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Paradise Sixth ―楽園適性試験―   作者: 針々
第四章

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26/27

Stage4-2 勝者への洗礼。



「出てきたぞ、1st ギルド《黒猫の宵》だ!!」

坊主頭のプレイヤーの一言を皮切りに、プレイヤーがざわつきだす。



「まじで?こいつらがこ(・)の(・)よ(・)い(・)?」


「なんか、フツーの奴らだな…」


「え、そう?ちょっとカッコ良くない?」


(僕のことかな?なかなか見る目があるじゃないか…)


プレイヤー達の視線が一気に僕達に集中する。

まるで動物園のパンダになったみたいだ…。



「はぁ?何で急に有名人になってるんだよ!?」

突然の展開に、樹が素っ頓狂な声を上げる。


その疑問を聞いた木下さんは申し訳なさそうに口を開いた。

「実は、今日の0時にギルドランキングが公開されたんです……。

 そこで、一位――つまり《1st Guild》として表示されたのが、《黒猫の宵》だったんです。」


(ギルドランキング…)


その単語を聞き、数日前に《白のカルミア》のリーダー鳳との会話を思い出した。


⦅我々のギルドがどれだけ優れているのか、

 このクエストが終われば、おのずと答えは出る。⦆


(あの言葉は、こういう事だったのか!)


過去の疑問が一つ解消した。

だが同時に、新たな疑問も生まれる。


(これは、もう一度鳳に聞く必要があるな…

 でも、今はそれより…)



「こ(・)の(・)よ(・)い(・)!お前ら一体どんな方法使ったんだよ!俺達にも教えてくれ!」


(このよい?…あぁ、くろねこのよいで、このよいね…)


「キャー、かっこいい!!」


「俺達と一緒にクエスト行こうぜ!」


四方八方からの賞賛、絶賛の声で、何が何やら分からない…

プレイヤー達は僕達の近くにごった返し、もみくちゃにされる…


(多分これ、フロア3のボスのアイテム聡取りしたからだ…)


(そういえば、優が言ってたな…悪いことをすると神様が見てるって…)


どうやら、神様は思ったよりも暇だったらしい。

僕は今日から神様を信じることに決めました。

体中をもみくちゃにされながら、僕はそう思った…


===============================================


50人ほどのプレイヤー達に、矢継ぎ早に質問やクエストの誘いを受けていたが、

さすがに一時間ほど無視を決め込んでいると、ギャラリーも流石に飽きてきたのか、

一人、また一人と僕達から離れて行く…


早々と無視を決め込んでいた僕と聡の元にはもうほとんどプレイヤーはいない、

だが、戸惑いながら一人一人の質問に丁寧に返している優と樹を中心に、

まるで台風のような人だかりができている。


離れている場所から話しかけるタイミングをずっと伺っていた木下さんが、

今が好機と近づいてくる。


「あの…」

申し訳なさそうに僕と聡に話しかけてくる木下さん。


「さっき君が言った言葉から、

 この騒ぎは君のせいってことで間違いないよね?」

つい、少し責めるような口調になってしまう。


「はい…すみません…」

木下さんは申し訳なさそうに顔を伏せている。


「ギルドランキングに載っているのは、ギルド名とメンバーの人数のみ、

 個人を特定することは出来ないのに、彼らが僕達を《黒猫の宵》と知っていたということは…」

聡が答え合わせをするように、木下さんに話しかける。


「はい……私が、他のプレイヤーに話してしまいました……」


「「…………」」

正直、呆れて開いた口が塞がらなかったが、昨日、見ず知らずの人たちに名乗ってしまった自分たちにも非はある。


EDENプログラムは、名目上は試験だ。

ギルドランキングのような中間成績がプレイヤーに告知されるのは、至極当然なのだろう。


(詰めが甘い……はぁ……)


「今朝、朝食を食べているときに、他のギルドのプレイヤーとギルドランキングの話になって……思わず自慢をしてしまいました」

木下さんは顔を上げ、必死に弁明する。


「でも、信じてください! こんなことになるなんて思ってなくて……」


「本当に、ごめんなさい!」

深々と頭を下げる木下さん。


俯いているから表情は見えない。

まさか、内心で舌を出している……なんてことはないだろう。

一生懸命に謝られてしまうと、

さすがにこれ以上責める気にはならなかった。


「まあ、悪気があったわけじゃないんだし、もういいよ」

聡が口を開く。


「そうそう、ちょっと有名人の気分も味わえたしね(笑)」


フォローついでにボケてみたおかげもあってか、

少しだけ木下さんに笑顔が戻る。

「ありがとうございますっ!!

 何か困ったことがあったら何でも言ってください!

 私頑張ります!!」

ガッツポーズをして意思表示する木下さん。

その一生懸命な姿は、なんだか応援したくなるものだった。


「分かった、馬車馬のように働いてもらうからね!」


「任せてください!!」

そう言い残し、木下さんは《ハルモニア》が待つ宿屋へ戻っていった。


(とは言ったものの…どうしたもんか…)


優と樹は相変わらずプレイヤーに囲まれている。

先ほどよりかは数は減ったが、解放されるにはまだ時間がかかりそうだ…


(しょうがない、時間つぶすか…)


日陰に座り込み、システム画面を開く


(えっと、ギルドランキングは…っとこれだ。)


EDENに来て初めてのギルドランキング画面を確認する。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

GUILD RANKING


YOUR GUILD

《黒猫の宵》 RANKING 1st


RANK GUILD        MEMBER

────────────────────

001 《黒猫の宵》      4

002 《白のカルミア》    5

003 《鬼蜘蛛ノ糸》     4

004 《Silver Wings》    113

005 《Queen's Board》   5

006 《Blue Horizon》   14

007 《祭囃子》       5

008 《陽炎》        52

009 《Hex Hive》     33

010 《Night Owls》     20


     ・

     ・

     ・


060 《olive branch》    5

061 《白夜》        25

062 《林檎飴》       8

063 《Wild Rose》     9


     ・

     ・

     ・


990 《焼きそば同盟》    18

991 《葡萄畑》       3

992 《寝落ち常習犯》    47

993 《ひと狩りいこうぜ》  6

994 《桃源郷》       8

995 《ひだまり》      2

996 《禁断の果実》     6

997 《猫パンチ》      5

998 《明日から本気出す》  13

999 《Gravefeed》     4

1000 《素材集め隊》     21

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(本当に一位になっとりますやん…)


ギルドランキングを下までスクロールすると、1000位でページは終わった。

どうやら、ランキングに載るのは1000ギルドまでらしい。


画面のトップページには、自分たちの現在のランキングも表示されている。

1000位以内に入れなかったギルドは、ここで自分の順位を確認するらしい。


(こうしてみるといろいろなギルドが出来てるな…)

(《白のカルミア》《Queen's Board》《祭囃子》 は流石に上位か…)


(ランキング3位《鬼蜘蛛ノ糸》……物騒な名前だな)

(……いや、待てよ。《黒猫の宵》も人のこと言えないか…)


(《olive branch》…平和の枝ね…果たしてどこまで生き残れるのか…)

(《焼きそば同盟》 結構やるじゃん!、《猫パンチ》 …かわいいな…)


バリエーション豊かなギルド名を眺めて楽しんでいると、

ふと、一つのギルドに目が留まる。


(999位のギルド…これは《Gravefeed》? …直訳すると、墓の餌…か?)


(…………)


しかし、ランキングを眺めていると、

すでに100人を超えるギルドまで存在していることに気づいた。


(100人ってすごいな…)


プレイヤー達の団結力の高さに驚きつつ、同時に一抹の不安が頭をよぎる。


(このランキング…

 NOAは勝ち上がる誇りと落ちる恐怖の両方をプレイヤーに突きつけるつもりか…)


この先、AIとプレイヤー、プレイヤーとプレイヤー

どんな戦いが待っているのか…

その答えを知っている者は、この世界には誰もいないだろう。



しばらくすると、人ごみから解放された樹が僕達のもとにやって来た。


「いや~、まじで参ったわ。」

頭を掻きながらそういう樹の顔は、少しだけ嬉しそうだ。


「あさイチから災難だったね…」

ねぎらいの意味も含めつつ、樹に言葉を返す。


「なんかさっき、プレイヤーの一人に聞いたんだけどさ、

 この村から一時間くらいのところに、エーベン村っていう村があるらしい。

 そこは結構でかくて大半のギルドはそっちにいってるらしいぜ!」


「意外、ちゃんと情報収集してたんだ…」

樹はそういう事に疎いタイプだと思っていたので、

つい驚きが口に出る。


「俺だってちゃんと成長してるんだよ!」

樹は胸を張り、どや顔で答える。


「じゃあ、優を拾って、移動しようか…

 移動すれば、騒ぎも収まるでしょ…」

聡の提案に、僕も樹も頷き、

いまだにプレイヤー(主に女子)に囲まれる優を拾いに行った。



============================================


ライココット村から一時間弱歩くと、エーベン村に辿り着いた。

途中、先日のカミキリムシモンスターや兎型モンスターとエンカウントしたが、

今の僕達の敵ではなく、全て一蹴した。


村が近づくにつれ、畑の数より家屋の数が少しずつ増えていく。

エーベン村は、ライココット村よりは多少栄えており、畑よりも人家が若干多いといったところだ。

とはいえ、フロア3のフォルクシュタインと比べると、まだ田舎という評価が妥当だろう。


「さて、これからどうしようか?」

街の様子を眺めながら、優が全員に聞いてくる。


「とりあえず、ボスに関する情報を集めるために、サブクエストでも受けようか?」

まだこの村に着いたばかり、右も左もわからないため、なんとなく方針を出してみる。


「そうだな~、ちょっと村を回ってみるか……」

樹はそう言うと、軽く伸びをした。

「まずは、でかい建物とか人が集まってそうな場所を探すか」


歩き出した樹に続く。

道すがらすれ違うプレイヤーの中には、見覚えのある顔がちらほらある。

だが、こちらに気が付く様子はない。


(この村ではまだ顔は割れてないみたいだな…)


その事実にほっと胸をなでおろし、のんびりと村を見て回る。

困っている表情を浮かべたNPCは沢山いるが、

一人ずつクエストをこなしていくのは大変そうだ…


入り口から村を半周し、出口に差し掛かったあたりで、

プレイヤーたちが人だかりを作っているのを見つけた。

その中の一人と目があう。

その人物は一瞬、苦虫を嚙み潰したような表情を見せ、

一呼吸置いた後、こちらに歩いてきた。


「やあ、君たちもこのクエストをうけるのかい?」

《白のカルミア》のリーダー鳳悠真は、

いつもの薄っぺらい笑顔を浮かべ、そう話しかけてきた。


「鳳君、クエストって?」

優が素朴な疑問を鳳に投げかける。


「どうやら、あそこにいる麗しい女性がクエストの鍵を握っているらしい。

 詳しくは、近づけば分かるよ。」

鳳は僕達に親切に説明する。初めて会った時とは大違いだ…


鳳の後に続き、人だかりの中に向かう。

すでに集まっているプレイヤー達の背中越しに、

人だかりの中心にいるNPCの姿を見た。

その人物は、

雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀(こくたん)のように黒い髪を持っていた。

それはまるで――


「白雪姫?」

優が僕の心情を引き継ぎ、声を漏らす。


そのNPCがこちらを振り向き、僕と目が合った瞬間、

クエストのポップアップが開いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『白雪姫と7人の小人』


依頼主:白雪姫


どうやら最近、何者かにつけ回されているらしい。

魔女の森にある目的地まで護衛してほしい、とのことだ。


【参加人数】

 1~


▼Objective

・NPC:白雪姫の護衛

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「これって…」


「気が付いたようだね。どうやらこのクエスト、参加人数に上限はないらしい。」

鳳が、僕が心で思っていた疑問を代わりに言葉にしてくれる。


「まじか!なら絶対大勢でやったほうがいいじゃん!」

樹が素直にもっともな意見を言う。


「うん、我々も正直それが良いと思っている、

 護衛を何層かの隊列に分けて行えば、成功する確率も上がるだろうと…

 そこでどうだろう、君たちにも参加してもらいたい。」

驚くべきことに、鳳が僕達にお願いをしてきた。


「…………」

あまりの驚きに絶句してしまう…


「も、もちろん、皆もいいよね?」

優は、皆と目くばせをし、絶句している僕の代わりに

鳳の要請に答える。


「ありがとう、感謝する。」

深く礼をする鳳。


「では、こちらに来てくれ。」

鳳は顔を上げると、僕たちを人だかりのすぐ近くまで誘導した。

そして、プレイヤーたちの前に立ち、

さも自分が取り仕切っているかのように場をまとめ始める。

 

「皆聞いてくれ、今回のクエストは―――」



30分後、鳳の指示を受けたプレイヤー達は、

白雪姫を中心に、約100人の10層の隊列で護衛を開始した。


白雪姫に一番近い円は《白のカルミア》の5人、

そして2番目に近い円は僕達《黒猫の宵》そして、

《Blue Horizon》から5名が参加し担当した。


魔女の森は昨日クエストを行った穿ちの森とは違い、

太陽の光が全く降り注がない、時刻は昼過ぎなはずなのに、

夕暮れのような暗さだった。


「なんて不気味な森なんだ…」

そう独り言を呟くのは、ギルド《Blue Horizon》のリーダー蒼井宗也(あおいそうや)

僕の左隣を歩く彼は、両手に槍、重厚な鎧、重そうに見えるその装備一式を身に着けてもなお軽々と動く。

角刈りに、少し老け顔といった見た目、高校生ながら貫禄がある。


「皆さん!何か気配を感じます。気を付けてください。」

隊列の中心にいる白雪姫がプレイヤー達に注意喚起を行う。


その時――


「うわあああ!」

一番外側を護衛しているプレイヤーの悲鳴が聞こえる。


「落ち着け!外側の部隊は何が起こっているのか報告しろ!」

動揺するプレイヤーに向けて鳳が大声で指示を飛ばす。


よく目を凝らして見ると、端からプレイヤー達が倒れて行っている。

しかもそれは、一方向だけではなく、四方八方も同様な状態だ。


(何か、小さい奴が来る…)


その小さな影の全貌が見えたのは、

僕から10mの距離に近づいた時だった。


その影は、体長はおよそ50㎝、

赤色のフードを纏い、口には白髭を蓄えている。

手にはつるはしを持っており、

NPC名は…《The Seven Chasers》


挿絵(By みてみん)



(7人の追跡者…7人の小人か!)


もう目の前まで迫っている小人は、

つるはしを次々にプレイヤーに打ち込む、

攻撃を受けたプレイヤーは、みるみるうちに地面に倒れ込んだ。


そして、ついに僕の目の前まで小人が到着した。

暗い森の中で見るつるはしは、闇を反射し、黒光りしている。


腰の鞘から引き抜いた《サーベル・オブ・カーディナル》の剣先を小人に向ける。

小人の動きに注意しつつ、剣のグリップを強く握りしめた

その瞬間ーー


「ケケッ!」


つるはしを構えた小人が飛びかかってくる。

右手のサーベルに力を込めて、迎撃!


《キンッ!》


つるはしとサーベルが交差し、

金属が衝突した際に発生する特有の金切り音が鳴り響く


その衝突で僕が護衛の外側、小人が護衛の内側の位置取りになった。

小人も僕も、お互い体勢を立て直し、追撃…

と思ったが、小人は僕には目もくれず、護衛の内側をめざして進む。


(しまった!こいつら、僕たちのことなんて最初から眼中にないんだ…)


(っ!僕のバカ、このクエストは白雪姫を護衛するのが目的じゃないか!!)


そう思考を巡らせる間にも、

小人は最後の壁である《白のカルミア》のメンバーを飛び越え、

白雪姫の元まで到着した。


その時にはすでに、白雪姫の近くには他の6人の小人も集結していた。


「止めろ!!」

鳳が叫び、盾を投げる。


優が駆ける。


樹が両手剣を振り抜く。


僕も地面を蹴る。


届け――!


(間に合う。)

(いや、間に合え。)

(あと一歩――)


白雪姫は必死にこちらへ手を伸ばしている。


「助け――」


その声が最後まで紡がれることはなかった。


七本のつるはしが、一斉に振り下ろされる。


ゴッ。


ゴッ。


ゴッ。


赤いダメージエフェクトが幾重にも弾け、

白雪姫のHPバーが、一瞬でゼロまで削り取られる。


彼女の身体は光の粒となって崩れ落ちた。


その場には、静寂だけが残る。


誰一人、声を出せなかった。



システムメッセージだけが、無機質な音と共に表示される。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『白雪姫と7人の小人』



【クエスト失敗】



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




こうして僕達は、この世界に来て初めて、クエストに失敗した。








































 

 


















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