表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/28

遥な国

どうやら人生初の海外旅行は海外ではなく異世界らしい。

いや、フロワリベールなんて国を知らないだけかもしれない。帝人君子という制度を学校では学ばないだけかもしれない。

目の前の男基シオンがニコニコと笑いつつも冗談を言う様子ではないから理解が追いついているだけだ。

妙にすんなりと納得することができた。

「フロワ、リベール」

「はい。私は普段は外交大臣をしています。今回は龍の友達に興味がありまして立候補させていただきました。一応、父親ですから。」

「ち、父親!?龍の!?」

これには驚いた。驚きのあまり椅子が音を立てて揺れる。

シオンも驚いたようで目を丸くした。

すぐに笑顔に戻って続ける。

「はい。と言っても血の繋がりもありませんし、父親歴2年程度ですよ。」

友達の父親にあったらなんて言えばいいんだ?

手土産…いやそもそもこの状況だ。

どういった反応をすればいいのか遥には分からなかった。

「ふふ、龍と仲良くして下さっているようですね。まだ龍から話は聞けていませんが、真人くんからは聞いていますよ。とても楽しい子がいると。今の時点で君が龍に危害を及ぼすような子ではないと判断できますが……今回は君の認識の確認ですからね。あなたから見た学校での龍の話を聞かせていただけませんか?親として興味もあるのです。あの子が学校に行くと言い出した時の心配と言ったら……はぁ、あの子は何も言いませんし…なので、気軽にお話していただければ結構です。」

心を読み、認識と事実のすり合わせをするということだろう。

拷問を想像していたが思っていたようなことはされないようで安心する。

遥はシオンの対応にすっかり緊張もほぐれ、興奮気味に話始めた。


龍は背が低くて大人しく、会話は得意では無さそうだが常に周りが人にいてクラスの中心になっていること。

運動神経がずば抜けており、加えて真人と揃って頭もいい事から女子にとてつもない人気を誇っていること。

体育でバスケの試合をした時、その小柄な体では信じられないほどの高さでジャンプをして見事ダンクシュートを決めたこと。

テストではクラスで唯一の満点であったこと。

何度告白されても困ったように断っており、誰か好きな子がいるのではないかと噂になっていること。

「後は……龍の右腕が、義手だってこと。事故なのか生まれつきなのかは分からないけど、一回腕をもいでしまって…龍には悪いことしたと思ってる。でも右利きなんだろうなとも思ってるし、不自由なさそうだなって。あまねさんは龍とかかわるには今の生活を捨てる覚悟をしろって言ってた。龍と関わることで世界が変わっちゃうとは思えないんだよな。能力……龍にはあるのかな。殆どが無能力だけど、極たまに能力が覚醒するやつがいるのは知ってる。龍は、どんな生活をしてきたんだろう。何を感じてきたんだろう。」

遥は途中から自分の状況を忘れ、龍を思い返していた。

真人は言った、龍に普通を教えないで、と。

あまねは言った、普通ね、やっぱり君はダメみたいだ。

またあまねは言った、普通の人間として生きていないから、と。

「普通、って、なんだ?」

シオンが目を細めた。

遥はそれを見逃さない。

シオンに詰め寄ろうとして縛られた縄が肌に食い込む。

遥はお構い無しにシオンに食ってかかった。

「シオンさん、あいつの父親は?本当の親は?真人もだ。あまねさんも。あんたらはどういう関係なんだ?」

「…あまり、興味を持ちすぎることも問題ですね。今回のことはあなたは特に深く考えていない、間違った認識以前の問題だと報告をしましょう。時期に迎えが来ます。……あなたは龍にとって悪影響とまでは言いませんが…そうですね、あなた、よく無神経だと言われませんか?」

そう言ったシオンの目が、とても冷ややかなものに見えた。


てっきり牢屋に入れられるのだと思った。

以前はバイクに跨っていた少年、蓮がむかえ役としてやってきた。

今回はバイクではなく、背中から二対の翼を生やし、1度羽ばたかせる。

何が何だかわからぬまま抱えられ、空へと飛び上がったのだ。

恐怖はなかった。

それほど安定していたし、空から見るフロワリベール帝国に遥は興奮していた。

真っ白な国だった。

所々に人が見えるがそれを抜きにしても建物全体が白い。

「これ、原材料はなんなんただ?白鉛か?」

「それ、どこぞの滅んだ国だろ。あれは全部霜だよ。あまね様の影響下にあるの国は気温が低い。あまね様がいるかぎり気温が下がり続けるんだよ。だからたまに国を出て気温を調整してるんだけど…最近は忙しくて調整する暇もないんだな。」

空へと飛び上がってようやく国の全貌が見えた。

巨大な島だった。

周囲を囲うように円形状の島があり、その中央を埋めるようにまた島が浮かんでいる。

その中央部の島が主な国土なようでまた4分割され、それぞれ違った雰囲気を醸し出している。

真っ白だったのはその一角のようだった。

またその中央に一際目立つ城がそびえ立っており、蓮はその城に向かって転回する。

「綺麗な国だな」

「そ?嬉しいこと言うじゃん。尋問されてビビってるかなーって思ってたけど案外平気そうだね。」

あっという間に城の一部に設けられたベランダに降りたって翼を羽ばたかせて、背中に姿を隠してしまった。

ベランダから中に入ると中も白い部屋だった。

真っ白な四方に真っ白なベッド、真っ白な家具の数々。

狼の仮面を被ったメイド姿の女が正面のドア付近に立っていた。

「おかえりなさいませ、蓮様。」

「こいつの面倒見てやってね。あまね様は?」

「陛下は帝人君子の方々と定例会議でございます。」

「そ。じゃあ遥、ここ暫くはお前の部屋だから。何かあったらそこのルーに聞いてね。じゃああとは頼んだよ。」

ベランダに腰掛けそのまま、後ろに体を傾け、城の下に消えていく。

遥が思わず手を伸ばした時には時すでに遅し。

慌てて下を覗き込んで見れば真っ白な翼を広げて滑空していく蓮の姿が小さく見えた。

「…蓮って、人間じゃないのかな。」

「はい、蓮様はハーピィでございます。」

いつの間にかルーと呼ばれた女が背後に立っており、遥は飛び上がって驚いた。

ルーは動じず、その様子をじっと見つめている。

「ハーピィ?」

「はい。防御力に長けた、身体から自在に翼を生やすことができる鳥族でございます。あの翼は核兵器でも傷1つつかないそうです。」

「へ、へー。」

イマイチ実感がわかなかった。

確かに蓮が滑空しているときは翼は一対で、遥を抱えている時は二対だったし、背中に消えたと思ったのは単純に消えてしまったということなのだろう。

遥は今度はルーを見る。

狼の仮面のせいで顔は見えないが体格、服装、声から女に間違いはない。

ピシッと背筋を伸ばすルーはまさにメイドそのものだった。

「ここが俺の部屋っていうのは…」

「?わたくしは蓮様のお世話係でございます。その蓮様から遥様のお世話係を仰せつかっております。期間は未定。特に行動制限は伺っておりません。」

「つまり、俺はここで寝泊まりするけど、特にここで拘束されるわけじゃないってこと?」

ルーは上品に頷いた。

尋問され、身柄を拘束されるのかと思いきやただ寝る

場所を与えられ、行動も制限されない。

あまりにも捕まっている感覚がなさすぎる。

「じゃ、じゃあ、部屋から出ちゃいますよ?」

ドアノブに手をかけるがルーがそれを咎める様子はない。

もちろん、開けて外に出てみても無かったが。

長い廊下を歩くことにするがルーもその後ろを着いてきた。

あくまで世話係としての責務の一環らしい。

特に行動制限はないと説明は受けたがあまり自由に歩き回ると迷子になりそうだ。

ルーがいれば案内はしてくれるだろう。

「あの、ルーさん。」

「ルーで結構です。」

「…いや、流石にルーさんって呼ばせてもらいます。ルーさんは案内ってしてくれますか?」

「はい。どちらに伺いましょう。」

「龍に会いたいんだけど、ここにいますか?」

「…申し訳ございません、龍様との面会は許可が出ておりません。」

本当に申し訳なく思っているのがわかった。

無理に頼む訳にはいかないとルーに案内して貰うことは諦めることにする。

面会の許可、ということはここにはいるということだろうか。

城中を練り歩いていればたまたま、偶然、龍に会うことができるだろうか。

「…俺が自分で龍を探すことは問題ありませんか?」

「はい。お探しになったところでお会いになることは出来ないと思いますが。」

「ここにはいないってこと?」

「いえ、いらっしゃいます。」

「?」

ひとまず、自分で探すことは可能ということなので遥は城を練り歩ことに決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ