26.変わらないあなた
「よっ!」と軽い挨拶をしつつ
左手で持っていたワイングラスに入った炭酸飲料を飲む。
「こんな所で会うなんてね。」
「俺、一応フィルア公爵家の次男だぞ?
こういう所には呼ばれるって。」
フィルア公爵家とこのパーティーに参加したものの
幼き騎士という称号を持つ彼に令嬢達が群がってきたらしく全ての対応したため後疲れてしまったらしくこうして休憩室にいるのだとか。
「人気者ね。ネオは。」
「まあな。これからもっと人気になってみせるぜ!」
とドヤりながら高笑いした。
炭酸飲料を全て飲み干した後、1度中に戻って
ワイングラスを置いてきてからまたテラスに戻ってきては、リリアーナのテラスの方へと飛んでくる。
それからは、ネオから様々な尋問が行われた。
「調子はどうだ?」
「まあ、いいわね。」
「あの後、あの母親に何かされてないよな?」
「されてないわ。私から距離を置いたから。」
「あの後、母親はどうだった?」
「気に病んで、関わろうとしてくるようになったわね。」
「じゃあ…」
耐えない尋問にそろそろリリアーナは口出しした。
「そろそろ尋問は終わらせてくれないかしら?」
「は?なんでだよ?」
「お前の母親が、またお前に何かしてないか聞いてるのに。お前、誰にも言わずに溜め込むだろ?」
図星を突かれて、何も言えない。
それはそう。今までそうしていたからだ。
今まで、何か傷つくような言動や行動をされても誰にも吐かずに溜め込んで自分の中で解決させていた。
それをあの時から読み取っていたのだろうネオ。
けれど、本当に最近という最近は、自らあの人達から距離を置いていたため理不尽に怒鳴られることもない。
だから今は大丈夫だ。
「心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫なの今は。」と言った。
「…そうかよ。」
それを見て本当に大丈夫なんだと感じるネオ。
「でも、またあいつに何かされたら俺を呼べよな!」
「そう。それは助かるわ。」
まるで、姫を守る騎士のように逞しい姿を見て
リリアーナはクスリと笑った。
「なんか腹減ってきたなぁ。」
建国記念のパーティーが始まるまではずっと軽食しか取っていなかったため互いに空腹な状態であった。
「食事取りに行こうぜ!」
そう言われて、ネオに手を強く引っ張られてそのまま
足が勝手に進んでいく。
気づけば、休憩室を抜けて先程いた会場に。
会場へ行く階段を手を引かれながら降りた後
豪勢な料理が沢山乗せられたテーブルの前にネオは止まり掴んでいた手を離す。
それから、皿とトングを持ってきてはリリアーナに渡す。
「これで、好きなやつ取りな!」
ネオは好きなものをどんどん皿の上に乗せていく。
その様子をみながらもリリアーナも気になる料理を皿に乗せていく。
この建国記念のパーティーは立ちながら食べるという形式で会場を見渡せば、会話をしながらも食事を嗜む貴族達がいた。
沢山の料理を乗せた皿を持ちながらネオと
人があまり集まっていない場所で、食事を取りつつも
ネオと話し始める。どれもネオの自慢話ばかりであったがリリアーナは嫌がっておらず寧ろ楽しそうに聞いていた。食事を取った後、給仕の者からコップ1杯分の水を受け取って喉を潤した。
そしてまた話をしようとした時だった。
ふと貴族達の群れで見えていないが
何やら騒がしかった。
ふと気になり、前に出てみては
ガクリと膝を着いているルナティアがいた。
ドレスを強く握っており、目には大粒の涙が溜まっていた。
(この間のお茶会といい、またルナティアが何かされたのかしら。)
ルナティアは可愛らしい容姿をしているが
その可愛らしい容姿がもったいないと思うほどに幼稚な部分がある。
例えばお茶会のように、好きである王太子に会いに行こうとする時他の令嬢達も王太子に会いたいというのに
王太子は私のモノだと言うように令嬢達を退かしては
王太子を占領していた。
そういったことがあるからか令嬢たちから恨みをかわれ
陰湿な嫌がらせがあった。
おそらく、現にルナティアがドレスを強く掴んで
泣いてしまいそうな様子なのはおそらく何やら令嬢達から陰湿な嫌がらせをされたのだろう。
そうでなければ
ルナティアが握っている部分に目立ったシミなど付いていない。
おそらくは飲み物をかけられたのだろう。
クレアと一緒にデザインを決めたドレスを汚され
そして惨めな思いをさせてきた令嬢に対して
悔しさや様々な感情が押し寄せてきては
その瞬間
「うわああああん!!」
と耳に響くような声で泣き始めた。
近くにいる人達は皆、その声に思わず顔を引き攣らせ
耳を塞ぎそうになっていた。
(あー…また泣いてしまった。)
ルナティアの泣いている姿を見ても無の感情で
他人事のようなリリアーナ。
私には関係のないこと。と思いながらネオの所に戻ろうとした。けれど
「何事だ。」
と淡々とした声が聞こえ戻ろうとした足がピタリと
固着するように止まる。
そして階段から響く靴の音。
人々の視線を向けた先を見てみれば
輝く金色系統の髪と瞳をした1人の男性が見えてくる。
人達の輪の中に入り、ルナティアの前にやってきた
男性…、前世の時から変わらない
王太子が。
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