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Paradise Sixth ―楽園適性試験―   作者: 針々
第四章

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25/28

Stage4-1 嫉妬は喝采の中で。

【主要登場人物】



{ギルド 黒猫の宵}


一条(いちじょう) 玲(れい) ※旧姓 影原(かげはら) 玲(れい)

少しひねくれた性格だが、優れた観察力と発想力を持つ。

攻略の糸口を見つけることを得意とし、

所属するギルド『黒猫の宵』の仲間を何より大切に思っている。

合理的な面があり、時に非情な手段も辞さない。


日向(ひなた) 優(ゆう)

おおらかで誰にでも優しい人格者。

玲の幼馴染であり親友。美少年。



立花(たちばな) 樹(いつき)

大雑把だが場を明るくするムードメーカー。

時折、誰も思いつかない発想を見せる。



佐々木(ささき) 聡(そう)

冷静沈着な分析役。

チームの頭脳として黒猫の宵を支える。



{ギルド 白のカルミア}


鳳(おおとり) 悠真(ゆうま)

《白のカルミア》のリーダー、人を束ねるカリスマ性を持つ。

度々玲と衝突するが、フロア3攻略の際、少しだけお互いを理解する。


{ギルド Queen's Board}


九条 かぐや(くじょう かぐや )

第一フロアのボスを討伐した実力者。

剣技・頭脳ともにトップクラス。


神宮寺 つかさ(じんぐうじ つかさ)

天真爛漫な美男子系女子。

なにやら、現実世界での玲を知っているよう。


{ギルド 祭囃子}


桜木(さくらぎ) 龍二(りゅうじ)

岸和田工業高校。時代錯誤なリーゼントが特徴的。

リーダーシップがあり、器が大きい。



【これまでのあらすじ】

全国の高校二年生を対象とした適性試験《EDENプログラム》。


玲たちはフロア3「Kingdom's Discord」にて、

仲間たちと協力しながらフロアボス・チェリー卿を討伐した。


戦いの果てに、お助けNPC・ダルタニャーとの別れを迎える。

そして彼は最後の贈り物として、五人のチームの名――『黒猫の宵』を玲たちへ託した。


託された想いとともに、四人は次なる舞台・フロア4へ足を踏み入れる。


世紀歴20×0年4月16日 8時35分 フロア4 穿ちの森



フロア3からのゲートを潜り、フロア4へと到着した僕たち――《黒猫の宵》。


僕達が出たのは、うっそうと茂る、森林の中だった。


「フロア4は森か~、いままで都市が多かったから新鮮だな…」

今の自分の感想を独り言のようにつぶやき、他の面々を見る。

5人だったはずの隊列が、今は4人になっている。


「さ、さびし~~」


「ダルタニャー…」

樹、優はダルタニャーとの別れをまだ受け入れ切れていないようで、

気分が沈んでいるようだ。


視界の端に映る、5本あったはずのHPバーも、今は4本しかない。


(まあ、5人パーティーがしっくりきてたところだから、

 僕も違和感がぬぐえないけどね…。)


優、樹に続いて、最後に聡へ目を向ける。

彼はもう気持ちを切り替えたのか、新フロアを観察していた。

森へ向けられた横顔からは、今何を考えているのか読み取れない。


僕も聡にならって周囲を見渡す。

ほとんど同じタイミングで、フォルクシュタイン城の中庭からゲートを抜けてきた冒険者たちが、

あちこちで立ち止まり、思い思いに周囲を確認している。

中にはすでに進路を決め、森の奥へ歩き始めたパーティーもいた。


「とりあえず街に行って、地図を買わないと…

 でもどの方向に行けばいいのか…」


(ダルタニャーがいれば、地図は準備しなくてもよかったんだけどな…)


「ねぇ、どうする?」


3人に尋ねる。

しかし、優と樹は相変わらず気落ちしたままで、返事はない。

唯一、聡だけが僕の問いに答えた。


「林道の向こうに、煙が上がっているのが見える。

 あそこに行けば村があるんじゃないかな?

 プレイヤーの何人かは、それに気付いて方向を決めてるみたい。」


なるほど、言われてみると確かに森の向こうに煙があがっている。


「よし、とりあえずあそこを目指すか!」


「そうだね。」


先行するプレイヤーに続いて、僕と聡は歩き出す。

その後ろを、肩を落とした優と樹がとぼとぼとついてくる。


(ムードメーカーの樹と、話の橋渡しをしてくれる優が喋らないと、静かだな…)


先行するパーティーと付かず離れず、森の中を進む。


誰も口を開かないまま、しばらく歩く。


「心配だ~」

優がポツリと声を漏らす。


「ダルタニャーなら大丈夫だって。もう一人じゃないんだし。」

またダルタニャーのことを心配しているのかと思い、すぐに返事をする。


「違うよ…僕が心配しているのはチェリー卿のアイテムを根こそぎ奪ったことだよ…」


「大丈夫だって。

 九条さんや桜木達も、ちゃんと報酬には満足してたじゃん。」


「それはそうだけどさ…

 悪いことをすると神様が見てるんだよ?」

優は人差し指を立てると、お母さんが子どもを叱るような口調で言った。


「神様だってそんな暇じゃないって、

 ていうか大体ウチ無宗教だし(笑)」


「まったく…」


(どうやら呆れられてしまったようだ…)


「まあ、今心配しても仕方ないんじゃね?

 なるようになるって。」

故意かどうかは不明だが、樹がフォローを入れてくれた。


煙の上がっている場所までは、まだ結構ありそうだ。

そう思いながら何となく周囲の木々を眺める。

ふと目を凝らすと、何本かの木にバスケットボールくらいの穴が開いている。

それも綺麗な正円だ…


(キツツキ?にしては大きいか…)


そうこうしているうちに、森が開け、小さな村に到着した。

これまでのフロアとは異なり、一面畑の風景で、

電気などとても通ってなさそうな、いかにも農村といった感じだ。


村の入り口に掛けられている立て看板が見える。


「ライココット村か…」


村に入り、まずは地図屋を探す。

村人NPCたちが畑を耕したり、魚を運んだりしている。



==============================



村自体は小さく、一周するのにそれほど時間はかからなかった。

だが、地図屋の表記は見当たらない…


「あれ~?フロア1ではそこら中にあったけどな…」


「お、あれじゃね?」

樹が店の方向を指さす。


その先には、店先に見慣れぬ果実や野菜を並べている店が。


「八百屋さんなんじゃないの?」

形はバナナ、色はリンゴの謎の植物を指さしながら優が答える。


「でも中にプレイヤーいるよ。」

店の中を覗き込んだ聡が答える。

そう言うと、聡は迷わず店の中へ入っていく。

僕たちもその後に続いた。


店には、防具や回復ポーションなどあらゆるアイテムが置いてあった。


(なるほど、何でも置いてある雑貨屋みたいな感じか。)


勘定場には白髪と白髭を蓄えた腰の曲がったおじいちゃんNPCが立っており、

僕たちより先に店にいたギルドが、地図を購入していた。


「ありがとうねぇ~」


「ありがとうございました!」

店主のおじいさんNPCに対して、素直で礼儀正しい挨拶をする男性プレイヤー。

髪はスポーツ刈りのように短く整えられており、

イケメンというわけではないが顔立ちも程よく整っている。


(まあ、僕には負けるかなw)


心の中で勝手に勝負を始め、勝手に勝利宣言をしていると、

そのプレイヤーとふいに目が合った。


「こんにちは! 君たちも地図を買いに来たのか?」

男性プレイヤーは、人当たりの良い笑顔で話しかけてくる。

見ると、隣には男性が一人、女性が二人。

どうやら、世間でいうリア充パーティーらしい。


僕は、彼からの質問には口を開かなかったため、

代わりに優が挨拶を返す。

ちなみに無視したわけではない。

知らない人とは話してはいけない――影原家の家訓(※小学生時代の)を、律儀に守っただけである。


「こんにちは!そうです、さっきこのフロアに来たばかりなので。」

いつも通りの爽やかな笑顔で優が答える。


「俺たちはギルド《ハルモニア》。

 俺はリーダーの藤井陽斗(ふじい はると)。

 こっちがギルドのブレイン、西村恒一(にしむら こういち)」

藤井に紹介された眼鏡の青年は、軽く頭を下げた。

冷静そうな雰囲気をまとっている少年といった印象だ。


「まとめ役の中野美優(なかの みう)」

茶髪のセミロングの女性が、柔らかな笑顔を浮かべる。


「そして、ギルドのムードメーカー! 木下彩花(きのした あやか)!」

最後の女性は明るい声で名乗ると、こちらへ笑顔を向けた。


(リーダーとまとめ役は別なんだ…)


「俺達、高校では同じ吹奏楽部のメンバーだったんだ。

 そっちは?」

こちらにも自己紹介をするように藤井が促してきた。 


「僕達はギルド《黒猫の宵》それで僕が――」

その後、優が僕達の分まで紹介してくれたため、声を発さずに済んだ。



おじいさんNPCから地図を購入した僕達は、一旦店の外に出ることにした。

店の前では、先ほどの《ハルモニア》のメンバーが何か話し合っていた。


すると――


「なあ!」

店を出た瞬間、藤井陽斗が僕達を待っており、再び話しかけてきた。


「俺達、これからこの村でクエストを受けようと思うんだけど、

 よければ一緒に受けないか?」


「だって、みんなどうする?」

藤井の提案を聞いた優が、僕達に意見を求める。


「昨日の今日でボス戦するわけないし、サブクエストを受けるのもいいんじゃね?」

やっといつも通りの調子になった樹が軽い調子で同意する。


「別にどっちでも。」

聡もいつも通りだ。


「玲は?」


(うーん、正直、夜通しボス戦だったから疲れてるんだけど……

 でも、仲良し男女4人組の、恋愛でのいざこざとか見れたら楽しそうだし…それに…)


(一人欠けただけなのに、妙に落ち着かない。

 ちょっとは気晴らしになるか…)


「いいね、やろうか!」

半分邪な考えで提案に乗った。


=============================


《ハルモニア》の4人と共に、村の外にでる。


「今回のクエストは、村周辺の森にできた木の傷の調査だ。」


藤井が手元のクエスト画面を確認しながら説明する。


「この村は林業が盛んらしい。木は村にとって大事な資源だから、原因を突き止めてほしいって内容みたいだ。」


(傷…あの正円の穴のことか…)


「傷ってどんな?」

ギルドのムードメーカー役らしい木下さんが藤井に尋ねる。


「それは森に入ってみれば分かるって言ってたけど…


 あっ!!」

藤井は一本の木に向かって指を指す。

そこには、先ほど僕も見つけた、大きな穴が開いた木があった。


「これは大きい穴だ…、しかも綺麗な正円…とても自然にできたものとは思えないな。」

《ハルモニア》のブレインらしい、西村がそう呟く。


「で、これからどうするの?」

中野さんがこれからの行動について、皆に聞いてくる。


「そうだな、森の中に入ればもっと傷が見つかるかもしれない、

 少し奥まで入ってみよう。」

藤井の提案に皆頷き、さらに森の奥に入っていく。


MAPでこの森を見てみる、名前は《穿ちの森》


(穿つっていうと、穴をあけたり貫くって意味か…………そのまんまだな!)


MAPと実際の地形を見比べながら、奥へ奥へと進んでいく。

森の中は、木が日光を防ぐことで、昼間にも関わらず薄暗い…

しばらく歩くと、先ほど歩いていた林道よりも、穴が開いている木が多くなってきた。


そして突然、高く太い木々に囲まれた空間が現れる。


「見ろ、ここにある木のほとんどに穴が開いてるぞ。」

藤井が声を上げる。


「うん?なんか音聞こえねぇ?」

木を近くで観察していた樹が何かに気が付いたようだ


「皆一旦静かにして!」

何かに気が付いた聡が突然、静かにするように指示を飛ばす。


⦅カリカリ…⦆


何の音だろう?鋭いもので何かを削っているような音が聞こえてくる…


(どこから聞こえてきてる…?)


聡は慎重に木へ近づくと、幹へ耳を当てた。


「木の中から聞こえてくる…

 それに、よく見ると、ここら辺の木はほとんど広葉樹だ…」


(広葉樹……?

 たしか葉の形で分類される木の種類だったはずだ。)


「音がするのは全部同じ木………皆、木から離れて!」

聡の一声で、8人全員が広場の中心に集まる。


よく耳をすますと、四方八方の木の中から音が聞こえる…


(まさか…)


すると突然、僕の右斜め横にある木から、

何かが弾け飛ぶような音が響いた。


バキッ!


次の瞬間、木くずと共に黒い影が飛び出す。


現れたのは――


体長50cmはあろう巨大なカミキリムシのモンスター。

硬そうな外殻に覆われた身体。

黒い外殻には、青い模様が散らばっている。

鋭い顎が木片を噛み砕く音を響かせながら、こちらを向いた。


挿絵(By みてみん)


NPCネームは《Ironjaw Longhorn》


(鉄の顎を持つカミキリって感じか)


触覚が不気味に上下し、口元のハサミがギラつきながら開閉している。


正直、この大きさの節足動物は…


(気持ち悪い…)


バキッ!


バキッ!


バキッ!


周囲を見渡すと、次々と木の中から姿を現すカミキリムシ型モンスター。


バキッ、バキッという木が砕ける音が森中に響き、


気が付けば十体以上の《Ironjaw Longhorn》に囲まれていた。


(まじか…こいつ絶対飛ぶタイプだよな…)



「「キャーーー!」」

モンスターの姿を見て、叫び声を上げる女子二人。


その声に反応した《Ironjaw Longhorn》は一斉に、二人の方向を向いた。


「「ヒィィッ!」」


さらに叫び声を上げる女子二人。


「二人とも落ち着け、お互いの背中を守り合うんだ。」

取り乱す2人の女子をよそに、的確な指示を飛ばす藤井。


その指示に従い、女子2人を囲むように、隊列を組む。


じりじりと近づいてくる、カミキリムシ型モンスター

そのうちの1匹が、こちらに向かって飛び込んでくる。


(試し切りには丁度いいか…)


チェリー卿を討伐したことで得た、新たな装備。


《サーベル・オブ・カーディナル》


腰のさやから引き抜く。

刀身が木漏れ日に照らされ、鈍い光を放つ。


フロア3まで使っていたファストブレードより少し重い。

両刃ではなく片刃。扱いは難しい――。


(だけど…)


右手に強く力を込める。


《スラッシュ》


サーベルが眩い青色のエフェクトを纏う、

一歩踏み込み、モンスターの軌道に合わせて剣を思い切り振り抜く。


モンスターの顎とサーベルの刃が交わる。

サーベルの刃は、モンスターの鋭い顎すら容易く断ち切り、

モンスターの身体を、顎から尻まで一直線に切り裂いた。


そして―破裂。


(初期スキルでこの威力……想像以上だ)


「皆、行くよ!」

他の《黒猫の宵》の3人も一斉に駆け出す。

数では負けていても、動きは単調だ。


(この程度のモーションなら、もう負ける気はしない。)


背後から羽音が聞こえる。

こちらにギリギリ接近するその瞬間。

スキルアタック《クロス・リタレーション》を発動。


刃でモンスターの顎を受け止め、その反動で反撃駆動が発動…

瞬間――カウンターが発動。


その勢いのまま、顎から頭部へ斬り上げる。


残された体はしばらく地面に転がり、やがてポリゴンとなって消えた。



数の有利が崩れたら、そこから先は一瞬だった。

一人につき一~二匹を相手取る形となり、

さらに《ハルモニア》も加わったことで

《Ironjaw Longhorn》の群れをあっという間に倒した。


初めて振るうサーベルは、驚くほど手に馴染んでいる


(この剣があれば、もっともっと強くなれる!)


僕はそう確信した。


===========================================


「本当に驚いた、君たち凄いな……」

戦闘を終え、アイテムの分配を終えたあと、藤井が感心したように言う。


「動きに迷いが全然なかったよね。」

木下さんも目を丸くして頷く。


「ありがとう。でも皆で戦ったからだよ。」

いつも通りの爽やかな笑顔で、優が二人に答えた。


「「カッコイイ~!」」


木下さんと中野さんは、すっかり優の笑顔に見入っている。


(優の輝きに浄化されてる……)



「チッ……」



(……舌打ち?)


ごくごく小さな音だった。


反射的に全員の顔へ視線を走らせる。

だが、誰も普段と変わらない表情をしている。


僕の他には、誰も気が付いていないようだ。


(でも、確かに聞こえた。)


そして、あの位置にいたのは一人しかいない。

誰の舌打ちだったのかは、考えるまでもなかった。

でも、それを指摘する気にはならなかった。

どうせ、このクエストが終われば別れる相手だ。

それに…


(慣れているから僕も優も…

「嫉妬」と「悪意」に晒されるのは…)



藤井を先頭に村への道を戻る。

同じクエストを受けたのもあり、

朝とは異なり、表面上はお互いに打ち解けたように見える。


村に戻り、藤井が全員を代表してクエストの完了報告をする。

こうして、《黒猫の宵》としての初クエストは終了した。


「俺達はしばらくこの村に留まる予定なんだけど、君らはどうするんだ?」

報酬の分配を確認しつつ、藤井が尋ねてくる。


「昨日から動きっぱなしだし、この村で少し休もうかな…」

優は少しふらつきながらそう答える。


「そっか、じゃあまた会うかもな、よろしく!」

そう言い残し、《ハルモニア》のメンバーは手を振りながら村の向こうへ歩いていく。

そして、残されたのはふらふらな僕達…。


「やばい、めっちゃ疲れた。」

あまりの疲労の蓄積に思わずため息とともに声がこぼれてしまう。


「アドレナリンが出すぎて忘れてたけど、

 俺ら、ボス戦からずっと起きっぱなしだったからな」

元気モンスターの樹も、流石に疲れが顔に出ている。


「さっき村を回っている間に宿屋があったよ、そこに行こう。」

記憶力が良い聡がMAP無しで、先導をする。

しかし若干、足取りがおぼつかない。



辿り着いた宿屋は、フロア3に泊まったフォルクシュタイン城の客室とは程遠く、

埃っぽい畳に、綿の偏った布団…

この村の発展具合、一泊500コインという超格安の値段からすると、まあ妥当だろう。


(というか疲れすぎて、正直寝られればどこでもいい。)


その日は全員畳に寝ころび、泥のように眠った…。


====================================================

世紀歴20×0年4月17日 9時16分 フロア4 ライココット村


ドンドンドン!!


宿の部屋が叩かれる音がする…


(うるさい…となりの部屋か?)


ドンドンドン!!


叩かれる音は鳴りやまない。


「うるせぇ~……どこの部屋だよ…」

ドアを叩く音で無理やり起こされた樹が、

ぼさぼさ頭のまま、イラついた口調で愚痴をこぼす。


ドンドンドン!!


現実世界とは違うシステム音だからだろうか。

音の響き方が違っていて、最初は隣の部屋だと思っていた。


聡だけは何も言わず、入口へ視線を向けていた。

こちらも髪はぼさぼさだ。


だが、どうやら叩かれているのは僕達の部屋らしい。

4人で一瞬顔を見合わせ、無言で装備に着替える。

ついでに、ステータス画面から、

ワンタッチで髪型や服装を整えてくれる《フルオート》を選択する。


(これで朝の身支度は完了と。)


ドンドンドン!!


いまだに扉は叩かれ続けている。

扉を開けた瞬間、攻撃される可能性も視野に入れつつ、

入り口の壁の裏に張り付きながら慎重に扉を開ける。


すると、ドアを叩く瞬間だったのだろうか、

勢いよく、女性プレイヤーが入ってきた。


「あれ…木下さん?」

それは昨日一緒にクエストをこなした、《ハルモニア》のメンバー木下さんだった。


「どうしたの?」

優はすでに通常モードに戻っており、いつもの爽やかな笑顔で木下さんに尋ねる。


「すみません、皆さん…

 私…そんなつもりなくて…」

気のせいだろうが、少しだけ涙目な木下さん。


「どういうこと?」

その様子を心配しつつ、優が話を続けるように促す。



「詳しいことは、外に出れば分かります…」


訝しつつも、木下さんに続き、宿の外に出る僕達4人


そこには――


この小さな村には似つかないほど沢山のプレイヤーが待機していた。


そして、その中の一人、坊主の男性プレイヤーが大声で叫んだ。


「出てきたぞ、1st ギルド《黒猫の宵》だ!!」



(………………………………………え?)
























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