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結局アイザックに夢わたりのことを伝える名案は思い浮かんでいない。
「どうしたらいいのかな」
少し前を漂うマリムゥのしっぽをつつきながら、アイザックの夢に向かう。
今夜は会う約束をしている日である。
アイザックの夢の入り口が見えてきた。
「なっ!」
声を上げ、走り寄る。
その入り口はまた禍々しい色をしていた。
入り口に迷わず飛び込もうとする。
するとその時。
後ろへと思いっきりローブをひかれた。
強い力により、中に入らず、しりもちをつく。
「お前は!またしょうこりもなく」
そこには目を怒らせたカルロスが立っていた。
「カルロス兄さん」
カルロスの顔を見上げると、彼は大きくため息をついた。
「こんなことだろうと、早めに依頼を終わらせてここに来たんだ」
カルロスが黒く波打つアイザックの夢の入り口を見つめる。
「これは誰の夢だ。現実での知り合いの夢なのだろう」
その言葉に肩が揺れる。
「やはりな。お前は本当にわかっているのか?」
「なにをですか…」
カルロスの冷たい声に、本当は自分で気付いていて、目をそらしているだけのくせに問いかける。
カルロスはそんな私のことも見透かしているようだが、ひとつため息をつくと、丁寧に説明する。
「お前は三年前に掟をすでに破っているんだ。現実の知り合いの夢に関わるなど。今度こそ掟をすべて破るつもりか!」
最後は厳しい叱責であった。
カルロスの本気の怒りの声を聞いたのは三年ぶりである。
目の前のカルロスと記憶の中の少し背の低いカルロスの姿が重なる。
三年前の出来事が鮮明によみがえる。
「だんだん慣れてきたなぁ」
依頼の帰り道、マリムゥの後ろをスキップしながら歩く。
マリムゥのしっぽが右へ左へと揺れる。
夢わたりの依頼を受けるのは12歳から。
夢わたりは12歳になった日に親から引き継ぐ。
レアリゼ家の場合、父の家系で、嫁いできた母には夢わたりの能力はなかったので、父から引き継いだ。
私が依頼をこなし始めて一年が経っていた。
どんくさいので時間はかかるが、依頼は無事に解決しており、自信がついてきていた。
上機嫌でマリムゥの揺れるしっぽを追いかける。
すると突然皮膚が泡立った。
寒気のようなものを感じて、ローブの上から腕をさする。
きょろきょろと視線をさまよわせると、黒く揺れるひとつの入り口が目に入った。
「悪夢…」
依頼人とは無関係の夢であったが、気になって近づく。
マリムゥが私の視界を邪魔するように揺れる。
しかし私は吸い寄せられるように、入り口に手をかざした。
そして一歩を踏み出してしまった。




