25.建国記念のパーティーで。
いつものように、目が覚めてからゆっくりと体を起こす。そのタイミングでロロナがティーセットを持ちながら部屋へ入ってくる。
アールグレイティーをいれたティーカップを手に取り
口にする。爽やかでスッキリとした風味がした。
あれからリリアーナは、侯爵家へと戻って行った。
本当は、アッシュ達と一緒に馬車に乗って帰る予定だったらしいが突然押しかけてはリリアーナを責め立てたクレアと一緒の空間にいるのは苦痛でしかないと考えたイリアスがいつものように移転魔法でリリアーナを送り届けた。
戻ってきてから、部屋にルナティアが押しかけてきては
クレアに何をしたんだ、どうしてあんなに泣いているのかを攻撃的な態度で問われるも、冷徹な瞳で人睨みすれば、怯えながら悔しげにドレスの裾を握った姿を見せてから即ルナティアは退場して行った。
そして、理不尽にリリアーナを責め立てたクレアは気に病んで、リリアーナに接触を測ろうとしていた。
リリアーナはバレないように距離をとっていた。
そうしなければ前世の記憶が蘇ってきて苦しくなる。
そう考えながらも部屋で習得した魔法の向上、そして時空巻き戻し魔法の解読を試みていた。
クレアは増して、リリアーナに接触しようとしてきた。
その度にロロナに追い返し続け
クレアとの…いや、家族との溝が埋まることがなかった。
それから、あっという間に時間は過ぎていき
あの日がやってきた。
その日は朝も昼もいつもとは異なり、全て軽食だった。
そして、夕方になる頃にはバタバタとしており、
リリアーナも部屋にいることは許されなかった。
お風呂やエステなどをしてからドレスの試着やメイクをしてもらい美しく着飾ってもらう。
準備が出来れば、アッシュ達の元へ行く。
「では行こうか。」と言われ馬車に乗ってから
城へ向かった。
道中、敵意の籠った目でリリアーナを見つめていたが
リリアーナは視界に入れずにただ馬車の窓から景色を眺める。静かな空気で何を言おうかと、
アッシュとクレアは思考を巡らせていた。
そうして会場に着いてから、アッシュの隣を歩きながら
着いてくるようにクレアとルナティアが続いてく。
今日のルナティアのドレスはいつにも増してリボンがたっぷりと入ったピンク色のドレス。可愛い容姿を持つルナティアにはピッタリのドレスだった。
そんなルナティアとは対象的に、繊細なレースに美しいソルトチュールが入った水色のドレスを着るリリアーナ。重ねれば春の妖精と冬の妖精のよう。
本当はリリアーナのドレスもクレアがデザインしたいと懇願していたが、リリアーナの望む系統とは違うため
断ろうとするも私がデザインをしたいとしつこく言って
仕方なく受け入れようとしたが、公爵家と交流のあるフィローメル公爵家の長女であり、数少ない女公爵であるルドレッタがリリアーナのドレスは私がデザインする。お前は
愛娘のルナティアのドレスのデザインでもしてろと一蹴されてしまう。憎い程美しいドレスを身に纏うリリアーナを見て悔しげに見つめてくる姿はルナティアそのもの。
アッシュが受付を済ませた後、通された会場にはリリアーナやルナティアと同じくらいの令嬢や公子達が沢山いつつも大人の貴族達もずらりといた。
それから壇上には国王と王妃、そして…王太子が
登場した。
そう…。今日は建国を記念としたパーティーだった。
前世、このパーティーでリリアーナは
婚約者でありながらも、王太子はルナティアと接しているのを見て般若を連想させるような怒りの表情をしながら怒鳴りつけるという醜態を見せたのが原因で自分の評判にもギーベンラート侯爵家にも泥を塗ってしまうこととなった。
国王と王妃が出たことで、会場は騒ついていたが、
王太子が現れたことにより特に令嬢達の騒がしさが増していった。
そして、沢山の令嬢達が王太子の前へ駆け寄っていく。
無論ルナティアも
「レディス様ー!」と言いながら沢山の令嬢が集まっている中に入っていった。
そんな中リリアーナは王太子の方に目もくれずに
少し離れた所で
主にギーベンラート侯爵家と交流のある貴族達と交流しつつもルドレッタと交流していた。
「お久しぶりです。ルドレッタ様。」
「久しぶりだな、リリィ嬢。」
美しいラベンダー色の髪を下ろし、紫色のスパンコールドレスを身に纏い色気溢れるメイクをしている女性
ルドレッタ公爵。
フィローメル公爵である彼女は威厳のある人であるが
リリアーナに対して何かと気にかけてくれる存在でありながら前世、味方の1人だった。
「どうだ?私が送ったドレスは。」
「とても良いです。こんなにも素敵なドレスをデザインしてくれて感謝いたしますわ。」
と言って、美しいカーテシーをする。
それを見て、ルドレッタは何かを思い出したかのような表情をしていたがすぐに表情を変えては
「そう、それなら良かった。」と言った。
それからルドレッタに
「少し疲れていないか?」と言われた。
「え?」
「長らく馬車にいた上に、慣れない靴を履いているだろう?」
「そうですね…」
感じていなかったが、そう言われれば少し体が少し重いような気がした。
「休憩室に行くか?もし良ければ私が案内するが。」
「本当ですか?ではお言葉に甘えて。」
そう言ってリリアーナはルドレッタに連れられて
休憩室に向かった。
休憩室に入って1つの長椅子に座るリリアーナ。
「では、私が公爵夫妻にここで休んでいることを伝えておこう。」と言ってルドレッタは休憩室から出ていった。
「ふぅ…。」疲れた声を吐き出したリリアーナ。
正直なことを言うと、パーティーには行きたくなかった。会いたくない人がいるから。
帰りたい所だが…そうにはいかない。
少し、空気を吸ってから気分を良くして休憩室を出ようと考え、テラスに出た。
「わあ…!綺麗な星空ね…。」
雲が一切なく、輝いているような星空を見て
うっとりしていれば…。
「リリアーナ?」とふと隣のテラスの先から
聞き覚えのある少年の声が聞こえる。
ふと隣を見てみる。
赤紫色の瞳と目が合う。
赤紫色の瞳に同じ赤紫色の髪を持つ少年は
たった1人しかいない。
「ネオ?」
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