Stage3-9 従者の切り札(トランプ・オブ・トレイター)。
世紀歴20×0年4月15日 18時02分 フォルクシュタイン城 玉座の間
日向 優:Side
フロア2から続いていた因縁、その全ての元凶がついに姿を現した。
夜の闇に紛れ、影のように突如現れたその男は、呑気にプレイヤーの数を数えている。
2mは超えるであろう長身に、黒の装い、口には髭を蓄えている。
そして手元にはギラリと怪しい輝きを放つサーベル。
「これが、フロアボス、チェリー卿…」
僕のつぶやきにチェリー卿が反応し、こちらに視線を移す。
すると、チェリー卿の上に固有名称【Lord Cherry the Traitor】そして、
黒緑色のHPバーが現れた。
周囲を見渡しても、チェリー卿以外に人影はない。
(まさか……一人で来たの!?)
「……八十七、八十八、八十九……ふむ。」
「百には届かぬが…、なかなか優秀ではないか。」
余裕たっぷりに、僕達に賞賛の声をかける。
その振る舞いから、只者ではない雰囲気がひしひしと伝わってくる。
プレイヤーや銃士達がその姿におのき、静まり返った玉座の間に、
鋭い声が響き渡る。
「チェリー卿……なぜです。
あなたは誰よりこの国を知る者だったはず。」
その声の主は、表情に恐怖を浮かべつつ、
だが、確固たる意志を持ってチェリー卿に質問を投げかける。
そう、アンナ女王だ。
「ごきげんよう、アンナ様。
ご健勝であらせられること、何よりに存じます。
そして……相変わらず、何も見えていらっしゃらないようだ」
「!?」
「先代国王が亡くなられ、周辺国家との関係は悪化した。
民は不安に怯え、この国はゆっくりと腐っている。
だからこそ、新しい王が必要なのです。」
「その王に、あなたがふさわしいとでも?」
「少なくとも、血筋という時代遅れの理屈で玉座に座る、
お飾りの女王陛下よりかは幾分ましかと…
新たな時代の生贄として、今夜、貴方様のお命頂戴いたします。」
「ヒィィッ!!
姫様、こやつは本気です。逃げましょう!!」
女王陛下のすぐそばで女王を守るように立っているマンデンバーグが、
短い悲鳴を上げ、逃亡しようと意見する。
「この国のどこに安全な場所があるというのですかマンデンバーグ、
覚悟を決めなさい、自らの運命に向き合うのです。」
僕らと年齢が近いとは思えないほど、堂々とした姿勢。
その凛とした瞳は、目の前の男ではなく──王国そのものを蝕む闇を見据えていた。
にやり、と怪しい笑みを浮かべるチェリー卿。
その態度に一矢報いるかの如く、白髪のプレイヤーが反論を述べる。
「あなたは先ほど、この国が腐っていると言っていましたが、
麻薬や毒物をこの国へ持ち込み、民を苦しめているのはあなたではありませんか?
自ら火を放ち、その火を消した英雄を演じようとする人物が、
王にふさわしいとは思えません。」
「ふむ、確かに的を得ているな、貴殿は?」
「私はギルド《白のカルミア》のリーダー、鳳 悠真だ。」
「銃士 鳳、貴殿の言う通り、確かに私は麻薬や毒物を輸入した。
だがそれは王座に着くための布石、
今宵王となり、都合の悪いものは全て消し去ってしまえばいい…」
「勝てば官軍という考えか…」
チェリー卿は、不敵な笑みを浮かべ、勝ち誇ったように言い放つ。
「無駄話はここまでだ。
……始めようか。
出でよ、我が僕たちよ。」
チェリー卿のそのひとことを合図に、チェリー卿の側に二人の従者が霧のように現れる。
さらに、玉座の扉が開き、黒い防具を纏い、剣を携えた銃士達がぞくぞくとなだれ込んできた。
黒い鎧が床を打ち鳴らす音だけが玉座の間に響く。
――その数およそ100人。
「かかれ!」
チェリー卿の合図により、黒銃士とプレイヤー&銃士との交戦が始まる。
その様子はもはやボス戦というよりも、小さな戦争のようだった。
フロアボスを前にして、手に汗がにじみ出る感覚が起こる。
でも、敵は今僕の目の前にいる!
そしてチェリー卿はターゲットである女王に視線を移している。
(今なら届く!!)
背中から双剣を引き抜き、剣先を交差させスキルアタックの構えを取る。
《ダブル・レンド》
地面を思い切り踏み込み、跳躍、二本の軌跡がチェリー卿の身体を捉える。
チェリー卿は女王から視線を切ることなく、瞬時に腰からサーベルを引き抜き、
怪しい輝きを秘めたその刀身が僕のスキルを受け止めた。
僕の双剣とチェリー卿のサーベルが鍔迫り合いをしている状況、
しかし、こちらはスキルを使用している状態で互角!!
(このまま、スキルが終了すれば、クールダウンの隙にカウンターを貰うことになる…)
僕の脇から、樹と聡が飛び出し、がら空きになったチェリー卿の腹を狙う。
左右から振り下ろされた二本の剣が、チェリー卿の腹へ迫る。
しかし、その攻撃は、チェリー卿の二人の従者によって止められてしまう。
「くそっ!」
一瞬の隙を逃した悔しさからか、樹が声を上げる。
そして、僕の方ももうすぐスキルの発動が終わる。
(やばい!)
刀身の光が消えかけた、その瞬間だった。
轟音。
チェリー卿の腹へ巨大な剣が叩き込まれ、その巨体が大きく吹き飛ぶ。
グレートソードというのだろうか、その持ち主は…
「大丈夫か?日向のあんちゃん?」
「桜木君!!助かったよ。」
「気にすんな!
正直、敵の兵隊を相手するので、手一杯や、
俺んとこのギルドも、なんとか俺だけはボス手伝ってやれっちゅーて送り出してもろたけど、
俺一人加わったところで、焼け石に水や…」
チェリー卿に対する増援が一人増えた、だけど、正直勝てる戦力ではない。
「大丈夫、私もいるわ。」
九条さんが細剣を構える。
「同じく、私もいることを忘れて貰っては困る。」
白髪の鳳君も静かに前へ出る。
僕、樹、聡。
そこへ鳳君、桜木君、九条さんが加わる。
(手練れが3人加わった、もしかしたら勝てるかもしれない。)
吹き飛ばされたチェリー卿は、ゆっくりと立ち上がる。
(ジロリ…)
服についた埃を払いながら、
冷たい視線だけをこちらへ向けた。
チェリー卿の姿がゆらりと揺らぐ。
次の瞬間――
(消えた!?)
「おいおい、あいつ消えおったで。」
「まじか、どこいった!?」
桜木君と樹が戸惑いの声を上げる。
混沌と化した戦場に、一瞬の静寂が走る。
九条さんと鳳君だけは視線を巡らせ、チェリー卿が残したわずかな痕跡を追っていた。
「後ろ!!」
何かを察知した九条さんの鋭い声が飛ぶ。
全員が一斉に振り返る。
すると、影しかないはずの床が揺らぎ、その闇の中からチェリー卿が姿を現した。
「おいおい、瞬間移動かいな!?」
「いや、恐らく影を渡って移動したんだろう。
我々の前から姿が消えてすぐ現れなかった。
あの僅かな間は、影の中を移動していた時間だ。」
桜木君の動揺に、鳳君が冷静に答える。
僕達の隙をついて、チェリー卿が剣を構える。
赤いエフェクトが刀身を包み、強烈な一撃が鳳君に向けて放たれた。
「鳳君!」
キィン!!
鳳君はチェリー卿の強烈な一撃を、左手に持っている盾で受けた。
足元を見るとじりじりと押されているが、なんとか均衡を保っている。
「今だ!攻撃しろ!」
鳳君の指示をうけ我に返った僕達は、一斉にチェリー卿へと飛びかかる。
しかし、僕達の攻撃を察したチェリー卿はまたたくまに影の中に消え、再び身を潜めてしまった。
「くそっ、このままじゃ一方的に攻撃されるだけだぞ」
苛立ちにも聞こえる大声を樹が発する。
薄暗い玉座の間では、影の動きがほとんど見えない。
しかも敵は黒い装備ばかり。
狙いを定めることすら難しい。
(このままじゃ……)
その時、決して大きな声ではないが、鈴のように美しい声が玉座の間に響いた。
「壁際の銃士の皆さん!
明かりを灯してください!
影を作らせなければ、敵の動きは見えるはずです!」
声の主は九条さん。
(そうか……!
チェリー卿が最初に灯りを消したのは、自分の動きを隠すため。
なら、この部屋を明るくできれば――!)
その声に反応し、女王側の銃士数名が壁の蝋燭へ駆け寄る。
だが、その動きを見逃すほど敵も甘くない。
黒銃士たちが立ちはだかり、火打石を持つ腕ごと剣で弾き返した。
灯りまで、そう簡単には取り戻させてはくれない。
九条さんのアイデアは良かったが、実行に移せないため、
じりじりと押し込まれていく女王サイド…
(こんなとき、玲ならどうする…?)
ピンチの中、いまだどこかに姿を隠している幼馴染の考えをトレースしようとする。
しかし、この状況を覆すアイデアはなかなか降りてこない…。
そんな時、壁側から一人の少年の声が聞こえてきた。
「黒銃士さん、こっちです!!」
聞き覚えのあるその声の主を確認する…
「玲、やっと来た!!……じゃない……あれは、夜城君!?」
《白のカルミア》のメンバーである夜城君が、壁際で大きく手を振っている。
「黒銃士さん! こっちですよ!」
(あれじゃ的になっちゃうよ!? 一体何を……)
僕の予想どおり、数人の黒銃士が一斉に夜城君へ斬りかかった。
――その瞬間だった。
夜城君は壁を蹴り上げると、
振り下ろされた剣を紙一重でかわし、そのまま黒銃士の肩へ着地する。
さらに、その肩を踏み台にもう一度跳躍。
まるで猫が屋根を渡るような、軽やかな身のこなしだった。
そして彼は、壁の燭台へ手を伸ばす。
火打石を剣へ鋭く打ちつけると、
無数の火花が夜空の流星のように散り、燭台へ降り注ぐ。
次の瞬間――
ボッ。
小さな炎が灯り、暗闇だった玉座の間に一筋の光が生まれた。
夜城君はそのまま身をひねり、再び黒銃士の背へ着地。
着地と同時に片手剣を一閃。
「ぐあっ!」
一人を斬り伏せると、何事もなかったかのように距離を取る。
(なんて身軽なんだ……まるで猫みたいだ。)
黒銃士たちの視線が、一瞬だけ夜城君へ集中する。
その隙を鳳君は見逃さなかった。
「今だ! 他の明かりも灯せ!!」
鳳君の声により、我に返った女王側の銃士達は、次々と蝋燭に火をつけていく。
一本。
また一本。
暗闇だった玉座の間が、黄金色の灯火を取り戻していく。
そして最後の燭台に火が灯った瞬間――
チェリー卿の姿を、初めて捉えた。
「よっしゃ!明かりがつけばこっちのもんやで!!」
桜木君がグレートソードを構えなおし、気合を入れなおす。
「総員、突撃!!」
鳳君の合図で、6人が一斉にチェリー卿にとびかかる。
こちらの動きに合わせ、チェリー卿はサーベルを構えなおし、迎え撃つ姿勢を見せる。
真っ先に飛び出したのは桜木君だった。
「おらぁぁぁ!!」
グレートソードが唸りを上げ、チェリー卿の脇腹へ叩き込まれる。
チェリー卿は咄嗟にサーベルを差し出した。
ガン!!
二つの刃がぶつかり合い、鈍い音が響き渡る。
その隙へ、樹、九条さん、聡の三人がほぼ同時にスキルを叩き込む。
それと同時に、黒緑色のHPバーが目に見えて削れた。
「ぐっ!」
影に隠れる事も出来ず、戦闘開始後初めてダメージを受けたチェリー卿が小さなうめき声を出す。
(よしっ!)
桜木君はいまだ、チェリー卿のサーベルを抑え込んでいる。
鳳君の方向を見ると、彼もこちらの様子を見ていたらしく
目が合い、お互いに頷く。
鳳君の片手剣が黄色い光を放つ。
それに続き、僕もスキルアタックを発動!
《デュアル・エッジ》
青い軌跡が4つの傷跡を描く。
一閃。
返す刃でもう一閃。
双剣だからこそ実現する四連撃が、チェリー卿の背と右脚を切り裂いた。
5人の連続攻撃を受け、チェリー卿のHPは残り7割…
ボスへの攻撃の成功から、少しだけ戦場の雰囲気が和らいだその瞬間だった…
「回復薬を。」
チェリー卿が短く命じる。
側に控えていた従者がメニューを開き、アイテムウィンドウを操作した。
次の瞬間、チェリー卿の前にトレードウィンドウが展開される。
チェリー卿が承認ボタンを押すと、一瓶の回復薬がその手に現れた。
それを迷いなく飲み干した瞬間――
黒緑色のHPバーが、一気に100%まで跳ね上がる。
「何!?」
突然の出来事に、鳳君が驚愕の声を上げる。
「フッフ、これが戦いというものだ、新米銃士諸君。
まさか卑怯とは言うまいな?」
チェリー卿は勝ち誇ったように言う。
「そんなのありかよ!!」
「そうやそうや、男やったら正々堂々勝負せんかい!!」
樹と桜木君は先ほどの言葉などつゆ知らず、
チェリー卿を卑怯者となじる。
(僕たちの回復薬は、飲んでも効果が出るまで一分以上かかる。
実戦では使えないに等しい。
なのに、チェリー卿は戦闘中に全快した――。)
プレイヤー側の回復ソースとボスの回復の使用の違いに、ボスと対峙する6人全員が絶望していた。
そこから先は、一方的な戦況だった…
こちらがいくら攻撃を加えても、ボスは無尽蔵に回復してくる。
さらにあちらはAI、無限の集中力だが、
こちらの集中力とやる気は時間が経過すればするほど削れれていく、
そして、やっとこちらがダメージを加えると体力が半分を切る前に回復。
僕達の攻撃は届く。
だが、そのたびに全快する。
削る。
回復される。
削る。
また回復される。
勝ち筋が、見えない。
僕達は完全に手詰まりになった。
「回復薬。」
チェリー卿の指示により、従者が再度回復薬を渡すそぶりを見せる。
すると、8割ほどだったHPバーが再び100%に戻った。
恨めしく、回復薬を渡す従者を見てみると、
先ほどは2人だったのに、今は1人になっている。
(……従者が一人減ってる?
……いや、今はそんなことを考えている余裕なんてない。)
他の5人を見渡すと、初めの時のような勢いはない、
他のプレイヤー、女王の銃士達の戦況も良くなさそうだ…
このまま負けるのか…そう思った時…
「顔を上げなさい――私の銃士達よ!」
戦場の喧騒を切り裂くように、その声は玉座の間へ響き渡った。
その声の主は、チェリー卿軍との激戦の最中、
開戦の時と変わらず、強い意志を宿したまま玉座に立つアンナ女王だった。
「アンナ女王…?」
劣勢となった女王軍の誰もが、次の彼女の言葉を持った。
「ここが最後の砦です。
ここで敗れれば、多くの民が傷つき、苦しむでしょう。
戦えない者たちの代わりに、今一度剣を持つのです。
あなた方が、この国最後の希望です……どうか。」
アンナ女王は静かに両手を重ね、祈るように瞳を閉じた。
そして――
「サポートアート――《ロイヤル・オーダー》」
澄み渡る鐘の音のような光が玉座の間を包み込む。
その輝きは、一人、また一人と僕たちの胸へ宿っていく。
恐怖に震えていた心が、不思議と静まっていく。
「まだ戦える。」
そんな確信だけが、胸の奥から湧き上がってきた。
視界の端で、HPバーの横に黄金に輝くハートの紋章が灯る。
そして次の瞬間――
僕たち全員のHPが、一瞬で全快した。
「まだ戦える!!押し返すぞ!」
女王の演説に鼓舞されたか、
いつも冷静な鳳君がらしくない大声で、全員の士気を上げる。
その勢いに乗せられ、僕達全員の士気も完全に勢いを取り戻した。
6人全員が、もう一度チェリー卿と対峙する。
「いくでえええええ!!!」
桜木君の怒号と共に、桜木君と樹が切りかかる。
チェリー卿はその攻撃をするりとかわし、背中を取った二人に攻撃を仕掛けようとする。
しかし、その背後を取ろうとした瞬間だった。
聡そして鳳君は次の攻撃を仕掛けていた…。
二人の片手剣が同時に輝き、チェリー卿の両足を攻撃する。
その攻撃をうけ、たまらず膝をつくチェリー卿、
(今!!)
隙を見た僕と九条さんが猛スピードでチェリー卿に突撃、
僕の双剣が左胸を裂き、
九条さんの細剣が心臓を貫くように突き込まれた。
「うっ…」
その攻撃により、ついにチェリー卿のHPが4割を切った。
そしてチェリー卿は、今まで聞いたことのない低い唸り声をあげる
「よし、このまま止めだ!!」
クールダウンの硬直から解かれた、桜木君、樹、聡、鳳君が一気に攻勢に転じる。
4人の剣が一斉にチェリー卿に向かう。
(行け!!)
勝った――。
誰もが、そう確信した、その一瞬だった…
シュッ
膝をつき、サーベルを手から離し、
もはや攻撃の手段を持たないはずのチェリー卿が、
胸元から何かを取り出し、4人に投げつけた。
そして、その『何か』が4人の目の前に到達したとき、
パシュッ!!
軽い破裂音と同時に、黄色い煙が四人を飲み込んだ。
煙に包まれた4人は、そのまま地面にたたきつけられ、
そのまま立ち上がれない…
「これは…麻痺だ!!」
自分に掛けられたデバフを理解した鳳君が、僕と九条さんに注意喚起をする。
「あかん、動かれへん!!」
「やべぇ!優あと頼む!!」
桜木君、樹が絶望に似た声を出す。
その声を聞き、チェリー卿は再び不敵に笑う。
「クック、切り札は最後まで残しておくものだよ、新米銃士諸君。
ここまでよくも追い詰めてくれたな…
ここで死ね!!!」
冷静な黒幕の仮面は、もはやどこにもない。
追い詰められた怒りに理性を焼かれたチェリー卿は、
獣のような形相で僕たちを睨みつけていた。
「従者!回復薬をよこせ!!」
怒りのままに、そばにいる従者に命令するチェリー卿。
「こちら回復薬でございます。」
いつの間にかにチェリー卿の側にいた、フードを被った従者がチェリー卿に薬を渡す準備をしている。
「さっさと寄越せ、のろまめ!」
チェリー卿は倒れている僕達に目線を外さず、従者をこき下ろす。
「お前たちを始末したら次は女王だ…
今夜、この国に新たな王が誕生する!!」
高笑いをしながら、回復薬の受け取りボタンを押すチェリー卿。
僕達は、その様子をただ見ているだけしかできない。
(せっかく追い詰めたのに…ここまでか…)
悔しさのあまり強く唇を噛みしめる。
「フッ」
その時。
フードの奥から、小さく笑う声が聞こえた。
――次の瞬間。
パーティー一覧のHPバーが、一つ増えた。
そして、僕、樹、聡、フードの従者、チェリー卿の目の前にシステム画面が開かれる。
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【ギルドメンバー追加】
《Lord Cherry the Traitor》がギルドに参加しました。
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「……何だ、これは。」
突然の出来事に、チェリー卿はフリーズしている。
その時、チェリー卿の側にいたフードの従者が楽しそうに呟いた。
「ようこそ私達のパーティーへ、チェリー卿。」
「貴様、何者だ!」
チェリー卿が憤慨した様子でフードの男に詰め寄る。
「何者だ!と聞かれたら、答えてあげるが世の情けってね。」
その従者は、ステータス画面を操作し、目元まで深くかぶったフートごと、羽織っているコートを解除した。
フードが落ちる。
見慣れたオリーブ色の瞳が僕を見た。
(玲……!)
「わたくし、通りすがりの従者でございます。以後お見知りおきを。」
「お前、私に一体何をした…」
「何も特別なことはしていません…
ただあなた様を私達のパーティーに招待しただけです。
あなたは、私からの招待ボタンを押しましたよね?」
玲はチェリー卿に深々と、しかしワザとらしくお辞儀をして見せる。
「まさか卑怯とは、おっしゃいませんよね?」
玲は小さく笑う。
「そして、切り札は最後まで取っておくものでしたね。」
チェリー卿が戸惑ったタイミングを見逃さず、玲が女王の側にいるダルタニャーに指示を出す。
「ダルタニャー!!」
玲の合図に頷いたダルタニャーは、いつかのサポートアートを発動した。
「サポートアート――《威風堂々》にゃ!」
その瞬間、チェリー卿を含めた僕達のHPの横に正十字の紋章が灯る。
「なんだ…これは…」
「これでやっと同じ土俵で戦える…」
混沌と化した玉座の間に、聞きなれた声が響く。
「これで条件は同じ、こっから先は小細工無しの真剣勝負だ!」
動揺を隠せない様子のチェリー卿に、玲は冷たく言い放った。
次回、銃士編最終話!!
「パーティー招待」攻略の伏線箇所
Stage2-2 銃士の条件。より→NPCをギルドに入れられるという設定
Stage2-5 見えざる敵。より→サポートアート《威風堂々》の設定
Stage3-2 白の野心。より→パーティー内のNPCを倒せるという設定
銃士編を通して→玲のみ「従者」扱いの設定




