。

 帰ろうとした、その時だった。


 ガサッ。


 茂みが大きく揺れる。


 少女の表情が変わる。


 「……下がって。」


 低い声だった。


 現れたのは。


 緑色の大きな体。


 筋肉質な腕。


 棍棒。


 【オーク】


 スマホが表示する。


 戦闘力 100

 推定勝率 20%


 「おかしい…ここは生活圏外のはず」


 少女は剣を構え、そう呟く。


 「逃げる?」


 俺は息を飲む。


 逃げる。

 その言葉だけで。

 頭の中に蘇る。

 巨大な黒い狼。


 体が動かない。

 足が震える。

 怖い。


 また。


 また俺は。


 「……はぁ。」


 少女が前へ出る。


 「私がやる。」


 オークが棍棒を振り下ろす。


 ガンッ!!


 少女が受け止める。


 重そうだ。

 押されている。


 「っ!」


「危なくなったら逃げて」


 一歩。

 また一歩。

 後ろへ下がる。

 そうするたび、胸の奥が熱くなった。


 また逃げるのか。

 また、何もできないのか。


 違う。


 俺は。


 変わりたかったんじゃないのか。


 フィアに約束したじゃないか。


 “もっと強くなって、いつか必ず恩を返す。”


 怖い。

 すごく怖い。


 でも。


 逃げたくない。


 俺は剣を握る。

 足は震えている。


 それでも。


 一歩。

 踏み出した。


 「うおおおおおお!」


 叫びながら駆ける。


 オークが振り向く。


 剣を振る。


 ガキンッ!!


 硬い。


 それでも。


 刃はオークの足を切り裂いた。


 「グオォッ!」


 オークの注意が俺へ向く。


 その一瞬。

 少女の声が響く。


 「ナイス!」


 少女が地面を蹴る。


 一閃。

 銀色の軌跡が走る。


 ズバッ。


 オークが崩れ落ちた。


 静寂。


 俺はその場へ座り込む。


 「はぁ……。」


 全身から力が抜ける。

 怖かった


 少女が近づいてくる。


 「遅い」


 「ご、ごめん」


 思わず謝る。


 少女は少しだけ笑った。


 「でも」

 「ちゃんと来た」


 その一言だけだった。

 だけど、その一言が妙に嬉しかった。


◇◇◇


 ギルドへ戻る。

 討伐報告を終え、報酬を受け取る。


 帰ろうとしたその時。

 少女が俺を呼び止めた。


 「依頼も終わったし、仮パーティー解散ね」


 「ああ。」


 そうだ。俺たちは元々、そういう関係なんだ。


 「分かった…今日はありがとう」


 俺は再度帰ろうとする。


 「待った」


 振り返る。


 「仮パーティーは終わり。」

 「だから、これからは本当のパーティーになりましょう」


 「え?」


 「今日ので分かった」


 少女は少し照れくさそうに言う。


 「あなたはちゃんと前に出られる。それなら、一緒に戦える。」


 その言葉に、胸が少し熱くなった。


 「ありがとう」


 少女は手を差し出す。


 「私の名前はセレナ」

 「あなたの名前は?」


 「俺の名前は賢一。」

 「これから君とパーティーを組む。賢一だ」


 俺は彼女の手を取った。



 ピコン。


 『目標を達成』

 『パーティーを結成する』

 達成数 7/100

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