27.冷めた空気が一瞬で。
レディス・アルストロ
王国の第1王子にして次期国王の地位を継ぐ者。
前世リリアーナの婚約者でありながらも
妹であるルナティアを愛しリリアーナの地位を全て奪い取りそして死に追いやった男。
「うわぁーん!レディス様ぁ!!」
とレディスに泣きながら飛びついていくルナティア。
王族に抱きつくとは、不敬であり首を跳ねられる可能性があるというのに。ルナティアは迷わず抱きついた姿を見て貴族達はざわつき始める。
一方リリアーナは容態が良くなかった。
王太子を見るなり前世の記憶が脳裏で再生される。
きつい態度で叱りつけるなり
嫌悪のある瞳で向けてきた日、王妃の座をルナティアに変えると言ってきた日、護衛騎士と話していたら、理不尽に叱られた日ルナティアを殺したと決めつけられた日。全てリリアーナの心を抉るような光景ばかり。
全身から力が抜けていくのと同時に体の震えが止まらない。
顔を合わせたのはあの日のパーティー以降
大人だった姿を縮小させたような彼が目の前にいた。
自分のどこからかでガラスのようなものがミシミシと割れそうな音がした。
今すぐにでも逃げ出したかった。
けれど足が思うように動かない。
どれだけ足に力を入れようとしても
足は言うことを聞いてくれない。
その姿で貴族の輪の中で浮いてしまったせいか
レディスはリリアーナの方へ視線を向けた。
彼は、容姿を見れば誰か分かるというとても優れた力があるためすぐにリリアーナのことだと分かった。
そして、優しくルナティアを引き離すなり
リリアーナの数メートルの距離まで近づいてくる。
周りの貴族達は離れてはリリアーナ達を拝見する。
「リリアーナ、お前がやったのか?」
冷めた声で言われたその言葉。
リリアーナの体温が奪われていくのと同時に
周りの空気の温度が冷めていく心地がする。
何も喋ることができない
まるで人形のような状態であるリリアーナ。
そんなリリアーナにまた追い討ちをかけるように
レディスはまた話し始める。
「王族である私が聞いたとしても答えないのか?令嬢として、人として恥ずべき行為ではないのか?
家族である者をこのようなことをし、ましては私が来るなり隠蔽しようとしたりするのは。」
リリアーナを責め立てるも
リリアーナは何もしていない。
何もしていないというのに、彼は決め付けで
リリアーナを悪にした。
そのせいで痛いほどに視線を感じて見れば、怒りに満ちたクレアが、それを宥めようとするアッシュがいた。
脳裏て
ルナティアを殺したと決めつけられた時の光景を思い出してしまう。あの時の光景、音、向けられた視線
全てのことが頭の中で再生されていき
当時の自分のような気分になってきてしまう。
そのせいで先程から視線を向けてくるレディスや他の貴族達やクレア達を見るなり自然と下を向いていき
胃から何かが上がっきて思わず口元を手で覆いそうになる。
「おい、いつまで下を向いているつもりだ。」
レディスは下を向き続けるリリアーナに向かって
手を伸ばそうとしてきた。
「…っ」
来ないで、触らないで
いや、いやいやいやいやいやいやいやいや!!
いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!
心の中で叫ぶリリアーナ。
叫んだとしても心の中でしか響かない。
だからその叫びはレディスにも誰にも響かない。
再び耳の中でガラスがミシミシと割れるような音が。
もう少ししたらガラスが割れてしまいそうだ。
額辺りまで伸ばされた手を見て
全身の力が抜け、倒れてしまいそうになった。
ガラスが割れるような音がした。
意識が遮断される___。
がしかし、誰かがリリアーナの背中に触れた。
「リリアーナ。」
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