実技試験
もしもし、俺ラードリア。今飯屋探してる。
「おまえさんどっからきと。」
そしてわけもわからない言語に頭を悩ませてる。
「聞こえっとか?そげな顔せんで答えちょろ。」
王都の人間の言葉もこんなんに変わってたらどうしよう。俺、巨岩に帰ろうかな。案外ユーリもこの言葉使いこなして帰ってきたらどうしよう。あはははは。あはは、あはははは………。
「飯屋探してんだ、どこにあるんだ?」
「飯屋なんて、ねど?」
ねど?粘土?ああ理解できない。俺帰ろうかな。ユーリも帰ってたりするかな。十魔法公諦めて、師匠ラードリアは引きこもってました。なんてな。
「宿屋に行けば食えるど。」
さあ帰ろう宿屋へ。
……王都の人間の言葉遣いが昔の人間たちと変わってませんように。
それから少ししてみんなが試験を終えて来た。悔しそうに顔を歪める子。達成感に笑う子。すました顔の子。それぞれだ。僕はどうだっただろう。わからないな。
「これで全員がそろった。今から実技試験を開始する。」
その合図とともに、一人ひとつ水晶玉のようなものを半ば投げ渡される。なんだろうか、これは。何かの魔術具?
「魔力量と属性適正だを測る魔術具だ。そこに魔力を流してみろ。思い切りじゃなくていい。」
なるほど。たしかにそう言うことを把握しておいた方が校内でどんな授業をすれば良いのかがわかりやすいだろう。
「若葉色、朱、蜜色、白の色に分かれて、それぞれ春夏秋冬、全属性は金だ。大雑把な適性が出たら次の指示をする。終えたら手をあげろ。」
思い切りじゃなくていいと言われたけど、それなりに入れないといけないのだろうか。わからない。とりあえずいつも指輪に入れてるのと同じ量にしてみよう。
じわじわと魔力を流していく。ほのかに光を帯び始めた水晶は魔力を流すにつれて光が強くなる。どこまで魔力を流せばいいのかわからないけど、光を増し続ける水晶は押しつぶされそうに見える。これを今まで何人も水晶にやってきたなんて、いつか水晶がパリンといきそうだ。
ほら、そろそろいっちゃうんじゃない?僕が最後だったかあ。水晶の耐久値なんて高々知れてるしね。
パリン
あぁあ、いっちゃった。
「ラッドウィンさん、これ経年劣化じゃないですか、割れちゃいましたよ。」
「いや、え、え?え?それ高いんだけど。しかも新入生用だから容量少なめとはいえ魔水晶だぞ?」
相当取り乱してるみたいだけど、魔水晶が何か知らないけど、水晶なんだから割れちゃうよ、それは。あっでも備品壊しちゃダメだったよね……。
「ちょっと、フレーン、大人用のやつ持ってこい!」
「りょーうかいッ」
あの補佐官さんフレーンさんって言うんだ。自己紹介してくれなかったからなあ、あの人。
こっちはこっちでてんやわんや。ラッドウィンさんは破片を集めてるし周りの子は黙々とやっている子もいればこっちを見て固まってる子もいるし、ざわざわしてる子もいるし。
「持ってきましたヨ!」
そう言って僕に水晶を差し出す。受け取っていいのだろうか。
「子供用じゃ君の魔力を受け入れられなかったみたいだから、それを使ってくれ。」
魔力を受け入れられなかったって言われても……。そう思いつつどんどん魔力を込めていく。また光は強くなっていくけど、さっきと違って割れそうだ、とは思わない。と言うかどれだけ入れればいいのかな。
「光の増進が止まれば魔力を入れるのをやめて構わないからな。」
まるで僕の心でも読んだようなことを言うから驚いたけど、全体に言っているし、僕が魔力を込めすぎたって思ってるのかも知れない。
やがて、光は眩しくて直視するのが難しいくらいで止まった。そしてだんだんと色が変わっていく。翡翠、朱、蜜色、純白。順々にその色に変わった後、金色ではなくさらに青色と闇色になった。そしてやっと金色になる……はずが、金と爽やかな青と闇色のマーブルみたいになった。
「さて、じゃあ全員終わったようだし、一人ずつ確認するぞ。まずルクシー。」
「はい!」
自信を含んだ声で返事をした少年がラッドウィンさんの方に行く。そして自慢気に水晶を差し出す。その色は翡翠と蜜色と白。
「春と秋と冬の属性だ。水と風が中心だな。」
「りょーかいデス。」
ラッドウィンさんが判断して、フレーンさんが書き留める。そうして受験者全員の属性と大まかな魔力量を測っていく。魔力の測り方は知らない。
「うい次!ノア。」
「は、はい!」
やや緊張した面持ちでラッドウィンさんに水晶を差し出す。その色は翡翠と蜜色と白、そして仄かな青。
「おお、すごいな。光属性か。魔力量もなかなかのものだ。春と秋と冬。春と冬の方が強いな。優しい人間にありがちだ。」
性格と属性ってどんな関係があるの!?なに、経験則ですか!僕のこの色はじゃあ一体どんな人にありがちなのか!
と言うか、この青は光なんだ?光の方が白いイメージだけどな。そう言えば、じゃあ闇色は何だろう。
それに、魔力量測らないって言ってた。虚空を見つめながら言われても説得力がない。
そうこう考えているうちに数分が経った。なかなか呼ばれない。
「へーぃ、最後ユーリ。」
「呼ばれ方雑じゃないですかぁ?」
ちょっと納得行かないから大人しく「はい」だなんて言ってあげない。
「お前遠目に見てるだけで眩しかったから最後にしたかったんだよ。こんなん持ってこられたら俺も真面目にやる気失せるって。」
失礼な。正真正銘僕の実力を表す努力の結晶をそんな言い方しないで欲しい。まあ、良い状態なのかわからないけど。
「ほらフレーン見ろこれ。全属性。やんなるよなあ。」
「ボクは俄然興味が湧くかナ。」
ラッドウィンさんの最初のしっかりしたお兄さん然とした雰囲気はどこへ消え去ってしまったのか。その変わりように少しぽかんとしつつ水晶を見る。金に青と闇のマーブル。マーブルって蠢いてて気持ち悪いなあと思う。
「これだから研究バカは……。」
「魔法がスキじゃ悪いなんテ言わないでヨ。」
「別にそんな事言わねえよ。」と返してはあ、とため息をつく。中々この二人は仲が良いのだなと考えるのは僕だけだろうか。
そんなことを考えていたらラッドウィンさんは目を細めて水晶を見ている。眩しくてだろうか。光抑えられないかな。
「秋と夏の色が濃いな。」
どうやって見分けたんですか。金色にまとめられてるのに、どうしてそんな細かいところがわかったんですか。そう質問したい。今すぐに。
「けど一番高いのは闇だ。」
闇色はそのまま闇なんですか。なんだ、あまり面白くない。闇色だけど実は太陽の属性でした。とかだったら面白かったんだけどな。まあ、そんな属性ないだろうけど。聞いたことないし、魔法史にも出てこなかったし。大体夏の属性と同じだろう。いや、光だっけ?
「夜の方が魔法の威力が高いことないか?」
「あっ!」
入学試験のために家を出る前、部屋を火球で照らしてたことがあって、本を読むためにちょっと放置してたら部屋が燃えてたことあった!それのことだろうか。
「心当たりがあるみたいだな。まあそう言う詳しいことは授業で習うだろ。」
授業?まだ合格って言われてないのに。
「ユーリ、ノア、シーア、ウェシア、シャリフ、ルクシー、セツィア、テリーンヒ、ヌドェーラ、ヤイスァニ、フッデミール、ラキシンタ、ミャルラ、アツーファイ、カッドリオ。合格。」
え!?筆記試験の採点は!?まだ一日も経ってないけど!
「筆記試験及び実技試験は合格点に達している。採点はもう一人の補佐官が先ほど終えた。その結果を踏まえてだ。文句がある奴はいるか。」
誰も名乗り出ない。ここで文句を言ったって、変わらないってわかっているからだろう。
「これで確定する。入学の日取り、制服や靴は後日宿屋、または家に届けさせる。以上、解散。」
呆気なかったけど、受かったみたいでよかった。ついでに言うと、ノアも受かっててよかった。知り合いがいるだけで心強い。
入学準備も、していかないとかな。
いつもより文量が増えて御免なさい!
ちょっとノっちゃったんです……!
けど一章四話って言うこだわりが勝ちましてね。
次からやっと本編です!
大変長らくお待たせしました。




