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魔法実技 ⒉

「長手袋みたいじゃないですか?」


「お前がすでに長手袋つけてるからみたいじゃなく本物まで目に入るんだが?」


「ああ、制服以外の僕のファッションは師匠監修なので文句は師匠にどうぞ。」


 暫くは師匠に関することで何か言われたら全て師匠のせいにすることにした。だって、学校長の反応なんて見たら、師匠がとんでもない人なのは丸わかりで。


「いや、文句じゃないんだが……。お前師匠が嫌いなのか?」


「師匠のせいで僕はいろいろ苦労してるんです。」


 学校長のこととか空間収納のこととか浮遊魔法のこととか。まあ、困ってはない。苦労はしてるけど。


「そ、そうか。大変だな、弟子も。」


「そうなんですよ!ところでラッドウィンさん、目光ってますか?」


 話しながら着々と左足、右足、右腕まで終わらせていた僕は目に魔力を集めたんだが、やや視界がくっきりとした気がする。


「ほら見ろ難しいって言ったのにもうできてる。ああ光ってるよ。お前の綺麗な紅い目が紫っぽくなってるぜ。はあ、これだから天才肌はヤなんだよ。自分より才能あると羨んじまう。それと今はもう先生だ。」


それは喜ぶべきなのかしょげるべきなのかどっちだろう。ヤだと言われたことを嘆くべきか、天才って言われて羨まれることに喜ぶべきなのか。

 …?ちょっと待って、綺麗な紅い目って言った?なにそのロマンティック(?)な言葉。ラッドウィンさんそんなこと言えたの?あ、いや。ラッドウィン先生そんな言葉どこで覚えたの?


「あ、ありがとうございます?ごめんなさい?」


「ああ悪い、謝んな。」


 っていうか、やっぱり光るんだ。目は良くなっても光るんじゃバレバレじゃん。どうにか光らないようにできないかなあ。そしたら隠密行動とか言って遊べるんじゃない?


「ぬぬぬぬぬ………。」


「なんだ急にどうした怖いな。」


 魔力を薄く目の表面に貼り付けるみたいにしたら魔力が集まりすぎないで光らないけどよく見えるなんてことないかなあ。[魔力を集めると]目が良くなるんだったら無理だけど、[魔力を通すと]ならいけると思うんだ。


「今集色しないで身体強化できるか試してます。体力訓練の先生は走りながら光ってたわけじゃないのでもしかしたらと思って。」


「体力訓練の……。ああ、セレブロ先生か。」


 待って、余計な情報落とし込まないで。集中が切れる!


「セレブロ・ディムスクロア先生。体育会系の家系だな。南部出身だ。騎士団の副団長を務めることが多い名門だ。」


 やめてってば!意識がそっちに向いちゃうよ!あっ、あとちょっと!涙が出る時みたいなイメージを思いついたから、実践するだけ!


「すごく政治的に役に立つ情報なんでしょうけど、今集中してるんです!」


「あっ、悪い。ついな。」


 僕は一体何に力を注いでるんだ。便利だから?便利だけど、普段使う場面ある?試験のカンニング?そんなことしないしなあ。


「あっ!ラッドウィン先生これ光ってますか!?目!」


「ひかってねえけど…。」


 光ってない!なんでそんな呆けた顔してるんですか。大発見でしょ!……もしかして、みんなできる?


「やっぱ天才ってすげえなあ。見えねえけど、それ身体強化できてんだろ?なんとなくだがわかる。」


「そうなんですよ!僕が天才かどうかは置いておいて、よく見えます!もちろん集色込みの時より性能は落ちますけど。」


 「落ちてなかったらすげえよ」って言って諦めた笑顔で虚空を眺めるラッドウィンさん。大丈夫?


「ああ、終業の音楽が鳴るぜ。ここまでにしよう。」


 ちょうどラッドウィンさんがそう言ったところで本当に音楽が鳴った。教師の方々はどうして音楽が鳴る時間がそんなにはっきりわかるんだろう。超能力?それとも道具?ただの勘?


「ユーリにしか目が向いてなくて他のやつチラ見くらいしかできなくてごめんな。フッデミールとテリーンヒ、お前らは遊びすぎだ。」


 虚空じゃなく諦めた笑顔で他の子を見てるだけだったのかな?要審議だ!まあいいか、興味ないし。


「こんなやつと一緒にされたくねえよ!」


「テリーンヒボクのこと嫌い?ボクはまだ好きかわからないな、テリーンヒのこと。」


 あそこはなんだかんだ仲が良いのか?タレ目のおっとりした見た目とは裏腹にかなり性格は子供らしいフッデミールくんは時折テリーンヒくんを激怒させる。まだ三日目なんだけどなあ、入学から。


「お前を好きになる奴がいるか!」


 そしてどうしてかフッデミールくんをすごく目の敵にしてるテリーンヒくん。僕はあそこの関係がよくわかっていない。仲が良いのか悪いのか……。きっとそのうち仲良くなるんだろう。


「次の授業の準備もしろよー。」


 それだけ言い残してラッドウィンさんはどこかへ行った。大人が責任を投げ出して逃げたと捉えていいのか?


『わたしもあれは面倒。放置する。』


 どうして最近ミリシアはみんながいる前でも平気で話すようになったんだろう。もちろんこの声は僕にしか聞こえてないみたいではあるけれど。だからこそ?


「行こ、ユーリくん。次は生物学で移動教室だよ。」


「そうでした!すぐ行きます!」


 生物学。何をするのだろうか。学年が上がれば使い魔を召喚するとは聞いたことがある。クラスの中でもそれが楽しみだと言う声があるから。それよりもなにを学ぶ時間なのかが気になる。巨岩のあたりにもいた鳥ことコンナラネーホと言う羽の生えたクエラビットとか動物の特徴とか名前なのか、わからないな。内容が。

 ずるい!ずるいずるいずるい!どうしてあいつばっかり!ユーリ・フレイドール!平民のくせに。平民だからか?平民だから注目を浴びるのか?いや、そんなわけがない!実力だ。あいつの。だから余計にずるい。平民のくせに魔力にも恵まれ、才能もある。

 ……けど、だからこそ、俺のライバルに相応しい!平民だとしても、身分を超えてクラス1になれたからこそ。

 にしても、ラッドウィンってやつも教師に向いてないんじゃないか?ユーリ一人ばかり見て、周りのことを見てないじゃないか。見てたら俺の事だって目に入ったはずだ。それなのに俺にも近寄らず、ユーリばかり褒めて。もっと俺も褒めろよ。仕事ばかりで俺のことを見もしない父上も、部屋から窓ばかり眺めて俺の言葉に「そう」としか返さない母上も。メイドや執事のお世辞じゃなく、純粋にすごいと褒めて欲しいだけなのに。


「高望みなのかな。」


 所詮は俺も魔力量だけ?そんなまさか。何のためにこれまで努力を重ねてきた。もっと高く、自分を持ち上げる。勉強も、実技も、全て一番を目指す。追い抜いてやる。ユーリも、教師も、父上も。そうした時に、やっと俺の欲しい言葉をもらえるんだ。きっと。登らないと。もっと上まで。公爵家後継。その立場に見合う、成績を。

 そのためにも、クラス1でいてくれ、ユーリ・フレイドール。俺の目指すところを、明らかにするために。俺が目指す先を迷わないように。そして最後、卒業前にギャフンと言わせてやる。結局俺が一番だと、わからせてやる。

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