Stage2-6 暴かれた仮面。
世紀歴20×0年4月12日 8時00分
無機質なアラームの音で目を覚ます。
この世界に来て2日経過したが、この目覚めに慣れる気配は一向にない…
(う~~~~ん)
両手を上に掲げ、伸びをする。
宿の部屋の窓から日の光が差し込んでいるのが見える。
窓から外を見下ろすと、通りはすでにプレイヤーやNPCでにぎわっている。
「フゴッ!」
「な、なんニャ?!」
自分のいびきで驚いたのか、ダルタニャーが目覚める。
その目覚めに続いて、他の3人も次々と起床する。
「今日はどうする?早速レッグストロングのところにいく?」
今日の予定を立てようと優が皆に声をかける。
「だね、さっさと朝食たべて城に行こう…」
「朝メシだーーーー!」
朝食に浮かれた樹に続いて、部屋を出る。
昨日の夜に謎のフード男達に襲撃を受けたばかりだ…
外にいる時は気を引き締めなければ…
城へ向かう途中、昨日も立ち寄った出店でバゲットサンドを買う。
焼きたてのバゲットは表面が香ばしく、中にはハム、レタス、ピクルスがバランス良く挟まれていた。
一口かじると、ほどよい酸味のソースが口いっぱいに広がる。
朝にはちょうどいい、さっぱりとした味だ。
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坂道を登り切った先にある城へ到着し、門をくぐろうとする。
その時、中庭の方から五人組の男子生徒が歩いてきた。
プレイヤーだろうか。
僕は、先頭を歩く男子生徒へ自然と目を奪われる。
身長は僕より少し高いくらい。
顔には余裕の表れなのだろうか、薄く笑みを浮かべている。
そして何より目を引いたのは――真っ白な髪だった。
(日本人っぽい顔立ちなのに、白髪……。)
(この世界のアイテムで髪色を変えているのか?)
(つまり、それだけ攻略が進んでいるってことか……。)
すれ違う瞬間、一瞬だけ彼と目が合った。
その時、理由は分からない。
それでも僕の勘が、この男とはきっと相容れないと告げていた。
視線を正面に戻すと、
中庭で仁王立ちで立つレッグストロングが見える。
「野犬の討伐完了しましただニャ!」
「うむ、確認した。」
レッグストロングの返答にあわせて、目の前にポップアップが開く。
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QUEST COMPLETE
『野犬討伐任務』
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✓ 野犬を討伐する
✓ 依頼主へ報告する
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REWARD
・5,000 Coins
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「では、お前たちに最後の課題を言い渡す。」
(まじ?これで最後?キタ!!)
「最後の課題は…これだ!」
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【入団試験 最終課題】
『機密文書奪取任務』
依頼主:レッグストロング
王国の国家機密文書が何者かによって盗まれた。
現在、町外れの富豪の屋敷に隠されているとの情報がある。
闇夜に紛れて屋敷へ潜入し、
機密文書を奪還せよ。
※実行時間:20XX年4月12日 22:00~20XX年4月13日 3:00
※発見された場合、任務失敗となる可能性があります。
▼Objective
・国家機密文書の確保
・レッグストロングへ提出する
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(潜入ミッションか……)
(あれ?)
(時間指定だけじゃなく、日付まで指定されてる……?)
「では諸君の健闘を祈る!!」
レッグストロングの号令を受け、僕たちは中庭を後にした。
「次のミッションは時間指定か。それまでどうする? やっぱ観光?」
「馬鹿?潜入任務なんだから、作戦を立てるに決まってるでしょ。」
聡が呆れたように返す。
「冗談だよ、冗談。じゃあ一旦宿屋に戻るか。」
「賛成! 宿で作戦会議しよう。」
優も頷く。
「その前に昼飯だーー!!」
樹はそう叫ぶと、城から続く坂道を勢いよく駆け下りていった。
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昼食を調達した僕たちは、潜入任務が始まる22時まで宿屋で作戦会議を行うことにした。
昼食が広げられた机を中心に、皆席に着く。
「潜入クエストか…、俺静かに出来るかな…?」
「無理だね、ということで今回、樹は作戦から除外で…」
「結論出すのはえーよ!もう少し俺に期待してくれよ…」
聡の華麗なツッコミで樹がしょぼくれる
案外この二人はボケとツッコミで合うんだよな…
「潜入ルートはマップに記されてるから、問題は何人で行くかだよね…」
優が今回の議題を持ち出す。
その回答について、僕には一つ心当たりがある…
「あ~そのことなんだけどさ、僕の考えをちょっと聞いてくれないかな?」
屋敷、番犬、フードの男たち……。
頭の中で点だった出来事が、まだ繋がらないまま引っ掛かっている。
(……考えすぎかもしれない。でも。)
「わかったニャ」
「うん!」
「俺らが玲の話を聞かなかったことなんてないだろ(笑)」
「いや、玲が寒いギャグいったときは割とスルーしてる気するけど」
反応は様々だが皆、僕の話を聞いてくれるみたいだ。
「じゃあ、僕の推奨する作戦は…」
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世紀歴20×0年4月13日 0時20分 屋敷前
日向 優:Side
(しかし、驚いた、玲が二手に分かれて行動しようと言うなんて…
そして、玲が予想した推理…もしこれが当たっていたら…)
「優、行ける?」
聡が考え込んでいた僕の様子を心配して声をかけてくれる。
普段クールに見えて、意外と周りをよく見てくれてるんだよな…
「優!心配しなくて大丈夫ニャ!俺っちが付いてるニャ!」
今回のクエストで仲間に加わったダルタニャー、
玲には厳しいけど、不思議と僕には優しい。
「フォローは俺たちに任せとけ!!」
樹はどんな時も前向きだな…
見習うべきところだと思う。
「優……気を付けて。」
玲……この世界に来てから、なんだか少し変わった気がする。
第一フロア攻略のアイデア、さっき皆に話してくれた推理。
一つひとつの判断が、まるで最初から答えを知っていたかのように迷いがない。
親友として、その成長は嬉しい。
それでも――
少しだけ、心配になった。
「じゃあ別れよう。タイミングになったら……聡、頼むね。」
玲が聡に最終確認する。
「分かった。」
僕、聡、ダルタニャーの三人は、屋敷の裏手へ回る。
(侵入ルートは、裏手にある三階のベランダ。その先の窓から侵入するんだよね……。)
屋敷の住人はすでに寝静まっているのか、ほとんどの部屋の灯りは消えていた。
事前に支給されたカギ縄――先端に鉤付きの金具が付いたロープ――を振りかぶり、
三階のベランダへ投げる。カラン、と金具が手すりに絡みつく。
ロープを軽く引き、固定されたことを確かめる。
(よし、掛かった。)
一人ずつロープをよじ登り、三人とも無事にベランダへ降り立つ。
続いて、クエスト開始時に配布された侵入用の鍵を取り出した。
カギ縄も、この鍵も、この任務のために配布された専用装備だった。
鍵を利用し、窓を静かに開ける。そして中に誰もいないことを確認してから
音を立てないように忍び込む。
入った部屋はどうやら物置のようで、荷物が至る所に放置されている。
物陰に隠れながら入り口のドアへ向かう。
ドアを少しだけ静かに開けて、隙間から廊下の様子を観察する。
廊下は静まりかえっており、人の気配は無い。
後ろに続くダルタニャー、聡に目配せをして
ドアをするりと抜けて、廊下に出る。
僕達が目指す部屋は、屋敷の北側にある。
つまり、廊下の突き当たりの角部屋だ…
足音を立てないよう慎重に、かつ素早く目的の部屋の前まで移動する。
ドアに耳を当て、部屋の中の音を聞く。
(……)
部屋の中には誰も居なさそうだ…
支給されていた2本目の鍵を鍵穴に差し込み回す。
「カチャ…」
鍵が開いたことを確認し、音を立てないようにドアノブをゆっくりと回す。
そして廊下から部屋の中へ滑り込む。
目的の機密文書があるのは、この屋敷の主人の部屋だ…
部屋には豪華な家具や様々な写真が飾れており、窓際には立派な机もある。
「侵入成功だね…じゃあ手分けして探そう!」
「「コクリ」」
僕の言葉に2人は頷きで反応する。
僕は手始めに壁際にある棚調べる事にした。
棚の中には主人のものと思われる豪華絢爛な服が所狭しと入っている。
(なんかこうしてると泥棒みたいだな…笑)
この場所には無かった、
棚をもとに戻して、棚の上に視線を移す。
そこにはこの館の主人だろうか?
ふくよかで笑顔がよく似合う男性が写っていた。
(あれ、この人が館の主人?じゃあ、執事が紹介したあの人は一体誰なんだ!?)
「にゃ?これは?!」
机付近を探していたダルタニャーが、
小声ながらも驚きの声をあげている。
どうかしたのかと、僕と聡がダルタニャーの近くまで駆け寄り、彼が両手で持っているものを見た
そこには宝石で綺麗に彩られた首飾りがあった。
「これってまさか…」
「失われた女王の首飾り?」
聡も僕と同様に驚いている。
「なんでこんなところにあるのにゃ…」
(まさか……玲が言っていた"嫌な予感"って……)
あまりの驚きに全員フリーズしている。
すると…
「侵入者だ!!」
別の階からだろうか?
大声聞こえる。
((ドタドタ…))
それに合わせて走っている地響きも聞こえてきた。
数は少なくない、数十人はいるだろうか…
僕達はその足音に反応して、急いで机の陰に身を潜める。
「玲が言っていたのはこういうことか…」
聡はどこかにメールしている、おそらく玲だろう…
「聡…これってどういうこと?」
「…」
「恐らく、首飾りを盗んだ真犯人が描いた筋書きはこう。
入団試験者に首飾りの情報をわざと流し、屋敷の番犬を討伐させる。
それによって、標的は何の障害もなく屋敷へ潜入できる。
そして潜入した標的に首飾りを発見させ、盗人として仕立て上げる。
真犯人はその盗人を捕らえた英雄となり、功績だけを手に入れる。
……この筋書きで、盗人役に選ばれたのが――」
「僕達ってわけか…」
「誰がそんなことを…許さないにゃ!」
「ピンチだね…」
聡に語りかける。
「うん、罠に掛かったことは間違いない…
でも、
読んでいたのはこちらも同じ。」
「この部屋が怪しいぞ!」
廊下から声が聞こえる。
もうすでに3階の捜索が始まっているようだ…
この部屋まで追っ手が来るのは時間の問題だろう。
そして足音がドアの前で止まった音がした。
ドアノブがゆっくりと下に沈む
ドアを…開けられる…!!
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時刻は5分ほど巻き戻り、屋敷の外
一条 玲:Side
聡からのメールに目を通す。
「見つかったのは機密文書じゃなくて女王の首飾りだってさ」
「まじでか!俺ら報奨金がっぽりじゃん!」
(本当に樹はいつでもポジティブだな…)
「優たちが捕まったら僕らも犯人にされちゃうんですけど…」
「それってつまり、ザ・エンドってこと?」
「ジ・エンドだバカ!
ともあれ、聡から救援要請が来てる。どうする?」
「じゃあさ、こういうのはどうだ?(ニヤリ」
樹がこういう顔をする時は、大抵ろくでもないことを言う出すんだが一応聞いておこう。
樹が僕の耳に手を当て小声で話す
(ゴニョゴニョ…)
(コイツ…天才か!? 採用!!)
思わず口元が緩む。
「お主もエロよのぉ〜笑」
樹がそれに返す。
「いやいや〜、お代官様には負けますわい笑」
「「アッハッハッハ!!」」
優・聡・ダルタニャー、今助けるからね!!
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時刻は現在、屋敷内の主の書斎
日向 優:Side
ドアノブがゆっくりと下がる。
(まずい……!)
その瞬間。
廊下の遥か向こうから絶叫が響いた。
「た、大変だーーー!!
覗きだーーーーー!!」
「何!?奥様が入浴中だぞ!?」
「一階だ!」
「逃がすな!」
廊下を駆けていた足音が、一斉に遠ざかっていく。
「た、助かった!?」
「どうやら玲と樹が騒ぎを起こしてくれたらしいね…いまのうちにずらかるよ!」
聡の声を合図に、女王の首飾りを手に書斎を飛び出す。
覗き騒ぎのおかげで廊下の警備は手薄になっていた。
「一気に走り抜けるよ!」
僕を先頭に三人で廊下を駆ける。
最初に侵入した物置部屋へ滑り込み、そのまま窓からベランダへ出た。
ベランダから飛び降り、屋敷裏の森へ向かって全力で走る。
(なんとか逃げ切れた……玲と樹は大丈夫かな……?)
森の大分奥まで進み、3人とも腰を下ろす。
「なんとか逃げ切れたね…」
「うん。」
「しかし、誰がいったいこんな罠を仕掛けたのかにゃ…」
僕もその答えが気になって聡を見る。
「それは多分
レッグストロングだね。」
「は、はぁ?そ、そんな…嘘にゃ!!」
聡のあっさりとした重大カミングアウトにダルタニャーが絶句する。
「九分九厘間違いないよ。」
さらに追撃をかけるように聡が冷たく言い放つ。
「ちょ、ちょっと聡…」
「しょ、証拠、証拠はどこにゃ?」
銃士団長の無罪を信じているダルタニャーは必死に証拠を求める。
「この規模の試験内容を自由に組めて、受験者を夜の屋敷へ誘導できる人物。
そして、この事件で功績を得られる人物。
その両方を満たすのは、今のところレッグストロングしかいない。」
「う、うそにゃ…栄光ある銃士団が…」
ダルタニャーは意気消沈している。
ずっと憧れていたんだ、無理もない…。
「ダルタニャー、ショックなのは分かる。
でもさ、銃士全員が悪いわけじゃない、
だから、ダルタニャーが銃士になって内側から悪いところを直していけばいいんじゃないかな?」
ダルタニャーは俯いたまましばらく黙っていた。
やがて、小さく拳を握る。
「……そう、かもしれないにゃ。」
「うん、応援してる」
フォローはこれで大丈夫かな?
少しひと息付いた、その時!
「お前達! 動くな!!」
(追手!?)
勢いよく後ろを振り返る。
「「なーんちゃって!!」」
振り返ると、
そこにはニヤニヤ笑う玲と、ドヤ顔の樹が立っていた。
追いつかれたと思ってひやひやした…。
「なーんちゃってはいいけど、着けられてないだろうね…」
聡が少し怒り気味に二人に質問する。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ!一旦町に入って追手を撒いてから森にきたから!」
樹が楽しそうに報告する。
そして少しだけお互いに状況報告を済ませる。
「みんな落ち着いた?」
玲の呼びかけに全員頷きで答える。
「じゃあ、推理が正しいか、本人に確かめに行こう。」
(やっぱり、玲も同じ結論に辿り着いていたんだ。)
「ダルタニャー…大丈夫?」
「平気ニャ、自分の目で真実を確かめるニャ!」
僕の質問に答えたダルタニャーの瞳にはもう迷いはないように見えた。
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一条 玲:Side
屋敷を脱出した僕たちは森を抜け、
夜の闇に紛れて建物の屋根を飛び移りながら、城へ向かった。
城の中庭へ辿り着いた頃には、時刻はすでに深夜二時を過ぎていた。
それでも――
そのNPCは、まるで僕たちが来ることを最初から知っていたかのように、不敵な笑みを浮かべながらそこに立っていた。
第7話に続く…




