ひとりの冒険者
俺は一人で冒険者ギルドへ向かっていた。
昨日まで隣を歩いていたフィアはいない。
たったそれだけなのに、王都がいつもと違って見える。
「お願いします」
俺は受付嬢に依頼書を差し出した。
受けるのは薬草採取。
昨日と同じだ。
◇◇◇
「これが薬草。」
フィアが教えてくれた言葉を思い出す。
葉っぱの真ん中の一枚が、少し長い。
そして、茎の先が少し赤い。
念のためスマホでも確認する。
【薬草】
間違っていない。
このスマホがあれば、薬草採取で苦労することはない。
本当は喜ぶべきことなのだが、なぜか素直に喜べない自分がいる。
◇◇◇
一時間後。
依頼は無事に終わった。
モンスターにも会わなかった。
アイテムボックスで荷物も最小限。
失敗はなかった。
でも。
「疲れた……。」
思わずその場に座り込む。
薬草を探して。
鑑定して。
周囲を警戒して。
昨日も同じことをしたはずなのに、疲れ方が全然違う。
「フィア、結構助けてくれてたんだな。」
彼女といると、なぜだか安心した。
前を歩いて。
危険があればいち早く察知して。
それで俺に指導して。
全部自然にやっていた。
「……一人って大変だ。」
◇◇◇
ギルドへ戻る。
報告を済ませると、周りが少しだけ騒がしかった。
「よし、この依頼行くぞ!」
「いいぜ!」
「回復薬は持った?」
「忘れてた!」
あちこちで冒険者たちが仲間と話している。
「……そうか」
俺は一人呟く。
「みんな、パーティーを組んでるのか」
考えてみれば当たり前だ。
モンスターと戦う。
荷物を運ぶ。
怪我をしたら助ける。
一人より二人。
二人より三人。
その方が安全に決まっている。
「でも。」
俺は周りを見渡す。
知り合いなんていない。
話しかけられそうな人もいない。
フィアがいたから気にならなかっただけで、俺はまた一人だった。
「どうしたもんかな……。」
その時だった。
「ねぇ。」
後ろから声がした。
「さっきから一人でぶつぶつ言ってるけど、大丈夫?」
振り返る。
そこには、一人の少女が立っていた。
鋼の鎧。
腰には一本の剣。
どこか勝ち気そうな瞳が、まっすぐ俺を見ている。
「聞いてる?」
「あ、はい!」
突然話しかけられ、思わず変な声が出た。
少女は小さくため息をつく。
「やっぱり」
「あなた、初心者でしょ」
「え、なんで分かった?」
「見るからに」
「そんな分かりやすい?」
「うん」
即答だった。
……ちょっとショックだ。
少女は依頼掲示板を指差す。
「もしかして」
「パーティー探してる?」
その一言に、俺は思わず固まった。




