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Paradise Sixth ―楽園適性試験―   作者: 針々
第三章【銃士編Ⅱ】Waltz of the Black Cat

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15/19

Stage3-1 玉座の少女。

【主要登場人物】


一条いちじょう れい

少しひねくれた性格だが、優れた観察力と頭脳を持つ。

優、樹、聡を何より大切に思っている。


日向ひなた ゆう

おおらかで誰にでも優しい人格者。

玲の幼馴染であり親友。美少年。


立花たちばな いつき

大雑把だが場を明るくするムードメーカー。

時折、誰も思いつかない発想を見せる。


佐々ささき そう

冷静沈着な分析役。

チームの頭脳として玲達を支える。


ダルタニャー

ギルド結成イベントで登場したお助けNPC。

銃士になるために鍛錬を積んでいる。


白髪の男子生徒

フロア2攻略戦で類いまれなるリーダーシップを発揮し、

尻込みするプレイヤーたちを鼓舞してボス討伐へと導いた少年。



【これまでのあらすじ】

全国の高校二年生を対象とした適性試験《EDENプログラム》。

第2フロア「Masquerade Kingdom」でギルド結成クエストに挑む玲たち4人は、

お助けキャラクター・ダルタニャーとともに銃士入団試験へ挑む。

しかし、それは受験者を欺くために仕組まれた罠だった。

偽りの銃士団長の企みを暴いた玲たちは、

新たな仲間とともに、女王の待つ街――フォルクシュタインへ向かう。


⦅ここが女王のいる『王都』、フォルクシュタインにゃ!!⦆



「「「「おぉ~~!!」」」」


フロア2からのゲートを抜けた先に現れたのは――


『王都 フォルクシュタイン』


目の前に広がるのは、中世ヨーロッパを思わせる美しい町並み。

歴史を感じさせる石造りの建物が立ち並び、

その間を煌びやかな衣装に身を包んだNPCたちが行き交っている。


(なるほど……。ここが王都と呼ばれる街なのも納得だ。)


「な、な!こんなでっかい街、観光しない手はないよな!?」


フロア1の攻略後、突如デスゲームと化したこのEDENプログラムでなお、

楽しむという気持ちを失わない樹は、いつも通りのハイテンションで全員に向かって喋りかける。


「いいかもね!まだこのフロアで何をするのか決まってないし…」


優の言う通り、今の僕たちはフロア3に来たばかりだ。

次に何をするべきかどころか、どこに向かえばいいのかも決まっていない。

装備の強化やアイテムの補充をするには、ちょうどいいタイミングかもしれない。


「じゃあ、街を見て――」


口を開いた、その瞬間。


5人全員の目の前に、もはやお馴染みとなったポップアップが現れた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【女王からの褒美】


『舞踏会への招待状』


依頼主:フォルクシュタイン女王  アンナ・トリッシュ


舞踏会へ参加し、

女王に謁見せよ。


※実行時間:20XX年4月13日 18:00

 フォルクシュタイン城前


▼Objective

・依頼主と会う。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「女王からの……」


「招待状!?」


クエスト内容を見た優の言葉を、隣で同じように目を丸くしていた樹が引き継ぐ。

そのとき――


「や、やったニャーー!!!」


突然の吉報に、ダルタニャーは両手を大きく突き上げ、尻尾をぶんぶんと振り回して歓喜する。

その姿は、猫の姿をしているせいもあって――悔しいけれど、少しかわいい。



「18時集合か……。ダルタニャー、ここから城まではどれくらいかかる?」

タイムスケジュールを確認したかった聡が、ダルタニャーに尋ねる。


「ニャーー!!俺っちもついに、女王付きの銃士になれるかもしれにゃいにゃ!!」

まだ興奮冷めやらぬ、マスコット兼お助けNPCの耳に聡の質問は入っていない。


「ダルタニャー!!城まではどれくらい?」

声だけでは気づかないと思ったのか、

今度はダルタニャーの肩をたたきながら再度同じ質問をする。


「ん~?そうにゃね。フォルクシュタイン城は街の外れにあるみたいにゃ。

ここから歩いて、1時間くらいかかりそうにゃ。」

肩をたたかれ、我に戻ったダルタニャーが、アイテムボックスから取り出したMAPを見ながら答える。


今の時間は15時47分、集合時間まであと2時間くらいか…。

まさか城でいきなりバトルってのはないと思うけど、

一応装備の強化はしておいた方がいいよね…。


「移動時間を考えても、まだ1時間くらい余裕があるし、武器屋で装備を強化しておく?」


「だな!武器の性能も、そろそろ物足りなくなってきたし。」

そう答えた樹は、ダルタニャーの持つマップを覗き込む。


「さっさと行こうぜ、こっち。」


樹の先導で、武器屋までの道を歩く。


歩きながら街並みを見渡と、

さすが王都といったところか、大通りには馬車が走っており、道を歩く人々の服装も華やかだ…

行き交う人々の表情や姿を見るだけで、この都市の豊かさが伝わってくる。


しばらく歩くと、先頭の樹は、大通りを外れ裏路地へ入った。

続いて入った裏路地は、大通りとは打って変わって人通りは少ない。

フードを深く被った人物や、道端で眠る老人の姿がちらほら見える。

華やかな王都にも、こういう"影"があるらしい。


(こんなところまで再現する必要、あるのか?)


薄暗い裏路地をはぐれないように5人で固まりながら歩く…


よそ者がこの道を歩くのは珍しいのだろう。

道端のNPCたちから向けられる、まとわりつくような視線。

それを無視しながら、武器屋への道を急ぐ。


歩きながら、NPCたちのひそひそ話に耳を傾けていると、

不意に気になる会話が耳に入った。



「―――は手筈通り入手した。」



「――時に――に取りに来る。」



裏路地という、怪しい取引にはうってつけの場所で交わされる意味深な会話。


(どこぞの黒づくめの組織が、大人を子供にする劇薬でも取引してるのか?)


そんなくだらないことを考えながら、その路地をちらりと覗いてみる。


そこにはいたのは、見るからに怪しいフードを羽織った男と、

もう一人はこの路地には似合わない、身分の高そうな身なりをした男だった。


(そんな身なりで裏路地にいたら、目立つでしょ……。)


二人を眺めていると、フードの男が僕の視線に気づいたようだ。


「……おい。」


フードの男が小さく呟き、貴族風の男へ顎をしゃくって合図を送る。

その合図で、もう一人も僕に気が付いたようで、

二人は何事もなかったかのように踵を返し、裏路地の奥へ消えていった。


なんとも怪しすぎる取引現場だったが、今の僕に首を突っ込む理由はない。

気持ちを切り替え、小走りで皆の後を追う。


=======================================


皆に追いつくころには、ちょうど武器屋の前へ到着した。

店の扉を開ける4人の後に続いて店内へ入る。


「らっしゃい!!」


威勢のいい声に顔を上げる。

店主の姿を見た瞬間、思わず足が止まった。


(……あれ?)


なんと、フロア1で武器屋を営んでいたNPCと、瓜二つだった。



(双子?ってそんなわけないか…キャラクター使いまわし系RPGなのね……。)



「すいません!武器の強化お願いします!!」



樹はそんなことなど気にも留めず、元気よく店主へ声をかける。



「まいど!兄ちゃんの両手剣はForge Lv.1だから鍛えるのに500コイン貰うよ!」



「オッケー、それでたのんます!」



樹の答えを聞いた店主は両手剣を受け取ると、奥の鍛冶台へ運んだ。

真っ赤に熱せられた炉の前で剣を掲げ、迷いなくハンマーを振り下ろす。


キィィィン――!


鋭い金属音とともに火花が弾け、刀身が一瞬だけ淡く赤白く輝いた。

火花が消えると、店内に金属音の余韻だけが残った。


「よし…」


強化を終えた両手剣を見つめ、武器屋は満足そうに頷く。……そんなふうに見えた。

そして、両手で丁寧に抱えるように樹へ差し出した。


「まいどあり!!」


受け取るやいなや、樹はステータスを確認する。


「おお!ATK(攻撃力)とVITが2倍くらい増えてる!強化スゲー!!」


武器強化の効力を示すには、その一言で十分だった。



樹の一言を皮切りに、

僕たち四人は、我先にとカウンターへ駆け寄る。


====================


五人全員の装備強化が終わり、それぞれステータスを確認していく。


僕も一番気になっていた、片手剣のステータスを開く。


ーーーーーーーーーーーーーーー

【ファストブレード】


武器種:ショートソード

レアリティ:Common


ATK(攻撃力):10

VIT(耐久値):15



説明:

軽量化された片手剣。

素早い連撃に適している。

ーーーーーーーーーーーーーーーー


(ATKは5から10へ倍増したけど、VITは15止まりか……。

かなり酷使したし、耐久の伸びが鈍いのは仕方ないか。)


全員の装備確認を終え、僕たちは武器屋を後にした。


薄暗く、不気味な雰囲気の漂う裏通りを早足で抜けると、

再び人通りの多い大通りへ戻る。

気が付けば、空はすっかり夕暮れに染まっていた。

茜色の光が残るレンガ道を、僕たちは城へ向かって歩いていく。


「夕暮れから夜になる、この時間が好きなんだニャ!」


「宵の時間だね…」

ダルニャ―の横に並んでいた聡が答える。


「宵、宵か!良い響きだにゃ!」


ダルタニャーと聡の会話を皮切りに、自分の好きな時間や天気などたわいのない会話が始まる。

そんな四人の背中を後ろから見ながら、この世界について考える。


(NOAは何のためにこのプログラムを支配したんだ……。

そもそもEDENは何のために作られた?そして、なぜ僕たちだったのか……。)


どんなに考えても、その答えは出ない。

真実を知るためには、生き残るしかない…か…。




四人の会話を聞きながら、ときおり相槌を打ったり話題を振ったりして歩いていると、

やがて町はずれに差しかかり、

フォルクシュタイン城が視界いっぱいに姿を現した。


断崖絶壁の上に築かれたその城は、フロア2の城とは比べ物にならないほど巨大だ。

周囲を取り囲むのは、高くそびえる城壁と深い谷。

城へ続く道は、谷に架けられた四本の橋のみ、

その厳重な造りを見れば、この場所が王都の中心であり、同時に最後の砦なのだと理解できた。


(これが……フォルクシュタイン城……)


「すごい、すごいにゃ!」


闇夜に浮かぶフォルクシュタイン城。

無数に並ぶ窓からは、暖かな光が漏れ出している。


その光景は、ただ巨大なだけではなく――


「綺麗だ……」


思わず、そんな言葉が口からこぼれた。


「本当だね……」


「この世界にもこんな景色があるんだ…」


優と聡も、城の外観を見つめながら感嘆の声を漏らす。


ふと我に返る。


「……そういえば、集合場所って『城の前』だったよね?あれ? 城の前ってどこ?」


「それは、橋を渡ったところなんじゃね?」

樹が指を指した方向を見ると、ちょうど橋を渡っている人々が見える。

服装は冒険者風の装備ばかりだ。

豪華な礼装に身を包んだNPCとは明らかに違う。どうやらあれはプレイヤーらしい。


「俺達も行くぞ!」


樹の後に続き、橋の上を走り抜ける。

このまま城の敷地の中へと考えていたが、

橋を渡り終わった場所に待つ、城の門番NPCに止められる。


「招待状を。」


僕は言葉の代わりに、『舞踏会への招待状』の画面を門番へ提示した。


門番は招待状を一瞥すると、小さく頷く。


「……中へ。」


門番の許可が下りたため、城の敷地内に入る。

広い中庭には豪華な料理が並ぶ長机がいくつも設けられ、着飾った貴族NPCたちがグラスを片手に談笑していた。


その風景を横目に見つつ、ついに城の入り口にたどり着く。

そこには、僕達より先に到着していたプレイヤー達、ざっと二百人ほどだろうか。すでに集まっていた。


中には見知った顔もいる。


人ごみの中でも目立つ長身とあのリーゼント……


(あれは…)


「おお!桜…」


樹がフロア1のボス攻略で顔見知りとなった桜木龍二に声をかけようとする。

しかし、それと同時に、城の入り口にある大きな扉がゆっくりと開く。


扉の奥から現れたのは、落ち着いた雰囲気をまとった中年の女性NPC。

豪華なメイド服に身を包んでいるところを見ると、この城に仕える侍女なのだろうか。


「銃士見習いの皆様、本日は女王陛下のお招きによくぞお越しくださいました。

 女王陛下は奥の大広間にて、皆様のお越しをお待ちしております。

 どうぞ私についてお越しくださいませ。」


メイドNPCの後に続き、プレイヤーたちは列をなして歩き始める。


城内は、さすが女王の住まう城というべきか、

壁には金細工や巨大な絵画が飾られ、

僕たちが歩くレッドカーペットの両脇には、武器を構えた騎士たちが微動だにせず並んでいた。


何度階段を上り、いくつもの廊下を歩いただろうか。

メイドNPCは、大きく重厚な扉の前で立ち止まると、静かに僕たちを振り返る。


「女王陛下は、この扉の先でお待ちです。皆様、身なりを今一度お整えください。」


メイドNPCの言葉を受け、

メニューを出し、スタイリングの画面を出す。

スタイリング機能では髪型や服装を細かく調整できるけど、

僕は迷わず《フルオート》を選択した。

これは、ワンタッチで全身の身だしなみを整えてくれる便利機能だ。


(朝、一瞬で準備が出来るから、めっちゃ楽なんだよね~)


女王に謁見する前に、身なりに問題が無いか5人でお互いの服装を確認し合う。

全員問題ないと確認ができると、身体を扉の正面に向け、扉が開くのを待った。


メイドNPCは、プレイヤー全員の準備が整ったことを確認すると、

小さく頷き、扉の前に控える二人の侍女へ静かに合図を送る。


合図を受け取った侍女は扉に手をかける。


「それでは、女王陛下がお見えになります。」


そう言い終わると、侍女二人の手によって扉が開けられる。





重厚な扉がゆっくりと開いていく。


目の前に広がるのは豪華絢爛な大広間…


その先、玉座に腰掛けていたのは――


僕たちと同じくらいの年齢しか見えない、一人の少女だった。


しかし、女王の持つ、凛とした佇まいと、王としての気品をまとったその姿に、誰もが息を呑んだ…。




第2話に続く!






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