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15.イリアスのスパルタ指導・微笑む顔に隠された顔。

「おい、人が話している間に居眠りをするな。」

とイリアスが1冊の魔導書をネオの頭目掛けて振り下ろした。スパァン!と綺麗な音がリリアーナやアレットの所まで響き渡っていた。

「痛ってぇ!何すんだよ!」

「お前が、居眠りしているのが悪い。」

「なんだとぉ…?!」

とイリアスとネオの喧嘩している光景を遠目で見るリリアーナと愉快そうにしているアレット。


この光景が起こる数時間前

魔導書を片手に持ちながら入ってきたネオ。

リリアーナの姿を見て「ああ!お前!」と言いながら

近づいてきた。

「お前、あの時の!名前は…なんだっけ?」

「…。」

あの時、行ったはずなのに忘れてしまうとは呆れてしまうリリアーナ。仕方ないと思いながら

「リリアーナ・ギーベンラートです。」とまた自分の名前を言えば「ああ!そうだ!」と言って

「リリアーナだったな!

知り合いから、学んでるって言ってたけど

イリアスだったのか!」

「は、はい…。」

「偶然だな!俺もイリアスの所で前も言ったけど治癒魔法を学ぶことになったんだ!」

そう言いながら、自分の片手を無理やりリリアーナの手に握らせる。そうして笑顔で

「これから、よろしくな!」と口にした。

それをリリアーナは苦笑いをしながらも

「こちらこそよろしくお願いします…。」

そう言えば、アレットはニヤニヤとしている様子だったよほど彼のことが面白い人なんだ感じているのだろう。

アレットはともかくイリアスは

とんでもない人を教え子にしてしまったと頭を抱えながらもズカズカと2人の前にやってきては

ネオの手をリリアーナの手から引き離した。

「レディーに許可なく気安く触るのは無作法だぞ。ネオ・ルト・フィルア。」

「え?なんでだよ?イリアス。」

そうネオが言えば、イリアスはネオに向かって強烈な拳骨を食らわした。

「いってぇな!何すんだよ!」

「目上の人間に呼び捨てなど失礼だ。

私のことはイリアス《《様》》と呼べ

呼び捨てそれ以外の名では許さん。」

「はあ…肩苦しいなぁ。」

と喧騒な雰囲気になっている様子を止めなきゃいけないと思い近づこうとしたリリアーナだが、楽しそうに見ているアレットに「止めなくていいよ。やるだけやらせばいいさ。」と言われてしまった。


そして今。

未だに、最初の時と同じように喧騒な雰囲気になりながらもイリアスはネオに治癒魔法を教えていた。

今は擦り傷などに効果のある治癒魔法をイリアスはスパルタながらにネオに叩き込んでいた。

そしてまた、ネオが居眠りをすればイリアスからの魔導書叩きが繰り出されまた喧騒な空気になる。

2人を見て楽しそうな顔をしつつアレットは、リリアーナと一緒に浮遊魔法の実践をしていた。

前世の記憶があるおかげか、難なく浮遊魔法を習得したリリアーナ。

「すごいねぇ。8歳で習得できるなんて。」

「は、はい、一応飲み込みが早いので。」

それからは、時空巻き戻し魔法の解読をアレットと一緒に試みた。アレットからこれはこういうことだよ。と教わりながらも解読していきながらもふとネオの方を向くリリアーナ。さっきの治癒魔法は習得したのか次の治癒魔法を叩き込まれている様子だった。

(さすが。剣術を極めてるから飲み込みが早いのね。)

そう思っていると。

「…君って、斬新だね。時空巻き戻し魔法の解読をしているなんてさ。」

アレットから不意にそう言われ慌てつつも

「は、はい…。気になっている魔法でしたので。

(言えるはずがない…。自分が巻き戻ることができた魔法かもしれないからと調べているなんて…。)」

本音を笑顔で隠しながらアレットにそう口にするリリアーナ。

しばし、沈黙が流れた後に

アレットは「…ふうん。そうなんだ。」と言った。

「…?」

リリアーナは見逃していなかった。

ニコニコしているアレットが突然真顔になった瞬間を。

無のような感情になった真顔にしばしビクリとしてしまったリリアーナ。

がすぐに、ニコニコとした顔に戻り

「じゃあ、続きをしようか。」と言って魔導書の方を向く。

「は、はい。」そう言ってリリアーナも魔導書の方へ視線を向けて羽根ペンを手に取った。

(一体…どんなことを考えてあのような表情をしたのかしら…。)

時空巻き戻し魔法の解読を進める中で、

リリアーナの手はふと止まった。

ずっと頭を使いながらも解読し続け

疲労で頭が痛かった。

そんな中ペン先で指し示したのは、終盤のページ。

大きな時計の図が、反時計回りに刻まれている箇所だった。

「この部分……やっぱり普通の魔法じゃないですよね?」

そう問いかけると、アレットは少しだけ目を細め

顎に手をやる。

しばしの沈黙の後アレットは口を開く。

「うーん……そうだねぇ。」

変わらない軽い口調。

けれど、その視線だけが妙に鋭かった。

「これは“時間干渉系”の魔法だよ。」

「時間……干渉……?」

リリアーナの鼓動が一気に速くなる。

時間干渉という言葉を初めて聞いたのだ。

「簡単に言えば、“時間に触れる魔法”。

でもね——」

アレットはそこで言葉を切り、にこりと笑う。

「普通の人間が扱えるものじゃない。」

淡々と告げるアレット

その言葉に、リリアーナは思わず息を呑む。

「この魔法ね、使うには“条件”があるんだよ。」

「条件……ですか?」

「うん。しかもかなり厄介。」

そう言いながら、アレットはページを指で軽く叩いた。

「まず、“膨大な魔力”。

それと——」

一瞬だけ、言葉を選ぶように沈黙する。

「“対価”。」

「対価……?」

その単語に、リリアーナの背筋がぞくりと震えた。

「時間を巻き戻すってことはね、世界の流れを無理やり捻じ曲げるってことなんだよ。」

軽い調子で言っているはずなのに、言葉の重みだけが異様に響く。

「そんなことをするなら、何かを差し出さないと釣り合わないでしょ?」


(差し出す……?何を……?)


そこまで考えた瞬間


「おい!イリアス!!これで合ってんのか!?」

ネオの大声が空気を破壊した。

「違う。詠唱が雑だ。やり直せ。」

「またかよ!!」

バチン!!とまた魔導書の音が響く。

「痛ってぇ!!」

口喧嘩をしている

そのやり取りに、思わずリリアーナは肩の力を抜いた。

(……空気が重くなりすぎたわね。)

ちらりとアレットを見ると、すでにいつものニコニコ顔に戻っていた。

「続きをやろっか。」

「……はい。」


リリアーナは少しだけ確信を持った。

恐らく時が戻ったのは

誰かがこの魔法を使った可能性があること。


(だったら…一体)

(誰がこの魔法を使ったというの?)


一体、誰が対価を払い

誰がそんな魔法を使ったのか

同時に疑問も溢れてきた。





読んでいただきありがとうございます。

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