22.やはりこの人は…。
「リリアーナ…!」
大きな扉が勢いよく開かれ、ぞろぞろと中へと入ってくる。リリアーナは誰が来たのかは予想はついていた。
扉の先から聞き覚えのある声が響いていた。
中へ入ってくれば、見慣れた容姿の人達が。
予想していた人物アッシュとクレアだった。
イリアスか、アレットがおそらく2人に連絡を入れたのだろう。そうではないとここに来ることないのだから。
勢いよく扉を開けてから中に入るなり
アッシュはリリアーナの元へ駆け寄ってきて
「大丈夫か!体は何ともないな!?」と心配そうに言っては頭を撫でる。
「…大丈夫ですわ。ご心配をおかけしてごめんなさい。」
と瞬時に貴族の笑顔を作り微笑むリリアーナ。
なんともないということで安堵したアッシュは
「そうか…よかった…っ」と言ってリリアーナを抱きしめた。
「…。」
前世での自分だったら、恐らくこんなふうに抱きしめられたらきっともう大丈夫ですから、泣かないで。と言いながら微笑んでいた。
けれど、今のリリアーナは抱きしめられたとしても
微笑むことはなくただ、離れてくれるまで待ち続けた。
(早く離して…。)
と強く願っている。
リリアーナはアッシュやクレアはもう家族ではなく他人と感じつつある。そう思ってしまうのはリリアーナだけにしか分からない。例え、前世の記憶がなかったと分かっているとしてもあの記憶は今世、死ぬまで忘れられない。
未だに、離れようとしないアッシュに何か言おうとした時だった。
リリアーナの様子を見て、安堵していたクレアだったが
すぐに怒りの形相に変えた。
ああ…。恐らくきっと…。と感じるリリアーナ。
「…リリアーナ、どうして危険なことを?」
「……」
期待しなくてよかった。
おそらく白狼を助けようと治癒魔法を使い、生死を彷徨ったリリアーナよりも…きっと。
「あなたが生死を彷徨っていると聞いた時
ルナティアは泣いていたのよ?」
……こんな時もルナティアが出てくるのか。
私が命の危機に陥ったとしても、この人はルナティアを贔屓しているんだ。
「もし、死んでしまったらルナティアが悲しむことが想像できなかったの?あなたは、その妹よりも白狼の方が大切だったのかしら。
早く答えなさいよ。」
ルナティアルナティアばかりと…。
そういえば過去に回帰したばかりの時から…私の名前を忘れているのかというくらいこの人は呼んでいない。
リリアーナは何か言おうとした。
それを遮るようにアッシュは
「やめなさい!クレア、リリアーナは目が覚めたばかりなんだから!」とリリアーナから離れて言う。
「この子は、命を危険に陥るくらいのことをしたのよ?
聞かないと気が済まないわ。」
と言いくるめられてしまいアッシュは何も言えなかった。
いつもそうだった。
前世、クレアに叱責され泣いていたリリアーナを見て
クレアを宥めようとしたけれどいつもクレアに言いくるめられていた。
そして今も。
リリアーナに「言ってくれないか?」というような顔をして見てくる。
ここで言わなければ、クレアにもっと刺激を与えて
逆上してくる可能性もある。
そう考えた時だった。
白狼が「グルル…!!」とリリアーナを守るように前に立ちクレアに向かって威嚇した。
それをクレアは「な、何なの?」と言ったのと同時に
「さっきからルナティア、ルナティアって呼んでるけどさあんたは、リリアーナを心配してないの?」
誰かがそう発した。
そう発したのは、腕組みをしながらクレアに視線を向けるネオだった。
突如としてそう発したネオに、リリアーナは
(え?)と心の中で発して瞬きを何度も繰り返していた。
ネオが発した言葉にクレアは驚いた様子で見た。
「それは、私達やルナティアを置いてあの世へ行くんじゃないかとルナティアが泣いて…。」
そう言うが、ネオはすぐさま論破した。
「なんでだよ。普通、命が危なかったリリアーナの方を心配するだろ?なのにあんたは泣いてるそっちの方を心配して、こいつを責めてさ。」
「…っ、公子様には関係の無いことでしょう!?
こちら側の話に入ってこないでくださる!?」
論破され図星を突かれ逆ギレをする
醜態を見せるクレアを見て
(お母様に刺激を与えてしまったわネオったら…!)
どうすればいいかと思考を巡らせていたら邪魔をするようにクレアがリリアーナの目の前にやってきては
肩に掴み掛ってきては
「さあ…!早く言いなさい!
どうして、命を犠牲にするようなことをしたの!?
死んでルナティアが傷つくとは考えなかったの!?
早く答えなさい!!」
耳に響く程の怒声で、そう言いながら
肩を強く揺さぶってくる。
(痛…っ)と感じていれば
白狼が、威嚇を強め、ネオは「おい!やめろよ!」と言いながらリリアーナの方へ向かおうとする。
けれどネオはアレットによって止められてしまった。
(早くこの人は鎮めないと…。)と思い
口を開こうとした瞬間だった。
ふと今いる空間全体が冷えているような気がした。
いや、冷えていた。冷えているからクレアの1本の髪が凍って硝子のような砕けていた。
「…!?な、何…!氷…!」
砕けたのと同時に吹雪が吹き始め
一体何がと思いながら、クレアとリリアーナは
吹雪が吹いている方を向いてみれば
イリアスが氷結魔法を発動させていた。
(え…?)と呆然とするリリアーナだが
クレアは
怒りはどこへ行ったのかと思う程に青ざめていた。
無意識にリリアーナの掴んでいた手が離れ
震えながら数歩後退る。
イリアスは軽蔑するかのような眼差しでクレアを見つめ
「…体調が良くなっているのを確認次第、そちらへ送らせると言ったのに言うことを聞かずに許可もなくこちらへ入ってきては、挙句にこの子を責め立てるとは…。
随分とふざけた真似を。」と言いながら
氷結魔法の威力を強めていく。
次にクレアの髪から、ドレスの裾が凍り始める。
「あ、ああ…!」と言いながら凍っていくドレスを見て震え上がるクレア。けれどイリアスは魔法を止めようとしなかった。アッシュは「イリアス様!お辞め下さい!」
と言って止めようとするもイリアスは構わず
氷結魔法を使い続ける。
それを見たアレットは(あーあ。イリアスを本気で怒らせちゃった。)と思いながら
ネオは(こ、怖…。)と顔を引き攣りながら
見ていた。
(まさか、お母様を凍らせて…!
…ダメ!)とリリアーナはすぐにイリアスの方へ駆け寄ってはふと右腕にしがみ付いた。
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