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お芋も好きよ

 王都に着いて一日目。昨日はユーリを見つけられなかった。もう王都を出ているのだろう。あの目立つ魔力が見つからなかったのなら、それしかない。まあ、似たような魔力の“大人”ならいるけど。子供は少なかった。やっぱ学校か。


「はぁー。無事にやってるだろうか。」


 心配だ。人前で同時詠唱とかしていないといいが。どうも常識が足りない部分がある。全く、テインとリーシャンは教えが雑なのではないだろうか。甘やかすから、困る。

 さて、十魔法公ってどうやってなれるのだろうか。まずは調べないと……か。本屋にでも行けばあるのか?いや、案外人に聞かないとわからないかもしれない。そもそもスカウトの可能性も?もしや十魔法公の席は空いていないかもしれない。

 俺もなかなかに世間知らずだな。ユーリも世間知らずか。俺のせいかもな。あ、けど常識が足りないのは俺のせいじゃあないよな。………ないよな?

 今日は僕、ユーリの特級魔法学校入学式。両親はもちろん、師匠も参列していないけど、これからの学校生活の幕開けは滞りなく進む。

 さすが魔法学校、入場は魔法で華やかに演出され、新入生は花道を進む。飛んだ方が早いと思うのは僕だけだろうか。

 それから式が進行し、校長式辞。登壇は浮遊魔法だ。やはりそれが楽なのだから当たり前というか。あたりまえなはずなんだけどな。


「すげぇ!みたか、浮遊魔法だったぞ。」


「さすが校長、飛んだ!」


 どうしてそれほど驚くのだろうか。みんなできるだろう。ここは特級学校だし、僕だってできるのだから。


 暫く式辞が続き、眠気に頭痛がし始めた頃、やっと入学式が終わった。この後は教室へ向かう。特級ともなれば入学できる人も少ないのだろう、一クラス分しかなかった。


 教室に入れば、担当の教師がやってきて自己紹介をする。


「アセソル・アカデミコ。教師暦は6年目です。これから5年、よろしくね。」


 僕たちもするらしい。しかも席順で行くらしい。今の席は試験の時の成績順なのだが、何故か僕がトップバッターだった。


「ユーリ・フレイドールです!好きなものは魔法、得意なことは浮遊魔法!苦手なものは過度な方言です……言葉がわからなくなるので。好きな食べ物は……。特にないかもです。出されたら基本的にはなんでも食べますよ!誕生日は9/24です!✴︎テェフラ✴︎が美味しい季節ですよね!これから5年お願いします!」


✴︎テェフラとは、サツマイモのようなものである。


 教室がざわつく。教師まで僕のことをジロジロと見る始末。何かおかしいことを言ってしまっただろうか。


「浮遊魔法が得意とか、嘘つけ!俺たちまだ九歳だぞ!?浮遊魔法なんか使えるか!」


「え?使えないんですか?僕は一番最初に師匠に教えられた魔法は浮遊魔法ですよ?」


 さらにざわつく。「師匠って誰だ」「えげつない師匠だな」そんな言葉ばかりだ。中には「見栄を張っているだけだ」と言ってくる人もいる。失礼な。


「現に僕は今飛んでいるじゃないですか、ほら。」


 普段の大きな移動は聖霊魔法で移動することが多いから、日常では歩く代わりに浮遊魔法を使うようにしている。足を動かして歩いているように見せかけているから気づかれなくても当たり前だが。なので今回は足を動かさずに移動することにした。


「ね?飛んでいるでしょう?僕の師匠の教えは『生活と魔法を結びつける』なので基本的な移動手段は浮遊魔法です。」


 ざわつくことすらなかった。絶句というような感じだ。実際に飛んで移動しているのをみたからだろう。ムキになって色々言ってしまったが、いけなかったかもしれない。

 でもまさか、一般人は飛べないだなんて師匠は教えてくれなかった。僕が世間知らずなのはやっぱり師匠のせいだ。きちんと教えて欲しかった。そしたら周りに合わせて生活したのに。

 そういえば、初めて師匠に同時詠唱を見せた時、かなり動揺してたから同時詠唱も控えた方がいいだろうか。いや、そうしないといけないんだと思う。世間は不便に満ち溢れている。魔学の神リンベトルシイェーン様を意識すべきではないか。ほら、利益や利便を司っているから。


「ふ、ふん。浮遊魔法が使えるからなんだ。俺だって使える!」


 僕の後ろの席。つまりかなりの実力者であろう男の子が言う。


「ユーリさんに対する質問はあとにしましょう。次の子。」


 ここで先生から一声入り、みんな切り替えたらしい。特級だからなのか、王都が近いから貴族が多いとかなのか、切り替えが非常に早いと感じた。僕だったらまだ粘る自信はあるのに。


「エンヴィーツ公爵家長男、ウェシア・エンヴィーツだ。そこの田舎者に一番の座を奪われたままなのが気に食わない。追い越してやる!」


 向上心が高いのはいいことだけど、たまたま天才的な師匠について行ってしまっただけの僕をそんなに目の敵にしないでほしいなあ。僕が可哀想でしょ?

 とりあえず、ライバルになりそうなウェシアくんは覚えた。


 その後も順調に自己紹介は進んでいき、午前は学校の説明で終えた。どうやら入学式の日は入寮手続きをするために早く帰るらしい。時間はかけたくなかったから精霊魔法で飛びたかったけど、精霊魔法が一般的ではないのは僕にもわかる。ミリシアが出てきて初めて知った知識だったし。とりあえず、そう言うわけで浮遊魔法で寮についた僕はさっさと入寮手続きを終えようとしていた。

 そこにクラスメイトの…確か………。


「ユーリくん、シーアです。少しお時間いいですか?」

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